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スタジオジブリ最新作「レッドタートル ある島の物語」を手掛けた
マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督と高畑勲監督が特別対談!

アニメーションの源泉と作品秘話に迫る

更新日 : 2016年12月21日 (水)

【後編】~「レッドタートル ある島の物語」誕生秘話~


 
短編の巨匠マイケル監督が、なぜ長編を手がけたのか?

高畑監督: 「岸辺のふたり」があまりにも素晴らしく、私もジブリの鈴木敏夫も大変に気に入り、マイケル監督に長編映画を作ってみないかと呼びかけました。これが「レッドタートル」につながったのです。短編映画も1つの素晴らしいジャンルです。短編で高みを極めていたマイケル監督が、なぜ今回長編に挑戦してくれたのでしょうか?

マイケル監督: ジブリから依頼があった時、大きな衝撃でもありましたが、同時にとても嬉しく「やってみたい」とポジティブに捉えることできました。90年代からジブリの作品を見てきて、尊敬できるアニメーションスタジオだと思っていたからです。そして、長編ではまた違うチャレンジができると思いました。

短編でも、私は毎回必ず新しい試みをしています。たとえば「岸辺のふたり」は制作に2年をかけた作品ですが、一人の人間の一生を簡潔で静粛に描くことに挑戦しました。

それまでも長編を作らないかと持ちかけてきた人はいました。すばらしいスタッフをつけるとか、お金をたくさん出すなどの話もありました。けれども、長編を作る時は、アーティストとしての弱い部分をさらけ出さないと作れないと思っていました。また、熱意も重要だと思います。

実は、いつか長編を作るなら、南の島へ漂流する男の話を描きたいと思っていました。その中で、純粋な男女のラブストーリーを語りたいと思いました。そして、自然の描き方もただ美しい夕日を見せ、動物や花を見せるだけでなく、自然がもつネガティブな部分も描き、観る人にも感じてもらいたいと思っていました。
 
高畑監督: 「レッドタートル」では、日本の古い時代の「恋」のイメージを表現していると思います。「恋」といっても「I miss you.」に近い意味で、それをマイケル監督が意識していることは重要だと思います。

漂流というと、ロビンソンクルーソーなどを思い浮かべ、サバイバルシーンを楽しみにしている人もいると思いますが、この映画にそういうシーンは一切ありません。食べ物など物理的なものではなく、精神的なものに飢えている(Longing「切望している」)主人公が描かれているのです。

マイケル監督: 高畑監督が、私が言いたかったことをすべて語ってくれました。この映画で、「Longing」という感情はとても重要です。


最後に映画について両監督から一言

高畑監督: 映画は娯楽だけど、観る側にバンバン向かってきて座っているだけで泣けたりする作品が多い中、この映画は見つめる映画だと思います。日本ではあまりない滋味あふれる作品になったと思います。ぜひ観ていただきたいと思います。

マイケル監督: あえていうなら、この映画は論理的思考で作っていません。音楽を聴くときのように、身をゆだねて観てほしいです。


【コラム】会場からの質問


Q1 長編を作る時に、観客があきない工夫は?

マイケル監督: 主人公が、挑戦と失敗を繰り返しシーンなどは、集中して見てもらえますが、ハッピーシーンが続くと、飽きられるようです。さじ加減は難しいのですが、エンタメ性や見ている人が飽きないことばかりを考えず、自分の伝えたいストーリーを忘れないのが大切だと思います。


Q2、マイケル監督のオリジナル性はどのように表現したのですか?

 

マイケル監督: 今回の制作で、最初は個性的だったアニメーターたちですが、コミュニケーションを取りながら何年も仕事をしていくうちに、作品に1つのスタイルを定着させることができました。


Q3、この映画を見ながら飲むおいしいワインを教えて下さい(会場:笑)

マイケル監督: この作品は、フランス南西部のアングレームという場所で作りました。その地方でのワインを飲みながら見てもらえば嬉しい(笑)。




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高畑勲がマイケル監督と語る、アニメーションの源泉と文化
スタジオジブリ最新作「レッドタートル ある島の物語」はどこから来たのか?
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マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット(アニメーション映画監督)
高畑勲(アニメーション映画監督)
構想10年、制作8年の歳月を経て、スタジオジブリでは初となる海外制作作品『レッドタートル ある島の物語』が完成しました。想像力を掻き立てる魅力に溢れた創作の源泉とは?そして、作品の舞台でもありマイケル氏が育ったオランダという土地、影響を受けているという日本文化や死生観など、高畑氏との対談で、その秘密にせまります。


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