記事・レポート

ネットいじめ~ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」

更新日 : 2009年07月07日 (火)

第4章 「ネット上のいじめ」と「ネットいじめ」の違い

荻上チキさん

荻上チキ:  僕は「ネットいじめ」というものを、「ネット上のいじめ」のことではなくて、「ネットを利用したいじめ」というふうに定義しています。

「ネット上のいじめ」というのは、例えば、特定のハンドルネームへのバッシング、あるいはよく「炎上事件」と言われるような、特定の企業やマスコミに対するバッシング現象のようなものと混同されてしまう。これは一般的には「ネットいじめ」とは呼ばれません。そういったものは「炎上」「晒し」あるいは「メディアリンチ」といった表現を使うわけです。

では、「ネットを利用したいじめ」というのはどういうことなのかというと、メールとか、さっき上げた学校勝手サイト等を通じて、「特定の人をいじめるためにインターネットを使う」ということです。

ですから、地域や職場でのいじめも同じです。メールでいじめたり、あるいは会社SNSがあちこちの企業にあったりするわけですけれど、そういったサイト内で特定の社員の悪口を実名で書いたりするということも、「ネットを利用したいじめ」というパターンとして分類することができる。

「ネットいじめ」は、いくつかのパターンに分類できますが、さしあたり、主な6つを紹介してみましょう。

1番は直接、加虐的なメールを送信する。例えば、「お前ウザイんだよ」とか、あるいは「明日から学校来なくていいよ」とか、あるいはパシリ、何か命令してその人に加虐的な行動を行うというパターンです。

2番目が、集団で加虐的なメールを送信する。例えばイッセイノセで、「お前、キモイんだよ、明日から学校に来なくていいんだよ」という形でメールを送るパターン。

3番目は既存メールの送信です。当人に送られるという形ではなくて、周りの人たちで、ある種の情報を共有することによって、その人のコミュニケーション自体の位置関係を操作するというパターンで、その人を追い込んでいくいじめというのがあるわけです。メールじゃなくて、ウェブサイトの書き込みに転用するならば、特定多数のサイトで特定の人たちの悪口を書くというパターンにも応用が利きます。

4番目、なりすましメールを送信する。メールを送るときのヘッダー部分は、ある程度自分で変えることができるわけです。ですから、例えば僕が送ったんじゃないけれど、「荻上チキから来たメールです」みたいなことは、誰でも可能だったりするわけです。そのように、いじめられっ子になりすまして複数人にメールを送ることによって、本人の居場所を損なわせていくというようなパターン。

5番目は不利に陥るメールを送るよう脅迫する。これは結構よくあるパターンで、例えば、「お前、あいつのこと好きなんだろう、コクッちゃえよ」みたいなメールを強引に送らせて、でも相手の子は、学校の中でからかわれている女の子だったりして、「ヤーイ、ヤーイ」とはやしたてるみたいな。そういうのをメールとかインターネットを使ってやるというパターンです。

6番目は具体的ないじめの画策ということで、今までであれば、学校の帰り道とか、誰かの家に集まったりしたときに相談していたようなことを、ネットを通じて具体的に「○○をいじめようぜ」という形で画策するというパターンです。