記事・レポート

加藤良三氏の「アメリカと野球雑感」

~野球と国際政治を10倍楽しむ方法~

更新日 : 2009年09月30日 (水)

第1章 WBCの監督選びが難航した理由

「WBCの監督選びが難航する理由」と「アメリカが世界の問題を解決しようとする理由」——まったく異なる分野の話をわかりやすく解説する加藤良三氏。外務省退任後、日本プロフェッショナル野球組織コミッショナーに就任したという異色の経歴を持つ氏の、野球と国際政治が楽しくなる、深くて鋭いお話です。お見逃しなく!

講師:加藤良三(日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー)

加藤良三氏

加藤良三: (2009年)3月に行われたWBCで、日本は2連覇を達成しました。WBCはアメリカが費用を全額負担する興行で、この点が五輪とは違います。アメリカが組み合わせを含めてすべて取り仕切っているため、日本と韓国は5回も戦わなければいけなかったのです。

組み合わせについていえば、日本と韓国は強いチームですが、ここにキューバまで入ってきました。「どうしてこういう不公平なことになるのか。日本は殆どのチームの顔さえ見られずに終わってしまうかもしれない」と大リーグの関係者に伝えたら、こんな答えが返ってきました。

「アジア・大洋州のチームは西海岸で集客力がある。ラテンアメリカはマイアミで一番集客力がある」(編注:ラウンド2の開催地は米国西海岸のサンディエゴと東海岸のマイアミ)「では、なぜキューバは我々の方に?」「キューバがマイアミに来ると、亡命の騒ぎが起きるから。西海岸なら離れているからまだしも安心。いわば隔離みたいなもの」と。

監督選任は、ご存知の通りなかなか難しいものがありました。最初の問題は、現職の監督に指揮をとってもらうかどうかでした。

前年(2008年)の10月に王貞治さんが監督を引退なさっていたので、私は王さんにお願いして、WBCの特別顧問に就任いただきました。その王さんも、当初は「現職は大変」という意見でした。今も基本的にはそうだと思います。ご自身がそうだったからです。

プロ野球の監督というのは、自分のチームをキャンプで育てて作らなければならないため、キャンプが非常に大事なのです。それが2月、3月に当たりますが、WBCの監督になると、その一番大事な時期にWBCのチームを見なくてはなりません。自分のチームを見られないのです。しかもWBCを終えて帰ってくると、すぐにレギュラーシーズンがはじまります。

これは過酷なことです。成績が悪いと監督は首になるかもしれません。現職監督がWBCの監督を引き受けるのは、ハイリスクなのです。

そういうわけで「現職監督ではない適任者」ということで人選が始まったのです。有力候補者は星野仙一さんでした。しかし星野さんはオリンピックでの成績がよくなかったということで、世間の反応に大変厳しいものがありました。身内の方にもバッシングが及ぶような事態となり、星野さんは「自分では日本の野球が盛り上がらないから降りる」と自らおっしゃったのです。

その後、現職監督ではない方2、3人に当たったのですが、皆さん、いろいろな事情があってお受けになれませんでした。そこでついに「現職の監督にお願いするしかない」ということになり、王さんにご相談して、原さんに頼むことにしたのです。読売の滝鼻オーナーも快く受けて下さいました。

原さんには監督選任問題が起こる前に、一度個別にお会いしたことがありました。その時は一般論としてでしたが、原さんに「現職の監督がWBCの監督をやるというのを、どう思われますか?」と尋ねたら、原さんはしばらく考えてから、「自分にチョイスがあるということならお受けしたくありません。でも『国のためにやってくれ』という状況になれば、責任を持って引き受けざるを得ないでしょう」とおっしゃったのです。そうした伏線もあって原さんにお願いして今日に至ったわけです。これにははからずして世代交替の意味合いもありました。


該当講座

アメリカと野球雑感
加藤良三 (日本プロフェッショナル野球組織 コミッショナー)

加藤良三(日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー)
3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表チーム優勝に至るまでの経緯を間近で見てきた加藤氏にご登壇いただく六本木ヒルズクラブランチョンセミナー。WBC日本優勝の舞台裏についてお話します。


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