記事・レポート

サマーダボス会議 in 大連 報告会

~弱体化した日本の発信力。回復への提言

更新日 : 2009年11月04日 (水)

第4章 中国の圧倒的な存在感

竹中平蔵氏(左)石倉洋子氏(右)

竹中平蔵: ダボス会議で議論されていることは一種の定点観測になる、半年ごとに世界の潮流がどうなっているかを知るいいチャンスだ、と先ほど申し上げました。

今回、私は「ワールド・エコノミック・アウトルック」という大きなセッションに出させていただき、「今、世界の経済は典型的なW字型のプロセスを歩んでいる」と話しました。去年(2008年)のリーマン・ショックでストーンと落ちた経済は、さまざまな対策によって底を打って、今、少し上がってきたところです。しかし残念ながらこの回復は持続的なものではなく、どこかで調整に入って、それを終えてはじめてまともな回復が可能な状況になってくるのではないか、とお話しました。

今、少し回復している要因の1つは中国です。もう1つの要因は、各国が大規模な財政拡大を行っていることです。セッションの司会をしていたマーティン・ウルフ氏は、「世界中の国がこれだけの規模で一斉に財政拡大、つまりケインズ政策を取ったのは、歴史上初めてのことだ」と言いました。アクセル全開なわけで、これを毎年続けられるわけがない。どこかで出口を探らざるを得なくなると思います。

今年(2009年)に入って中国の銀行の新規貸出は、なんと去年の3倍になっていて、それが国営企業に流れています。それを活用して国営企業は何をやっているかというと、一度民営化された会社を買い戻しているのです。ですので中国は、実は今、再び社会主義化、国営企業化が進んでいるという状況で、当面の景気はよくても、中・長期的には成長率が下がるのではないかという懸念があります。
 
温家宝首相は、去年(2008年)の秋に天津でスピーチをしたとき、「中国は大きな責任を果たさなければならない」という力強いメッセージを出しました。しかし今年(2009年)1月のスピーチでは、「アメリカ経済が比較的きちっとしているならば」とか、「世界各国が協力するならば」と言葉に留保条件が付いたので、弱気になったのではないかと言う人もいました。しかし今回、再び強く明確に「中国は発展し、世界に貢献していく」と言いました。

このように、ダボス会議での議論は定点観測として世界経済の状況を把握できるのです。

石倉洋子: 日本では自民党から民主党へ政権交代が起きたので、今年の大連ではいろいろな意味で日本に対する期待も高かったと思います。

竹中平蔵: その件に関しては、ちょっとニュアンスの違うことを申し上げたいと思います。日本の、特に政権交代をめぐって議論をするというセッションがありました。朝日新聞主筆の船橋洋一さんや元外務大臣の川口順子さんなど、大変魅力的なメンバーで、私は期待して聞きに行ったのですが、割と空席が目立っていました。やはり日本に対する評価は、依然として相半ばしていると思います。

非常に期待がある反面、新しい政府が何をしようとしているのか、強い存在感がまだ伝わっているわけではないのだなと感じました。

関連書籍

戦略シフト

石倉洋子
東洋経済新報社

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該当講座

サマーダボス会議 in 大連 報告会
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

石倉 洋子(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授)
竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授)
ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが東京に事務所を開設することを機に、ダボス会議の前線で議論されていることは何なのか、日本はどのように世界の課題に貢献できるのかについて考えるセミナーです。今回は、9月10日~12日に中国・大連で開催されるニュー・チャンピオン年次総会(サマー・ダボス会議)で何が議論されたか、石倉氏と竹中氏が解説します。


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