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ハーバード大教授が見た松坂メジャー革命:日米文化とビジネス戦略

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年05月07日 (水)

第6章 日本とアメリカの野球の違いは、文化の違いだけでは説明できない

アンドリュー・ゴードン

アンドリュー・ゴードン: 最悪のピッチングだった対マリナーズ戦の後、松坂は練習方法を変えました。日本でやっていたのとまったく同じ練習にはしませんでしたが、登板と登板の間の投げ込みや走り込みを増やしました。自分が慣れ親しんできた練習方法に戻したのです。その後2カ月半(5月中旬から7月の終わりごろまで)は、松坂はいい成績を残しました。しかし8月に入ると、また少し悪くなりました。シーズンの長さが響いたのではないかと思います。

当時、松坂は疲労を否定していましたが、今年(2008年)2月になって、昨シーズンは途中で疲れきってしまったことを新聞で公に認めました。だから松坂は、今年はやり方を変えなくてはなりません。日本とアメリカでは野球のやり方、練習方法に違いがあるのですが、松坂とレッドソックスは、未だにこの問題を解決できていないのです。

この違いを見つけることも大切ですが、私にとっては、一歩引いたところから「この違いをどう捉えるべきか」考えることのほうがおもしろいのです。これは、日本とアメリカに深く根を下ろしている違いなのでしょうか——

これについては、拙著『日本人が知らない松坂メジャー革命』(朝日新書)の中でも紹介しましたが、様々な学者が述べています。彼らの主張は、次の2つに分けられます。

【単純な日米文化論で説明する人】
『菊とバット』『さらばサムライ野球』の著者であるロバート・ホワイティングの立場。ホワイティングは、日本の野球をアメリカ人に紹介している最も有名な評論家で、本のタイトルからも想像できるように、日本野球は日本の文化に非常に深く根差している、日本野球とアメリカ野球は、両国の国民性を表していると論じています。

【文化の違いだけでは語れない、もっと複雑な問題だと説明する人】
エール大学教授の文化人類学者であるウィ リアム・ケリーや私の立場。文化の違いはあるが、それは流動的なものであり、時代と共に変わるものである。例えば同じアメリカ国内でも地域によって違う し、アメリカほど国土が広くない日本でも地域によって違う。地域的な違いもあるし、時代によって変わるという時間的な変化もある。

一口に文化と言っても問題は広く、決まりきったように考えることはできない。時代と共に野球のやり方が日本でもアメリカでも変わってくるだけでなく、異文化同士が相互に影響しあうことでも変わってくる。松坂現象も、その1つ。
文化そのものが変化するのです。単独で変化するのではなく、グローバルな交流の中で変化します。これが、本の中で私が主張したかった一番のポイントです。文化は歴史やグローバルな交流で形成されるものであり、野球も同じです。


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