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撮って、残して、味わって。

写真家・川島小鳥が語る「写真を撮る理由」

更新日 : 2016年04月20日 (水)

第6章 全員が『未来ちゃん』の写真集


 
受け取り方は見る人の自由

古川誠: 『明星』には色々な世代の人達、動物、風景がたくさん出てきますね。

川島小鳥: 人に関しては、登場する全員が『未来ちゃん』というイメージで撮りました。生き生きとした本、弾ける感じの本にしたかったから。

古川誠: なるほど。たしかに、『未来ちゃん』と同じように、誰もが変に構えていないというか、自然体で、とても生き生きしている。人だけでなく、ネコやイヌもそう。特に、キュートな若者がたくさん出てきます。

川島小鳥: 最初の頃は街角スナップでしたが、その後、子どもを撮りたいと思い、色々な小学校に連れていってもらい、1年ほど撮り続けました。その次はティーンエイジャーを撮りたいと思い、台湾で仲良くなった同世代の友達に「いい人がいたら紹介して」と頼んだところ、全員から「いない」と言われてしまって。よく考えたら自分も34歳で、ティーンエイジャーの友達なんていないなと気がついて……。絶望しながら、パン屋に入りました。

古川誠: 絶望して、パン屋に入ったの?(笑)

川島小鳥: すると、なぜかパン屋さんのおじさんが「このお店で集めてあげよう」と言ってくれて、フェイスブックで募集してくれました。それからは週末になると、パン屋で若者を待ちました。

古川誠: よくわからないけれど、すごくいい話です。

川島小鳥: そのような感じでたくさんの若い人達と出会って。普通に出会った人もいましたが、なぜか18歳が多かったですね。

古川誠: 彼らは自分達が『明星』に登場することを知っている?

川島小鳥: 知っています。先日、肖像権の確認をとるために連絡したので。

古川誠:  きっと、とてもいい思い出になりますよね。先ほど言われていた「ここは明るい星」「誰もがみんなアイドル」という言葉を聞いてから彼らの写真を見ると、さらにグッときます。
 
川島小鳥: やはり、言葉はとても強いですよね。例えば、谷川俊太郎さんと一緒につくった『おやすみ神たち』も、つくるのは大変だったけれど、言葉が本当に素晴らしくて、とても楽しかった。谷川さんは『明星』のために、一編の詩も書いてくれました。何も説明していないのに、僕の考えていたことがそのまま言葉になっていて、感動しました。今日は持って来るのを忘れましたが。

古川誠: それはぜひここで読んでほしかった!(笑)

川島小鳥: 読むとまた泣いてしまうから。

古川誠: それでも、少しだけ紹介してもらえませんか?

川島小鳥: うーん……。みんなの心の中に星があって、それがつながっていく。その中には自分もいるし、あなたもいるけれど、まだ出会っていない人もこれからつながっていく……。僕が説明すると陳腐に聞こえますが、谷川さんの言葉で読むと、泣いてしまいます。

古川誠: ありがとうございました。言葉という意味では、小鳥さんの中にある「この写真は、こう感じてほしい」という思いを、ご自身で説明することはないのでしょうか?

川島小鳥: 僕の本が誰かの手に渡ったら、それはもう必要ない。受け取り方は、その人の自由です。

古川誠: 自由ですか。例えば、僕が小鳥さんのような写真を撮ることができて、写真集を出すとなったら、おそらくどこかのページに「思い」を認めてしまうかもしれません。とても素敵なコンセプトがあるのなら、みんなに知ってほしいですから。

川島小鳥: それは少し押しつけがましいような……。

古川誠: たしかに、そこが難しいというか、言葉の怖いところかもしれませんね。


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撮って、残して、味わって。すると何が見えますか?
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写真集「未来ちゃん」後、待望の最新写真集を発売する川島さんと、オズマガジン編集長が、写真を「残すこと、味わうこと」について語ります。


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