記事・レポート

『美』という21世紀の文化資本

今、日本人が見失ってはならないこと

更新日 : 2010年01月21日 (木)

第2章 企業のクリエーションは文化から生まれる

伊藤俊治氏

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伊藤俊治: 私は以前、企業の文化資産であるデザインを未来に生かすために、どういうビジョンやシステムが必要なのかを検討する研究会に加わったことがあります。そのとき静岡県の掛川にある資生堂企業資料館に行って、強く感じたことがあります。それは、100年以上にわたる企業のイメージや商品といった膨大な文化資産をしっかり保存・整理して、それを現在・未来につなげていこうとする強い方向性が、資生堂という企業の中に綿々と受け継がれていたということです。

以前、パリのポンピドゥ・センターで「Japon des Avant-gardes前衛芸術の日本」が開催されたときお手伝いをしたのですが、日本のデザインやグラフィックプロダクトは、たった10年、20年前のものですら紛失したりしていて発見できないことが多かったのです。

多くの企業が自社製品のデザインや商品を保存していないという状況のなか、資生堂は、デザインの流れ、美の伝統をしっかり受け止める素地がしっかりしているという印象を受けました。

福原義春: おっしゃるように資生堂はポスターからパッケージから会社の歴史から、かなりいろいろなものが残っている方だと思います。

私は「文化資本」という説を唱えています。今、伊藤先生が「文化資産」とおっしゃいましたが、日本という国家も、あるいは会社も学校も、それぞれ文化的な資産を持っています。それは伝統であったり、書かれた歴史であったり、製品の歴史であったりします。

私が「文化資本」と言っているのはそれとはちょっと違って、アーカイブとして蓄えるだけでなく、お金と同じようにリソースとして使って新しい資源を生み出す元手という意味で、それを文化資本と言っております。最近では経済学者も文化資本ということを言い出しました。文化資本という言葉は、フランスの社会学者ピエール・ブルデューが提唱したものですが、それは哲学的な概念を定義するものでした。経済学的な「文化資本」ということは、1999年ごろ、私たちが一番早く言いはじめたと思います。

資源を持っていなければ資本になりません。しかし資源を持っていても資本として使っていかなければ、再生産も次なる価値増殖もできないのです。単なるアーカイブにするのではなく、経済活動をする人がそれに学んで、次なるクリエーションにつなげていく、そしてお客さまの信頼を高めていくことにつなげる。そういうことを2000年の少し前から、私たちは意識してやるようになりました。

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福原義春 (株式会社資生堂 名誉会長)
伊藤俊治 (東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授)

福原義春(㈱資生堂名誉会長)
伊藤俊治(東京藝術大学教授)


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