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「池上彰が紐解く、アラブの今と未来」in 六本木アートカレッジ

~アラブ美術のツボがわかるニュース解説~

政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2012年09月10日 (月)

第1章 まずはアラブ世界とイスラム世界と中東の違いを整理しましょう

「アラブ」と聞くと、テロや宗教対立など、ネガティブなイメージを私たちは思い浮かべがちではないでしょうか。そんな偏見を森美術館「アラブ・エクスプレス展」は打ち砕きます。本展の開催を機に、池上彰氏にアラブ世界の基本と真相を教えていただきました。アラブのニュースとアートのツボがわかるトークです。


スピーカー:池上彰(ジャーナリスト/中東調査会会員/東京工業大学教授)

池上彰(ジャーナリスト/中東調査会会員/東京工業大学教授)
池上彰(ジャーナリスト/中東調査会会員/東京工業大学教授)

池上彰: 先日、森美術館で観た「アラブ・エクスプレス展」は、私たちがアラブ世界に対して抱いているイメージと、今のアラブ世界は全然違うということがわかる、とてもおもしろいものでした。(※「アラブ・エクスプレス展」は2012年10月28日まで開催中)

きょうはこの展覧会にちなんで「そもそもアラブ世界って何だろう?」ということを基礎の基礎からお話ししたいと思います。多くの方が、アラブ世界とイスラム世界と中東をごっちゃにしているようですので、まずは「アラブ世界とイスラム世界と中東は違う」という話から参りましょう。
(※ Googleマップを参照しながら読むと、さらにわかりやすくなります。http://goo.gl/maps/qOzm

アラブ世界とは、端的に言うと「アラビア語を話している人たちがいるところ」のことです。ですので、北アフリカもアラブ世界です。アラブ人は「アラビア語を母国語とする人」のことです。アラブ人は中東にもいますが、中東以外にもたくさんいます。「アラブ人はみんなイスラム教徒か?」というと、そうではありません。アラブ人にもキリスト教徒が大勢います。

では、イスラム世界とは何でしょうか? 世界で一番イスラム教徒がいる国はインドネシアです。インドにも1億人近いイスラム教徒がいます。イスラム世界は、北アフリカから中東、そして東南アジアまで、非常に広い世界なのです。

そもそも中東とは、イギリスの都合でそう呼ばれるようになったところです。かつてイギリスは、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカを植民地にしていました。ですからイギリスにとって東はインドで、ここが基準になります。インドより極端に東が「極東」で、中くらい東が「中東」というわけです。

中東にはパレスチナと呼ばれる地域があります。第二次世界大戦後、ヨーロッパで迫害されたユダヤ人たちが大勢移り住んできて、そこにイスラエルという国をつくりました。ですからここにはユダヤ教徒が大勢住んでいます。ユダヤ人でユダヤ教を信じている、つまりアラブ世界でもなければ、イスラム世界でもない人たちが住んでいるのです。北側のレバノンには、キリスト教マロン派の人たちが大勢住んでいます。ですから中東にはキリスト教世界もあります。

私たちはつい「アラブ世界=イスラム世界=中東」と思ってしまいますが、この3つは全く別ものなのです。

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該当講座

池上彰が紐解く、アラブの今と未来
池上彰 (ジャーナリスト/中東調査会会員/東京工業大学教授)

長期独裁政権下に置かれたアラブ諸国の民衆が、民主化を求め立ち上がった「アラブの春」。チュニジアから端を発した民主化運動は、隣国のエジプト、リビアに飛び火し、各国で続いた長期独裁政権を崩壊させる結果となりました。 アラブで起こった一連の民主化運動は、FacebookやTwitterなどのSNSが民衆....


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