記事・レポート

ファッションから始まるコミュニケーション

丸山敬太が語る、心を満たす服のつくり方

更新日 : 2013年08月23日 (金)

第8章 コミュニケーションするファッションとは?

丸山敬太(KEITA MARUYAMA デザイナー)

 
会場からの質問: 丸山さんは、自分がイメージしたように着てもらえているかを確認することまで含めて、コミュニケーションとして捉えているのでしょうか?

丸山敬太: 「今シーズンは、こういう服をこういう感じで着てほしい」と思いながら服を創り、その思いを示す場としてファッションショーがあり、広告媒体や映像があります。だから最初は、僕のエゴを一方的に伝えていくことになると思いますが、手に取っていただいた後は、お客さまの自由です。

服というものは、お客さまが袖を通した時点で、ある種の化学変化が起きると考えています。服を着たときに、僕の思いを察してくれる人もいれば、その服から違う発想をする人もいる。皆が皆、同じように感じてしまったら、おもしろくないですよね。

だから、僕が最もうれしいのは、「そういう感じで着てくれるのか!」「そういう解釈があるのか!」といった化学変化を目にしたときです。たくさんの思いを込めた服が、着る人によってさまざまに変化していく。それが、僕の考える「服を通したコミュニケーション」です。

会場からの質問: 私は「ほめ方」にも2つあると思っています。1つは「その服、素敵だね」という言い方。もう1つは「その服、あなたに似合っているね」という言い方。それについて、丸山さんはどのようにお考えでしょうか?

丸山敬太: 僕は「その服、素敵だね」ではなく、「その服を選んで、そうやって着こなしている、あなたが素敵だね」と言いたい。もしも、僕が見て似合っていないと思ったら、「その服、すごく素敵だけれど、こうしたらもっと素敵になると思うよ」と言えたらいいと思います。

着ている服のことが大好きであれば、どのような服を着ても似合うはずだと思います。他の人から見ても、自分としても「似合っていない」と思う場合は、往々にして、その服に対してさほど思い入れがないことが多い。

自分の魅力、服の魅力を最大限引き出すには、自分を客観視しながら、色々とチャレンジしてみることが大切です。鏡で自分の姿を見ながら、きれいに着こなすためにはどうすればいいのかと、真剣に考えてみる。普段からそのようにしていると、おそらくどのような服であっても、その人なりのチャームに変えていくことができると思うのです。(了)

<気づきポイント>

●身にまとっていただく人と会話をするようにデザインを発想していく。
●発想の基本は、アイデアの種となる記憶をたくさん集めること。
●思いを込めた服がさまざまに変化していく。それが服を通したコミュニケーション。