記事・レポート

ファッションから始まるコミュニケーション

丸山敬太が語る、心を満たす服のつくり方

更新日 : 2013年08月16日 (金)

第4章 クリエーションに起きた変化

丸山敬太(KEITA MARUYAMA デザイナー)

 
突然、曲が降りてきた

丸山敬太: 「どんなときに、次のシーズンのコレクションを考え始めますか?」といった質問もよく受けます。僕の場合、1つのコレクションが終わったとき、あるいは終わる少し前、瞬間的に「次のシーズンの気分はこれかな?」と、言葉では表せない漠としたものが降りてくることが多いのです。その後で、より具体的なキーワードを探していく作業がスタートする。これまでは長く、そのようにしてきました。

ですが、今回発表した最新コレクション「2013-2014 Autumn/Winter」は、ふだんとは異なるプロセスから生まれました。

1つ前の「2013 Spring/Summer」コレクションが終わりかけていた昨年の冬に、突然、小沢健二さんの「僕らが旅に出る理由」という曲が、頭の中で流れ始めたのです。1990年代半ばにヒットした大好きな曲ですが、しばらく耳にしていませんでした。それなのに突然、頭の中で流れ始めた。

いままで、音楽にインスパイアされて服を創ったり、コレクションを考えたりしたことはありませんでした。しかし、「次のコレクションのテーマはこれだ!」と明快に曲が降りてきた。自分の気持ちを確かめようと、曲を聴き、歌詞を眺めてみたところ、この曲からコレクションを創りたいと、あらためて強く感じたのです。

また、「2013-2014 Autumn/Winter」では、初めてシーズンの「気分」を表現したファッション・ムービーも創りました。冒頭に僕は「服だけではなく、スタイルや世界観まで含めて表現するのが、ファッションデザイナーの仕事だ」と言いましたが、インターネットを通じて世界中の人たちに、コレクションに込めた僕の思いを伝えてみたいと考えたのです。

1つの曲が突然降りてきて、新しいコレクションが生まれた。このプロセスの中で、ファッション・ムービーの制作に挑戦もした。曲に後押しをされながら、新しいものが次々と生まれていきました。自分でも驚くほど、特殊なケースです。

20年以上にわたりファッションの仕事を続けてきましたが、ひょっとすると僕のクリエーションはいま、大きな変化のときを迎えているのかもしれません。