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WANTED! 求むリーダー

~リーダーシップの本質を明らかにする本を紹介します~

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2012年10月23日 (火)

第4章 ‘本当の’リーダー?

六本木ライブラリー ブックトーク 紹介書籍

澁川雅俊: 待ったなしの危機を乗り越える新しいリーダーが必要であるとする議論については前に若干触れましたが、『リーダーシップ6つの試練』(ディーン・ウィリアムズ)、「本物のリーダーとは何か」(ウォレン・ベニス)、『シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ』(ジョセフ・ジャウォースキー)、『サーバントリーダーシップ』(ロバート・K・グリーンリーフ)などもあります。

ウィリアムズは危機を試練と読みかえ、いま国家やその他の組織・共同体の前にさまざまな試練が立ちはだかっており、それぞれに「リアル・リーダーシップ」が必要だと説いています。彼はそれを「組織や共同体、そして国家が、自らにとって最も困難な試練から目を逸らさず対峙し、成功に向けて最善を尽くすことができるようにサポートする」ことと規定し、さまざまな分野のリーダーたちが実際に直面した試練と克服のスタイルを分析しています。

ベニスはリーダーシップ研究の第一人者で、ドラッカーや、『第三の波』で有名なアルビン・トフラー、さらに多くの研究者や企業経営者に影響を与えたといわれている人物ですが、パブリック・リーダーシップの根幹に統率と自律を置き、人を引きつけるビジョン、その意義や重要性を伝える有効な方法、それを実現する絶妙なポジショニング、そしてその実現に創造力を発揮すること、を重視しています。なお彼はリーダーとマネジャーの違いを、片や誠実を旨とし、一方は正確を期すると説いていますが、その「誠実」のことばが、いまとても光っていますよね。

『シンクロニシティ』は、少し「奇妙な本」です。その奇妙さは書名の「シンクロニシティ」(synchronicity)に象徴されているわけですが、それは「二つもしくはそれ以上の出来事が意味深い形で偶然に起こること」「共時性」と解説にあります。そのことを、世の中には偶発的な出来事が少なくないが、それらの間には、明らかなでないにしても、つながりがあることがらの集合が見出せる、と言い直すことができるかと考えますが、一般には知られていないコンセプトですし、その意味を明示する具体的な事例もすぐには思いつきません。しかし、原題の副題に“The Inner Path of Leadership”とあり、外に現れていない「内面」部分を「霊的な」と解釈するならば、確かにこの本は‘真の’リーダーシップを追求していると読み取れます。

著者は、一見無関係に偶発する出来事を明視して、それらの中の幾つかのことがらが将来私たちに何か重大な影響を与えることを予測する、あるいは世の中を変える力がリーダーシップの根元にあると考え、世界中の識者やさまざまな分野の指導者たちやビジネス界の中心的人物たちに出会う旅に出かけ、さらに数々の文学作品などを読み漁る思索の旅をしながら、その力が何なのかを探り、新たな境地を見いだしていきます。

思索の旅と言えば、『サーバントリーダーシップ』は、原題の副題に“A Journey into the Nature of Legitimate Power and Greatness”(リーダーシップの正統性と真言を探求する旅)とあり、『シンクロニシティ』と同じようなリーダーシップへのアプローチを取っています。その旅の結論は、リーダーは人びとにより良い社会を築くための考え方や行動を促すことを旨とし、常に<サーバント>(他の人びとに奉仕する人)であるとして、その本質を追究しています。なおその考えは、寛容・慈愛・奉仕を基本理念とするアメリカン・ピューリタニズムが根底にあると考えらますが、前に紹介したベニスやハイフェッツほか、米国のリーダーシップの研究者や各界の指導者から絶賛を浴びています。

『リーダーの器は「人間力」で決まる』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング著、吉田寿執筆)と『脱カリスマ時代のリーダー論』(米倉誠一郎)は、‘本当’のリーダーについて少し異なる視点から考察しています。「リーダーシップは資質か技能か?」という問い掛けに対し吉田は‘ふつう’の人がリーダーとなるとき、その人の<人間力>に着目し、その力は「人を通じて発現される能力」であり「修練」(習い覚えるとか、体験するとか、訓練するということを超える)すれば身につけられると応え、コンピテンシー、達成動機、感じる知性、高潔な志などは後天的に修練できる能力と唱えています。

米倉は、もはや企業経営に「スーパースターはいらない! リーダーとは『誰がなるか』ではなく、『どのように務めるか』。『ふつうの人』がリーダーになるべき時代」と主張しています。事実、企業経営の分野に限ってみても5百万社もあり、その組織体のリーダーのすべてがカリスマでも、ひとかどの人物でもなく、ごく‘ふつう’の人が圧倒的に多いわけですから、それを念頭に‘本当’のリーダーを語る視点は限りなく重要でしょう。そのような本に『あなたの中のリーダーへ』(西水美恵子)と『ルフィと白ひげ 信頼される人の条件』(安田雪)を挙げておきます。とりわけ安田は、漫画「ONE PIECE」の登場人物の行動から‘ふつう’の人たちが逆境に立ち向かうときのリーダーシップについて考察しています。

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