記事・レポート

福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション 講師:前田正子

更新日 : 2009年02月18日 (水)

第1章 横浜市が取り組む財政再建

前田正子氏 財団法人横浜市国際交流協会 理事長

前田正子: 横浜市では高齢関係の予算が必要になるなかで、事業に優先順位をつけようと敬老祝い金を減らしました。「敬老祝金を切るぐらいなら、前田さん、無駄な公共事業を止めるべきだ」とみなさん必ずおっしゃいます。でも公共事業関連の都市整備費は減っています。

地方の高速道路はわかりませんが、60年代の首都圏近辺の建築ブームは、東京オリンピックのために首都高などを整備したものですので、それがいよいよ耐用年数を迎えつつあります。

80年代頃にアメリカが財政難のために都市基盤整備をせずにいたところ、橋が落ちたりしましたよね。日本でも、財政難の地方では震災で橋が落ちてしまったけれど補修費がないという例もあります。財政難のために危険な橋も補修できず、使用禁止にしている所もあるほどです。

そういう中でこれ以上、都市基盤整備費を減らすことができるかというと……。借金まみれで収入がない時代ですが、これからいよいよ都市インフラの再整備の時期が迫ってきていると思われた方が、むしろいいかもしれません。新しく造るよりも、むしろ補修・維持、建て替えの時期を迎え、公共事業費は、これ以上はあまり減らせないのではないかと思っています。

もちろん道路財源など使い方の問題はありますが、高度成長期の60~70年代につくった特に首都圏の橋梁、港湾設備、高速道路も劣化しますし、建物などは耐震性などの問題もあり、建て替えしなくてはならないでしょう。

横浜も60~70年代、とても人口が増えたため、そのとき一気に小学校をつくりました。その小学校の耐用年数が来ています。また、横浜市は18カ所区役所があるのですが、古い区役所には耐震性の問題もあります。18カ所あるということは2~3年かけて1カ所ずつ建て替えていくと、18カ所終わったときには36から54年目になるので、また次の区役所補修・建て替えという感じなので、公共事業費がどのように使われているか見る必要があると思います。

前田正子氏 財団法人横浜市国際交流協会 理事長
横浜の場合、中田宏市長になって市債の償還などを一所懸命したり、借金して事業をすることをなるべくセーブしたりしましたので、市債の償還が減っているのです。そういうことをできなかった自治体は、多額の借金の返済をしながら、自治体自身の税収に国からもらう補助金や交付税、さらに借金をしていろいろな事業をするのです。

なぜ借金をしてまで事業をするかというと、家のローンと同じです。「例えば今、50億かけてこの建物(六本木ヒルズ森タワー)をつくった場合、それを50年間ずっと使い続けるわけで、次の世代にもメリットがあるのだから、50年かけて先の人が払ってもいいよね」という考え方です。

バブルが崩壊して税収が減っていますが、先ほどお話しした敬老祝金のように、何か事業を予算を切ると非難が来ます。それを乗り越えられない自治体は結局借金し続けて、いつまでも見直さず、同じ事業をするわけです。今いろいろな自治体では、借金の返済がものすごい額になっています。にっちもさっちもいかない状態になっているということです。

横浜市などは市債の償還が減っているだけでもすごいことですが、新たに大きな借金をしないということは財政規模が拡大しないということですから、それに対する市民や議員さんの批判はあります。「そこまできつい生活をしてまで、なんで我慢しなければならないんだ」と。こういう状態が続いているわけです。


該当講座

福祉がいまできること
横浜市副市長の経験から
前田正子 (財団法人横浜市国際交流協会 理事長)

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