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ホームレスから企業の上場を果たした男

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更新日 : 2010年03月01日 (月)

第5章 仲間にも妻にも、転職予定だった会社にも捨てられた

米倉誠一郎氏

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米倉誠一郎: 兼元さんは、愛知県立芸術大学に行ってデザインを学ばれたそうですね。

兼元謙任: はい。最初は子どもの遊具のデザインからはじめて、身障者などのユニバーサルデザインもやりました。

米倉誠一郎: いろいろ手掛けているうちに、だんだんと仲間が集まってきて活動を開始されたそうですが、それはどういったものですか?

兼元謙任: ボランティア活動です。例えば、僕も車椅子に乗っていたことがあるんですけど、雨が降ると傘を差せないんですよ。だから、上から被って体をくるむようなカッパをデザインして配ったり、そんなことをしていました。

米倉誠一郎: とても優秀なメンバーで、卒業後は『GKデザイングループ』という栄久庵憲司さんがやっている京都の有名なデザイン会社に就職したんですね。

兼元謙任: ええ。でも卒業した後も、総勢4、50人で集まってはデザインをして、ボランティア活動をしていたんです。活動場所を貸してくれていた建築塗装の会社から、「建築塗装の仕事は5K(汚い、危険、きつい、臭い、暗い)と言われている。デザインの力で何とかしてくれ」と言われて、京都のデザイン会社を辞めて、建築塗装会社にデザイン室長として入りました。

そこではまず、“下請け”というイメージを払拭しようと考えて、「製品をつくってグッドデザイン賞をとる」という目標を立てたんです。本当に通産省のグッドデザイン、中小企業庁長官特別賞をもらったんですよ。

米倉誠一郎: すごい。そのときも助けてくれた仲間がいて、そのネットワークを引っさげて東京に出てきた。ところが、そこで大変な目に遭ったそうですが、何があったのですか?

兼元謙任: 当時、「日本発のPCをつくる!」という勢いのあった会社の社長に、あるデザインを提案したら「君たち面白いね。うちの会社のデザイン部に加えてあげるから、東京に来なさい」って言ってくれたんです。「プライベートブランドのPCをアメリカでつくるから、3人ぐらい先発隊を用意して」と。もう意気揚々で、会社をさっさと辞めちゃいました。

東京に出発する2日前に、アメリカの社長さんと面談したとき、「失敗したら皿洗いできるか?」と聞かれました。僕は「覚悟しています」と答えたんですけど、他の仲間3人はそうじゃなかったみたいで、後で「ちょっと来い」と呼ばれて、「お前、大丈夫か?」と言われました。

僕は小さいころから虚弱体質で、小学生の頃には大病を患い、自殺を考えたこともありましたから、13年間、仲間と一緒に「ただひたすらにいいことをすれば自分もきっと治るし、みんなにもよくなってもらいたい」という想いだけでやってきたんです。そんな自分のバックグラウンドを仲間には話していなかったので、彼らにとったらすごく奇異に見えたんだそうです。

それに、僕はいろいろなところに提案して、賞をもらったり、商品化したりしていたので、「あいつはバックマージンをもらっているんじゃないか」と思われたんです。

米倉誠一郎: そんなのもらっていないのに、「お前だけ、いい思いしているんじゃないか?」と。

兼元謙任: はい。その疑念のうちに、「死ぬまでついて行くよ」と言ってくれていた仲間が名古屋でデザイン事務所をつくってしまったんです。がっくりして帰宅したら、家が真っ暗だった。

米倉誠一郎: 結婚して子どももいたけれど、40人の仲間と一緒に13年間、昼間は仕事でデザインを、夜はボランティアでデザインをして過ごしてきた。それがやっと認められて「アメリカに行くぞ!」と夢中になっていたら、突然仲間に裏切られて、打ちひしがれて家に帰ったら、家族がいなくなっていた。

兼元謙任: 灯が消えていて、ちゃぶ台の上に判子が押された離婚届と、「疲れました」と書かれた便箋がありました。妻の実家に行きましたが、お父さんが会わせてくれませんでした。「ボランティアとか言って世界平和を考える前に、家庭内平和考えろ!」と言われて。「おっしゃる通りです」みたいな……。

妻に会うことができなかったので、その場で聞こえるように大きな声で「アメリカに行く話もある。東京に行ってちゃんとやれば大丈夫だ!」と言って東京に出てきたら、社長が「ほんとに来ちゃったの? なんで?」と言うんですよ。

何度も食い下がったんですが、「はっきり言っておくけど、40人のボランティアがタダ同然で使えるのがお前のバリューで、それをなくしたらお前にはバリューがない」と、忘れられない一言を食らいました。30歳のときです。

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ホームレスから企業の上場を果たした男
兼元謙任 (株式会社オウケイウェイヴ 代表取締役社長)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

兼元謙任(株式会社オウケイウェイヴ代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
日本最大級のQ&Aサイト「OKWave」のノウハウを生かしたビジネスモデルと、2年間のホームレス生活を経て企業の上場を果たした兼元氏のライフトーリーに迫ります。


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