記事・レポート
Incubation Hub Conference 2014
グローバル・イノベーターの条件
オープンイノベーションが新たな未来を創る
BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年06月10日
(水)
第6章 ITの過去・現在・未来を俯瞰する

IoT(Internet of Things)と日本企業
松本真尚: 次に、IT市場で起こりつつあるパラダイムシフトについて。まずは、ITをめぐる過去・現在・未来について考えてみましょう。
いまから10年前、Android、iPhone、twitter、facebookなどは存在していませんでした。しかし、現在は誰もが当たり前のようにスマホを持ち、twitterやfacebookを使っている。イノベーションにより、10年前には存在しなかったモノが生み出され、私たちの生活を一変させているわけです。
そして、未来。Amazonのドローン配送、コンピュータを内蔵したコンタクトレンズなど、10年後には当たり前のように存在すると言われるモノは数多くあります。過去のイノベーションが私たちの生活を一変させたように、これらは予想すらできない方向に社会の仕組みを変えていくはずです。
そして、過去と未来の中間、まさしく現在進行形で起きているパラダイムシフトが「モノとITの融合」、すなわちIoT(Internet of Things)です。かつては空想話だった家電の遠隔操作、車の自動運転はすでに実現しており、モノづくり企業の方々もITとのつながりを無視できなくなっています。
日本が得意とするモノづくりと、ITの融合が進むいまこそ、日本企業には大きなビジネスチャンスが到来していると思います。このチャンスを逃してしまえば、シリコンバレーとの差はもちろん、世界との差も開いてしまうでしょう。例えば、インドや中国、イスラエルのように、イノベーションの発信拠点は世界で広がりを見せており、もはや“Silicon Valley is King”とは言えない状況も生まれています。まさにいま、日本企業は大きな正念場を迎えていますが、エンジニアである田中さんは、IoTについてどのように感じていますか?
田中章愛: 続々とスタートアップが誕生するシリコンバレーは、起業のリスクや失敗に対して寛容です。一方で、日本は起業に対する意識のハードルがまだ高い。現時点で考え得る日本的なIoTの進め方として、異なる企業同士で人材を出し合い、アイデアや技術をかけ算したり、結びつけていったりすることが、1つのブレイクスルーにつながると思います。
ソニーは、ハードウェアは強いものの、ソフトウェアはそこまでではない。そこでSAP(Sony Seed Acceleration Program)では、ヤフーさんと一緒にIoTをテーマにしたアイデアソンを行いました。たくさんのユニークなアイデアが出ましたが、それ以上に楽しかったのは、自分と同じように共創の意識を持つ社外の方々と、1つのチームになれたこと。こうした刺激を受ける機会は、なかなかありませんから。
松本真尚: なるほど。川邊さんは現在のパラダイムシフトについて、どう感じていますか?
川邊健太郎: 過去20年のITビジネスは、いわば「インターネット上」で限定的に発展してきた感があります。今後は、ITとリアルが融合する時代が到来するだけでなく、ビッグデータが増え、それらを解析することで、いままでにない産業が生まれると思います。
もう1つは、FABです。3Dプリンタなど、手軽にアイデアを形にできるツールが登場し、Webが登場した時と同様の現象が、モノづくりの世界にも起きています。Web以前のメディアは、紙と電波が中心で、メディアを使える人は、一部の特権を持つ人に限定されていました。しかし、Webが登場したことで、誰もが簡単にメディアを生み出せるようになり、情報の多様性とともに、新たなビジネスも登場しました。
モノづくりの世界では、依然として一部の人が高価な設備・材料といった特権を握っている状態ですが、3Dプリンタやレーザーカッターが登場したことで、誰もがMakerになり始めている。今後は、ますますこの流れが加速すると思います。
松本真尚: 本当にそう思います。山田さんはいかがでしょう?
山田進太郎: 僕も、皆さんが言われた方向に進んでいくと思います。むしろ、今後はそうした未来を大前提として、あらゆるビジネスを組み立てていくことが重要です。
川邊健太郎: 1つ言いたいのは、新たなビジネスを興すにしても、大企業であれば、「それは1,000億円単位で儲かるのか?」という議論になり、可能な限りリスクを避けようと、できない理由を100個も200個も挙げ始めます。しかし、ベンチャーであれば、そのハードルは結構低く、「全部はできないけれど、これとあれならできる」となりやすい。おそらく、この違いが10年後、20年後に大きく影響してくるのだと思います。
ソニーは、ハードウェアは強いものの、ソフトウェアはそこまでではない。そこでSAP(Sony Seed Acceleration Program)では、ヤフーさんと一緒にIoTをテーマにしたアイデアソンを行いました。たくさんのユニークなアイデアが出ましたが、それ以上に楽しかったのは、自分と同じように共創の意識を持つ社外の方々と、1つのチームになれたこと。こうした刺激を受ける機会は、なかなかありませんから。
松本真尚: なるほど。川邊さんは現在のパラダイムシフトについて、どう感じていますか?
川邊健太郎: 過去20年のITビジネスは、いわば「インターネット上」で限定的に発展してきた感があります。今後は、ITとリアルが融合する時代が到来するだけでなく、ビッグデータが増え、それらを解析することで、いままでにない産業が生まれると思います。
もう1つは、FABです。3Dプリンタなど、手軽にアイデアを形にできるツールが登場し、Webが登場した時と同様の現象が、モノづくりの世界にも起きています。Web以前のメディアは、紙と電波が中心で、メディアを使える人は、一部の特権を持つ人に限定されていました。しかし、Webが登場したことで、誰もが簡単にメディアを生み出せるようになり、情報の多様性とともに、新たなビジネスも登場しました。
モノづくりの世界では、依然として一部の人が高価な設備・材料といった特権を握っている状態ですが、3Dプリンタやレーザーカッターが登場したことで、誰もがMakerになり始めている。今後は、ますますこの流れが加速すると思います。
松本真尚: 本当にそう思います。山田さんはいかがでしょう?
山田進太郎: 僕も、皆さんが言われた方向に進んでいくと思います。むしろ、今後はそうした未来を大前提として、あらゆるビジネスを組み立てていくことが重要です。
川邊健太郎: 1つ言いたいのは、新たなビジネスを興すにしても、大企業であれば、「それは1,000億円単位で儲かるのか?」という議論になり、可能な限りリスクを避けようと、できない理由を100個も200個も挙げ始めます。しかし、ベンチャーであれば、そのハードルは結構低く、「全部はできないけれど、これとあれならできる」となりやすい。おそらく、この違いが10年後、20年後に大きく影響してくるのだと思います。
Incubation Hub Conference 2014
グローバル・イノベーターの条件 インデックス
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第1章 ソニーに息づくイノベーションのDNA
2015年06月03日 (水)
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第2章 大企業の中からスタートアップを生み出す
2015年06月03日 (水)
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第3章 フリマアプリ「メルカリ」誕生秘話
2015年06月03日 (水)
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第4章 メルカリが米国進出を決めた3つの理由
2015年06月10日 (水)
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第5章 数字で見る日本とシリコンバレーの差
2015年06月10日 (水)
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第6章 ITの過去・現在・未来を俯瞰する
2015年06月10日 (水)
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第7章 日本を起業大国にするために必要なこと
2015年06月17日 (水)
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第8章 日本企業が再び世界を席巻する日は必ず来る
2015年06月17日 (水)
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第9章 ベンチャーへの理解者・共感者を増やす方法とは?
2015年06月17日 (水)
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