記事・レポート
六本木アートカレッジ・セミナー
シリーズ「これからのライフスタイルを考える」第8回
なぜ、人は宇宙をめざすのか?
宇宙の人間学~「宇宙の視座」を獲得した人類~
更新日 : 2017年05月16日
(火)
第6章 「宇宙時代」の日本人の役割とは?
宇宙の視座と人間の心
清水順一郎: いくつか宇宙に関する有名な写真をご紹介します。
最初は1968年、人類史上初めて月を周回したアポロ8号から撮影された「地球の出」。白く輝く月面の向こうにぽっかりと浮かぶ地球の姿に誰もが感動し、自分たちの暮らす場所が「青い生命の星」であることを初めて認識しました。
アポロ計画の最後に打ち上げられたアポロ17号が月に向かう途中に撮影した“The Blue Marble”。陸や海、雲の様子まではっきりと映し出されたこの写真は、20世紀における最高の1枚とも言われています。9.11の米国同時多発テロの直後、ISSから撮影したニューヨーク上空の写真、巨大なハリケーン、火山が噴火する様子を宇宙からとらえた写真もあります。現在はISSや人工衛星を通して、リアルタイムで地球の姿がわかるのです。
こちらは、若田さんがISSの船長を務めた際、その船内で撮影された写真です。地球を模したボールを中心に、国籍の異なる6名の乗組員が輪になっています。まさに、「和の心」を象徴する素敵な写真です。
高柳雄一: 1990年、ボイジャー1号が地球から約60億km離れた海王星と冥王星の軌道の外、太陽系の端から撮った“Pale Blue Dot”も有名な1枚です。これは、太陽系を離れるボイジャー1号が最後に送ってくれた地球の写真でもあります。目を凝らして見なければわからないほど、小さな、小さな青い点。これが地球です。
的川泰宣: 私にこの写真を見せてくれたのが、著名な学者であり、SF作家でもあったカール・セーガン氏でしたが、その際に説明してくれた内容がとても印象的でした。
この青く小さな点の中に、70億もの人が暮らしていることは非常に不思議だ。しかし、核兵器が使われれば、この青い点はどす黒い色に変わる。しかし、それを宇宙の誰かが見て、あの星に異変が起きたぞと言って助けに駆けつけてくれる気配は全くない。それをこれほど雄弁に物語っている写真はない。だから、この青い点を守り続けることが、我々に課せられた最も大きな仕事だ、と。
樋口清司: 「宇宙の視座」を持つことは、自分の心のあり方、人間自身を見つめ直すことにつながる。古代ギリシャでは、心と科学の学問は一緒のものとして扱われていましたが、時代が進むうちに両者は別々のものとして切り離されていきました。そして「宇宙の視座」を得たいま、再び心と科学は一緒に考えるものになっているような気がします。
本当に話は尽きませんが、最後にひと言ずつ。今後、宇宙船地球号の一員として、日本人の特長をどのように発揮していくべきか?
高柳雄一: 極東にある日本は、歴史的に見れば「文化のふきだまり」とも言えます。しかし、極東にあるおかげで多様な文化が到来し、それらを自分たちが使いやすいように上手に翻訳・変換することで独自の文化を創り上げてきました。さらに、この能力は専ら、みんなで仲良く、幸せに暮らすために使われてきたわけです。こうした歴史の延長線上にいることを認識し、大切にしていけば、日本人らしい形で貢献できると思います。
的川泰宣: 東日本大震災の際、整然と列をつくり、譲り合う日本人の映像がテレビで流れ、世界中の人たちを驚かせたそうですが、今度はその気持ちを世界のために使おうと考えることが大切だと思います。世界の人々を団結させるために、日本人らしい「和の心」で貢献できることは、たくさんあるはずです。
清水順一郎: 日本人の特性は、覇権をとるだとか、指導的に振る舞うというよりも、集団の中において自分に与えられた使命や役割を全うすること、さらに、役割以上のものを提供しようと努力することにあると思います。たとえ目立たなくとも、絶対的に欠かせない存在。それが、日本人の貢献のあり方として目指す方向だと思います。
樋口清司: 日本人は、地球や人類の未来を支えるための素質がある。「宇宙の人間学」研究会を通じて、私たち4人はそう確信するに至りました。皆さんもぜひ、自信を持って世界に貢献してください。最後は、JAXAが打ち上げた月周回衛星「かぐや」から撮影された「満地球の出」を眺めつつ、『ふるさと』の歌を聴きながら終わりたいと思います。(了)
本当に話は尽きませんが、最後にひと言ずつ。今後、宇宙船地球号の一員として、日本人の特長をどのように発揮していくべきか?
