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カフェブレイク・ブックトーク「心に沁みることばの数々」

~決意を促す言葉、気が利く言葉~

更新日 : 2009年12月04日 (金)

第5章 これも名言か?

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍
澁川雅俊: 最近、『イギリス人の知恵に学ぶ妻がしてはいけない180のこと』と『イギリス人の知恵に学ぶ夫がしてはいけない181のこと』(いずれもサンマーク出版)という本が出されました。どのような文言が書かれているかというと、「夫の弱みにあえてつけ込んではいけない。夫を攻撃する人は他にたくさんいる。妻まですることはない」、「妻にガミガミ言ってはいけない。妻がケーキをこがしたり、ボタンをつけるのを忘れたりしても、彼女はそれについてくどくど文句を言われたくない」などです。それらの文言は男と女について短い表現ながら刃物がぐさっと突き刺さるよう寸言、あるいは寸鉄とすべきでしょう。

また最近、男と女の密なる関係を書かせたら右に出る者がいないといわれている小説家渡辺淳一が『男と女のいる風景-愛と生をめぐる言葉の栞』(PHP研究所)を出しました。いまちょっとばかり評判になっていますが、男と女の間のどんな真実が書かれているのか、ちょっと興味がそそられますね。

●おわりに

『カンブリア宮殿 村上龍×経済人社長の金言』(日本経済新聞出版社)の村上龍が最近出した『無趣味のすすめ』(幻冬舎)では、最近ビジネス界の若い人たちが事業の経営や仕事、さらに生き方に至るまで、そのコツを安易に求めようとしているが、そうしたことではいまのような大転換期を生きぬくことができない、というようなことを著者が言っています。

私はそれを斜め読みしながら突然「素読」のことを思い浮かべました。それは本に書かれていることの意味を気にせずに繰り返し音読することで、江戸時代の寺子屋の初等生の勉強方法のひとつでした。繰り返し音読することでテキストも内容も自分のものにしてしまうことになります。欧米でもシェークスピアを諳んじ、ゲーテやシラーの詩を口ずさむように丸暗記しなさいと言われていますが、世の名言、とりわけわが国のそれは『論語』などの中国古典に源流があることが多く、それらのテキストを諳んじることは切り出された名言を求めるよりも、もっとずっと有効に違いありません。俗に「古典を読め」との忠告はそのことにつながります。なおここでは取り上げませんでしたが、「声に出して読もう」とか「素読のすすめ」などの本もいま少なからず出されています。

ところで皆さん読書好きの方々なので、最後に読書に関する本を紹介します。それは『読書について』(PHP研究所)です。ライブラリー・メンバーのお一人がこの出版にかかわっておられます。この本自体は岩波文庫にも収められているように著名な本で、19世紀ドイツの哲学者ショウペンハウエルが著した読書論を含む小論文集です。そこに書かれている言葉は、名言というより警句として編集したものです。私たちの読書生活、というより本を読むことについての考えを正すことばの数々といっていいものでしょう。(終)

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