記事・レポート
鎌田浩毅の『一生モノの勉強法』実践講座
落ちこぼれ学生から、世界トップレベルの研究者へ
更新日 : 2010年02月10日
(水)
第1章 なぜ、『一生モノの勉強法』なのか
火山学、地球科学の第一人者、鎌田浩毅氏。京都大学の人気教授としてメディアでもおなじみだが、常に満席の教室で行われる生講義を東京で拝聴できるという貴重なセミナーが9月7日に開催された。現在6万7千部を突破した書籍『一生モノの勉強法』の実践セミナーと題して語られたのは、何と落ちこぼれだったという学生時代から世界トップレベルの研究者へ、そして教授に着任するまでの逸話やノウハウ。きらびやかなファッションに身を包む理由、現在の京都での生活までと濃密な内容だ。
約1時間の講演の後、受講者にはメモ用紙が配られ自由に質問を書く時間が設けられた。質問の内容は「休日はどんなファッションで過ごすのですか」「地震を想定して、どの県に首都を移転すべきですか?」など多岐に及んだが、すべてアドリブで展開されたその答えはまたの機会のお楽しみとして、ここでは本講演の模様をメインにお届けしていこう。
講師:鎌田浩毅(京都大学教授)

鎌田浩毅: ここに立つ講師の方でこういう格好の人間はいないのではないかと思うのですが……、これもきちんと理屈があるので、追って申し上げます。私は火山学者で、地球科学が専門です。皆さん、高校で地学を習った方もいらっしゃるでしょう。日本は地震国、そして火山国です。東京の方は、首都直下型地震を心配していると思います。それから火山の噴火。富士山が活火山だと知っていますか?
300年前に大噴火し、江戸時代の東京に5cmの火山灰が降りました。再び噴火は必ず起こります。実際に起きたら大変な災害になります。それらを研究して、皆さんに伝えるという仕事をしています。しかし、多くの人があまり地球科学に関心が無いようです。経済や政治、選挙がどうだなどと言うとたくさんの人が集まるのですが、「地球科学? 何それ?」みたいな感じで。しかし、東京に住んでいるからには、地震や火山噴火のことをきちんと知っていなければいけません。
では、関心の無いことを分かってもらうためには、どうしたらいいか。そこでファッションから始めたのです。京大に来たころは、私もグレーの背広に紺のネクタイでした。しかし、あるとき授業の後にパーティがあるということで、今ほど派手ではないですが、パーティ用の格好をしていったのです。すると、学生の食いつきが全然違いました。つかみが大事と言いますが、ファッションは人の関心を引くには大事だと分かったのです。
それから授業ごとに服を換えるようになりました。イタリアモード、フランスモードとさまざまなスタイルで、最近は地球科学ではなくファッションを見に来る学生もいるほどです。そしてついでに地球科学も聞いて帰ろうかと。きっかけは何でもかまわないのです。最終的に地球科学を理解して、地震のことを理解して、それで自分の身を守ってもらえれば。
それ以降、講演会のときにもいつもこういう派手な格好です。皆さんのギョッとする顔見たさに、いつも服を換えています。ちなみに、これら服のために僕のボーナスは全部消えます。でも、それも教育上、地球科学を伝える意味があると思っているので、投資しているわけです。やはり投資をしないとリターンはありませんので。さて、こういった話をしていると時間が終わってしまいますので、ちょっと真面目な話をしていきましょう。
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関連書籍
一生モノの勉強法
鎌田浩毅東洋経済新報社
鎌田浩毅の『一生モノの勉強法』実践講座 インデックス
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第1章 なぜ、『一生モノの勉強法』なのか
2010年02月10日 (水)
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第2章 落ちこぼれの理系科学者が、急に火山に目覚め理学博士を取得
2010年02月18日 (木)
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第3章 失われた10年を全く学んでいない(1)
2010年02月25日 (木)
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第4章 失われた10年を全く学んでいない(2)
2010年03月05日 (金)
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第5章 火山の論文を理解してほしいのは、少数の学者ではなく富士山周辺の30万人
2010年03月15日 (月)
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第6章 もし人を変えようと思ったら自分が変わるしかない
2010年03月23日 (火)
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第7章 東京は効率主義だからこそバブルの崩壊まで突き進んでしまう
2010年03月30日 (火)
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第8章 心の京都、心のファッション(1)
2010年04月06日 (火)
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第9章 心の京都、心のファッション(2)
2010年04月14日 (水)
該当講座
鎌田浩毅 (京都大学大学院 人間・環境学研究科教授)
鎌田 浩毅(京都大学教授)
京都大学の人気教授が数多くの試行錯誤の経験から生み出した、「大人のための実践的勉学のテクニック」を解説します。一生役立つ勉強法を学び、自分を成長させたい方のご参加をお待ちしております。
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