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ときには裏切られたり、人を傷つけたりもする。それでも、私は信じたい。

大宮エリー的『言葉の力』

キャリア・人文化
更新日 : 2013年01月10日 (木)

第2章 エネルギーをチャージすることって?

写真左:生駒芳子(ファッションジャーナリスト)写真右:大宮エリー(作家/脚本家/映画監督/演出家/CMディレクター/CMプランナー)

 
エネルギーの源は「アートとご飯」

生駒芳子: バック・トゥー・ルーツじゃないですけど、失われつつある感性をもう一度呼び覚まし、生活を楽しく循環させるとか、環境づくりが必要な時代に入っていますね。だから、生活の中にもっともっとアートのエネルギーを取り込みたいと思うんです。

大宮エリー: とても良く分かります。例えば、取材で「映画や本でいうと、どういうものに刺激を受けますか?」って聞かれることがあるのね。私、王道もの以外あまり映画を見ないので「タイタニックが一番好きです」なんて言うと、雑誌の編集の人がサーッと引いていく。「ほかにないですか? もっとマニアックなやつは」と言いたげな顔をして(笑)。だから、何に刺激を受けていますか?と聞かれたときは、「アートとご飯」って答えるようにしています。

西京焼きのかけらから受け取った、作り手の愛情に思わず……

ちょっとご飯の話をしていいですか? 福島屋っていうそば屋に友達に連れていってもらったことがあったんです。もう閉店の時間で、女将が「もう出せるものがなくって」と、申し訳なさそうに言う中、私たちは「一杯だけだから。何も食べないから」って無理に入れてもらって。

そうしたら、おかみとその息子が「何か出さなきゃ」みたいなことを相談し始めたんです。「ミョウガがあったからちょっと作ってみた」とか、そこからもう、出るわ出るわで。しかも、これがおいしいんですよ。「できない」「何もない」からの創造力というか、料理も一個一個すごく愛情がこもっていたのね。小さなかけらみたいな西京焼きを食べたとき、私なんだか涙が出て……。ああ、こういう作品を作りたいなって思ったの。見たあとに、とってもハッピーな気持ちになる、作り手の愛情が伝わるような作品を。そんな風にエネルギーチャージしているんです。

生駒芳子: なるほどね。

エアーズロックと『100生きて死ね』

大宮エリー: ずい分昔ですが、友達とエアーズロックに登ったときは、かなり過酷でした。軽い気持ちで登り始めたら、すごく急な岩場で、「これ、」死なないかな?」「死ぬね、これ」とか話しながら歩いてるうちに下りられなくなっちゃって。仕方なく最後まで登ったんですけど(笑)。

「“地球のへそ”とはこのことよ」って感じで、頂上からの景色、本当に地球が丸く見えたんです。将来のことや恋愛のことで悩んでいたことが、どうでもよくなって、「地球スゲー!」「私、生かされているんだ。ありがたや、ありがたや……」みたいな。この気持ちをキープし続ければ、人は幸せに生きていけるなんだろうなと思ったの。

生駒芳子: 生かされている。いい言葉ですね。

大宮エリー: その後、直島のベネッセハウスミュージアムに行く機会があって、『100生きて死ね』(編注:ブルース・ナウマンによる1984年の作品)だったかな。いろんな色のネオンで、「LIVE」と「DIE」とか、相反する言葉が点滅する作品があるんです。それを見たときに命懸けで登ったエアーズロックときのことを思い出したの。

今、この地球上には、笑っている人もいれば泣いている人もいるし、生まれた人もいれば死んじゃう人もいる。エアーズロックから景色を見たときと同じ感覚になったんです。そのときにも、アートってこういうことなのかなって思いました。

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