高柳雄一: 極東にある日本は、歴史的に見れば「文化のふきだまり」とも言えます。しかし、極東にあるおかげで多様な文化が到来し、それらを自分たちが使いやすいように上手に翻訳・変換することで独自の文化を創り上げてきました。さらに、この能力は専ら、みんなで仲良く、幸せに暮らすために使われてきたわけです。こうした歴史の延長線上にいることを認識し、大切にしていけば、日本人らしい形で貢献できると思います。
的川泰宣: 東日本大震災の際、整然と列をつくり、譲り合う日本人の映像がテレビで流れ、世界中の人たちを驚かせたそうですが、今度はその気持ちを世界のために使おうと考えることが大切だと思います。世界の人々を団結させるために、日本人らしい「和の心」で貢献できることは、たくさんあるはずです。
清水順一郎: 日本人の特性は、覇権をとるだとか、指導的に振る舞うというよりも、集団の中において自分に与えられた使命や役割を全うすること、さらに、役割以上のものを提供しようと努力することにあると思います。たとえ目立たなくとも、絶対的に欠かせない存在。それが、日本人の貢献のあり方として目指す方向だと思います。
樋口清司: 日本人は、地球や人類の未来を支えるための素質がある。「宇宙の人間学」研究会を通じて、私たち4人はそう確信するに至りました。皆さんもぜひ、自信を持って世界に貢献してください。最後は、JAXAが打ち上げた月周回衛星「かぐや」から撮影された「満地球の出」を眺めつつ、『ふるさと』の歌を聴きながら終わりたいと思います。(了)
該当講座
六本木アートカレッジ これからのライフスタイルを考える 「なぜ、人は宇宙をめざすのか?」
清水順一郎(「宇宙の人間学」研究会事務局/代表)×的川泰宣(JAXA名誉教授)×高柳雄一(多摩六都科学館館長)×樋口清司(前JAXA副理事長)
人はどうして宇宙に憧れるのか? そして、テクノロジーの進化により「宇宙ステーション」という視座を得ました。また、太陽系以外の存在が明らかになるにつれ、地球外生命の存在や、他星での居住可能性などが議論されるようになってきています。
研究や技術が進化し、ユニバース(単一宇宙)からマルチバース(複合宇宙)という新たな視座が生まれたことがその理由です。
地球ではない場所で人や動植物のような生命体が存在するとしたら、果たしてそもそも「生命」とはどういう定義になるのでしょうか?地球という有限な惑星に生きる私たちは、これからどのように多様化し、社会生活を営んでいくのでしょうか?人間らしさはどのように変容していくのでしょうか?
六本木アートカレッジ・セミナー
シリーズ「これからのライフスタイルを考える」第8回
なぜ、人は宇宙をめざすのか?
インデックス
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第1章 「宇宙の人間学」のはじまり
2017年05月15日 (月)
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第2章 「新しい宇宙観」の幕開けの時代
2017年05月15日 (月)
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第3章 宇宙に関わる人が持つ3つの心
2017年05月15日 (月)
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第4章 知のフロンティアにおけるアートの役割
2017年05月16日 (火)
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第5章 若田光一さんが体現した「和の心」
2017年05月16日 (火)
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第6章 「宇宙時代」の日本人の役割とは?
2017年05月16日 (火)
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