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なんでもかんでも進化する?

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更新日 : 2010年05月28日 (金)

第5章 ダーウィン進化論の新展開

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澁川雅俊: 進化論は、生物が不変のものではなく長期間かけて次第に変化してきたという考えに基づいて、現在見られるさまざまな生物は、すべてその過程のなかで生まれてきたことを説明する科学的な理論、とされています。

そういう発想は、実は遙か昔からあったとされています。古代ギリシャ・ローマの哲学者たちや、道教の創始者といわれている中国の荘子もまた、それに似た考えを持っていたようです。古代ギリシャ・ローマにおける進化思想は、カトリック教会が優勢であった中世西欧では顧みられませんでしたが、一旦イスラムの哲学者に引き継がれて、ルネッサンスに再び西欧社会に復帰し、やがて18世紀になって科学的な考察が加えられるようになりました。ですから、ダーウィンの進化論はそういう系譜の延長線上にあったと言ってよいのですが、それではそれがダーウィンによって完成されたのでしょうか?

その辺りのことについては、『ダーウィンのジレンマを解く—新規性の進化発生理論』(M・カーシュナー他著、08年みすず書房)がこう語っています。「進化の過程でまったく新しいものがどのようにして生じるのか。……細菌から菌類、植物、動物に至るじつにさまざまな生物が、それぞれ異なるデザインでできているが、どのようにしてこうしたことが起こったのか。生物以外では見られないことだ。生物の世界ではすべてが新規である。しかも新規性という言葉は元来、無からの創造という意味であるはずだ。新規性を説明することは昔から非常に難しかった。チャールズ・ダーウィンが変異と選択を柱とする進化論を提唱して、選択の概念を説明したことは彼の偉業であるが、もう一方の柱である変異に対し納得のいく説明をすることができなかった。ダーウィンのジレンマである」

このジレンマを超えるために、著者は発生進化学、遺伝子によって代々運ばれている「血肉」の部分が進化を促進する主役であるという考えを提唱しています。ただしこの本は、生物についてはもとより、遺伝子につてもその基礎知識を修めていないと、簡単に読み切ることはできません。

その本では、生物の姿形のデザインの違いが、新しい進化論の発端になったといわれていますが、『自己デザインする生命—アリ塚から脳までの進化論』(J・スコット・ターナー、09年青土社)は、アフリカのアリ塚や高度な機能性をもつ血管や骨、世界を認識する視覚や脳はあたかも意図的にデザインされたように精妙にできているが、それはダーウィンの「自然選択」だけでは説明できないとして、生物・生理学の分野からその謎に挑もうとしています。

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