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「池上彰が紐解く、アラブの今と未来」in 六本木アートカレッジ

~アラブ美術のツボがわかるニュース解説~

政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2012年09月18日 (火)

第5章 中東問題とは?

池上彰(ジャーナリスト/中東調査会会員/東京工業大学教授)

池上彰: 地中海東岸のパレスチナと呼ばれるあたりに、今から2000年以上前、ユダヤ王国がありました。これがローマ帝国によって滅ぼされ、ユダヤ人は離散します。キリスト教世界であるヨーロッパに渡ったユダヤ人は、「イエス・キリストを十字架にかけた者の子孫」と思われ、差別されるようになります。

このためユダヤ人は、当時のヨーロッパでは卑しい職業とされていた金貸し業にしか就けませんでした。一所懸命働いて成功し、お金持ちになると、ますます嫌われ、差別がひどくなっていきました。ナチス・ドイツのヒトラーは、人々の間に広がったユダヤ人への差別感情を利用しながら「優秀なアーリア人の国家をつくろう」と、ユダヤ人を殺害していったのです。600万人ものユダヤ人が殺されたと言われています。

するとユダヤ人たちは「自分たちの国を持っていないから、こんな目に遭うんだ。自分たちの国をつくろう」と考えるようになり、もともとユダヤ王国があった場所、つまりパレスチナにイスラエルという国をつくりました。

このときパレスチナに住んでいたアラブ人たちは土地を失い、「パレスチナ難民」と呼ばれるようになります。彼らはイスラム教を信じているアラブ人ですが、「パレスチナ難民」と呼ばれるようになったことで、次第に「自分たちはパレスチナ人だ」という民族意識を抱くようになります。そして「パレスチナ人の土地を取り戻そう」と考えるようになり、衝突が起きるようになったのです。

これがいわゆる中東戦争で、大きなものだけでこれまでに4回起きています。しかし現在もこの地域はイスラエルが支配していて、その中にあるガザ地区とヨルダン川西岸地区という2カ所がパレスチナ自治区になっています。

イスラエルとパレスチナの衝突は、ユダヤ教徒とイスラム教徒の宗教対立のように見えますが、実は「この土地は誰のものか」という土地争いなのです。

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池上彰が紐解く、アラブの今と未来
池上彰 (ジャーナリスト/中東調査会会員/東京工業大学教授)

長期独裁政権下に置かれたアラブ諸国の民衆が、民主化を求め立ち上がった「アラブの春」。チュニジアから端を発した民主化運動は、隣国のエジプト、リビアに飛び火し、各国で続いた長期独裁政権を崩壊させる結果となりました。 アラブで起こった一連の民主化運動は、FacebookやTwitterなどのSNSが民衆....


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