記事・レポート

福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション 講師:前田正子

更新日 : 2009年06月23日 (火)

第10章 ニートやフリーターは「一部の人」の問題ではない

前田正子 財団法人横浜市国際交流協会 理事長

前田正子: 制度をつくれば、制度には必ずユーザーができます。言い方は良くないかもしれませんが、大きいユーザーが団体として1つの声を持ち、その制度を良くしようといろいろ圧力を働きかけるのです。

しかし、児童虐待やニート、フリーター、独居高齢者などは、個々バラバラの存在で、「社会的に排除された人々」と言われています。そもそも自分たちがどういう問題にあるかという認識もできないし、社会的に訴える力もないので、最も深刻なのに忘れられているわけです。

福祉の世界でも、マスコミにルートがあって声の大きい人に財源や人手がいくという気がします。保育園に今や重点的に財源や人手がいくのは、保育園は必要な福祉施設で本当にいろいろ問題を抱えている人もいるということだけではありません。

一方では社会的にステータスが高い、例えばこの辺、六本木ヒルズに勤めているようなお母さんたちも子どもを預けていますので、「保育園を良くしろ」「保育料安くしろ」「もっとサービスを良くしろ」という声は届きやすいのです。新聞記者や雑誌記者も自分たちの子どもを預けていますから、自ら取材して書くことができる。みなさん、社会的発信力があるわけです。

ところが児童虐待などは、親が虐待しているのですから親が言うわけがない。しかも子どもは親をかばいますから、子どももそんなことを言うわけがない。それから、ニートやフリーターの人たちは社会的に力がありません。社会的な発信力がないですよね。

それぞれ自分とは関係ない一部の人たちの問題だと思われがちですけれども、そうではありません。例えばフルタイムですごく激しく働いた女の人が、赤ちゃんを産んで専業主婦になるとマタニティブルーで、うつになってしまったりすることもあります。また、結婚したけれど旦那がDVだったとか、働き過ぎでうつになってしまって失業してしまうこともあります。

皆さん、社会的な行政の仕組みは自分には関係ないと思っていらっしゃるかもしれませんが、自分や家族がいつそういう立場になるかもしれない。生きていくうえで重要です。


該当講座

福祉がいまできること
横浜市副市長の経験から
前田正子 (財団法人横浜市国際交流協会 理事長)

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