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オバマ大統領と今後のアメリカ

ライブラリートーク 「日本の政治シリーズ 第1回」

更新日 : 2009年06月29日 (月)

第2章 日本の政治家は「国民を説得する努力」をしていない

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授
ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

ジェラルド・カーティス: 民主主義国家の場合、偉大なリーダーになる条件の一番大事なことに、「国民に説明をして納得させること」があります。昨年、一昨年、その前の年も、私はこの場(※編注:アカデミーヒルズ)で「政治家にとって一番のキーワードは説得力だ。これがないと政治がうまくいかない」と言いました。

麻生首相に説得力があるでしょうか。国民に顔を向けて一所懸命説得しようという努力をしているでしょうか。一方、民主党の小沢さんはやっているでしょうか。今の日本の大きな問題は、説得する努力が足りないことだと思います。

オバマ大統領は、コミュニケーション能力が抜群です。今朝(2009年3月19日)のCNNで、タウンミーティングの様子を放送していましたが、オバマ大統領はノートもメモも何もないなか、自分のことばかり主張するのではなく、上手に受け答えし、観衆を説得していました。

彼は以前、大学のロー・スクールの教授を10年ぐらいやっていたと思います。アメリカではよく「プロフェッサーの態度をとる」という言い方をしますが、これは難しい話を皆さんに時間をかけて説明をするという意味で、政治家にとってすごく大事なことです。

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

最近、日本の政治家、特に若い政治家には、「簡単なことを難しくしゃべるのがプロフェッサーだ」と思い込んでいる人が多いようです。私は「難しい話を難しくしゃべる学者は意味がない。学者もわかりやすくしゃべる義務がある」と思っていますので、私なりに努力していますが、オバマ大統領もこのことを非常に意識しています。 オバマ大統領は、彼にとってヒーローであるエイブラハム・リンカーンとフランクリン・ルーズベルトという2人の大統領をモデルにしています。国民にわかりやすく説明し、説得するという点で、オバマ大統領はルーズベルトに非常に似ているところがあります。 アメリカでは1930年代の大不況下、ちょうど私の親世代はいろいろ苦労しました。その頃はまだテレビがなかったので、ルーズベルトはラジオで国民に話しかけました。Fireside Chats(炉辺談話)ですが、演説の原稿を自分で書いたことで有名です。 何かで読んだのですが、ルーズベルトは意識的に頭の中で自分が知っている大工さん、八百屋さん、家庭の主婦の顔を思い浮かべながら原稿を書いたそうです。これはものすごく大事なことです。オバマ大統領も、ルーズベルトと全く同じことをやっていると思います。