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WANTED! 求むリーダー

~リーダーシップの本質を明らかにする本を紹介します~

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2012年10月18日 (木)

第1章 辛いものだよ、リーダーは

3.11以降、連日のようにリーダーシップのあり方が議論され、優れたリーダーの出現が期待されています。しかし、その重要性が叫ばれるほどコンセプトは撹拌され、実体がわからなくなっています。そこで、六本木ライブラリーの蔵書から、リーダーシップやリーダーの本質を明らかにする手掛かりとなる書籍を選んでみました。

講師:澁川 雅俊(アカデミーヒルズフェロー/前慶應義塾大学環境情報学部教授)

六本木ライブラリー ブックトーク 紹介書籍

リーダーシップを確認するさまざまな本

澁川雅俊: 「われわれのために指導者を求めること、それはわれわれにとって、われわれ自身を探求することだ。」とは『星の王子さま』を書いたサン=テグジュペリが残したことばです(サン=テグジュペリ著作集『手帖』)。それは第二次世界大戦が始まったころのことです。昨年(2011年)の東日本大震災以降の大混乱の中で日本でも、連日のように<リーダーシップ>のあり方が糾弾され、優れた<リーダー>の出現を期待されています。辞書ではリーダーを団体、社会、国家などの組織を指導する立場にある人と定義していますが、今回はリーダーとリーダーシップの本質、あるいは実体を明らかにする手掛かりとなるもので、最近出版された40点ほどを六本木ライブラリーの所蔵書から選んでみました。

関連本を手にしてざっと眺めてみて気づいたのですが、リーダーは、常に危機を察知し、それを回避し、それを克服することが求められているようです。多分それは大変辛い役回りではないでしょうか。

『リーダーの危機突破力』(佐山展生)、『予測できた危機をなぜ防げなかったのか?』(マックス H.ベイザーマン、マイケル D.ワトキンス)、『徹底のリーダーシップ』(ラム・チャラン)、『最前線のリーダーシップ』(マーティ・リンスキー 、ロナルド・A・ハイフェッツ)にそのことが共通して書かれています。

佐山は、現代日本のカリスマ経営者たちの所見を通じて、最善最速の決断力、豹変を怖れぬ勇気、変化の本質を見抜く大局観の三点を危機克服の要件であると指摘しています。

また危機の要因についてベイザーマンとワトキンスは、重要な指摘をしています。すなわち、危機が迫っていることを示すデータが、潜在的ではあるが、十分にあるのに、リーダーの心理的要因や彼を取り巻く組織的障壁や政治的影響などのバイアスで、見過ごしされてしまったとき、降ってわいてくる、と述べています。だとすると、リーダーは一瞬も気が抜けませんね。

チャランは米国化学会社デュポンの会長が「百年に一度の危機」を察知し、わずか6週間で最悪のシナリオから脱出した事例から、リスクマネジメントとリーダーの在り方を論じています。この著者は危機の時代に立ち向かうリーダーの資質を幾つか指摘していますが、それらはリーダーの普段の心がけで、取り立てて危機的状況に備えるなどと力むことではなさそうです。

『最前線のリーダーシップ』は、その邦訳にアカデミーヒルズ理事長の竹中平蔵がかかわっていますが、副題が「危機を乗り越える技術」と強調されており、前3点と同様に、最前線のリーダーに危機の察知、回避克服を課しています。ただ原著者たちはいずれも統治、あるいはパブリック・リーダーシップの研究者であり、本書も政治・行政、社会問題におけるガバナンスに関して考察しています。

なおパブリック・リーダーシップに関しては、『リーダーの掟』(飯島勲)、『「リーダーの条件」が変わった』(大前研一)、「リーダーシップ」(山内昌之)、『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』(村松岐夫)などがあります。ただし飯島は、現政権(※民主党政権)の不甲斐なさを背景にして結局は小泉純一郎を称えているだけで、このブックトークの意図にはそぐわない本です。

大前は、かつて経営コンサルタントとして企業経営について大いに語り、かつ書いていましたが、本書では災害復興、電力インフラ、食料資源、水資源、財政危機など、大混乱のいまの日本の重要課題を解決に導く国レベルのリーダーの必要性を訴え、「『危機の時代』を乗り越える新しい統率力」、「リーダーの条件」について熱く議論しています。

山内は、イスラム研究を専攻する国際関係史学者で、政府の各種審議会や委員会に名を連ねている学識経験者の一人ですが、今日のリーダー不在の混乱を背景に、リーダーのあり方を問い直しています。彼はその照準を織田信長、吉田松陰、リンカーン、山口多聞(旧日本海軍の軍人)などの歴史的人物に置き、危機に直面した胆力と大局観を論じています。しかし民主党の歴代代表たちの批判に終わっているのは残念です。

村松の本は、わが国の官僚制度の研究書で、一般向きの読み物ではありませんが、国政のリーダーシップは政治家が取るのか、それとも官僚かを論じており、興味深い内容です。

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