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ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~

カルチャー&ライフスタイル
更新日 : 2008年03月18日 (火)

第7章 「複線人生」は誰にでも可能。特殊な能力は要らない

竹中平蔵_福原義春

福原義春: ウィリアム・J・ボウモルという方がおられます。ボウモルさんとボウエンさんの2人の教授が、『舞台芸術芸術と経済のジレンマ』という文化経済学の古典をお書きになりました。それは、舞台芸術というのはもうかることがないという証明でして、いかに公共的な援助が必要かという論文です。

ボウモル先生はプリンストン大学の先生で、現在はニューヨーク大学のディレクターです。そして、大学在学中から美学の講義をお持ちになって、現代絵画をたくさん残されています。確か彫刻もおやりになったと聞いております。

それから大橋力(つとむ)さんという方がおられます。千葉工業大学の教授でしたが、現在は文明科学研究所所長であり、音楽家であり、作曲家でもあるマルチタレントな方です。バリ島に別荘、スタジオを持っていて、芸能山城組という名前でガムランの演奏をやったり、あるいは池袋の劇場で大パフォーマンスをやっておられます。

アニメ映画『AKIRA』の音楽で成功されましたし、国際花と緑の博覧会の催事では、「ランドスケープオペラ『ガイア』」という作品をおつくりになりました。現在、岩波書店の『科学』という雑誌の中で、「脳のなかの有限と無限」という素晴らしい原稿を連載で書いておられます。

大橋さんが芸能山城組といって、バリの民族音楽みたいなものをスタートしたとき、学者からは「なんでお前はあんな音楽をやるのか?」と言われ、音楽家の仲間からは「研究なんかもうやめてしまえ、音楽家になれ」と言われるのですが、頑固に2つの領域に身を置いて、いろいろなことをされているわけです。

最後にカレル・ヴァン・ウォルフレンのお話をしたいと思います。彼はオランダのエラスムス大学を出たジャーナリスト出身で政治学者、経済学者ですが、1994年に書いた『人間を幸福にしない日本というシステム』という本がベストセラーになりました。いつも辛口な本をお書きになる方で、昨年(2007年)は、『日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり』という新刊の本を出されました。

その彼が大判カメラを使って風景写真を撮り、昨年12月には、東京の2つのギャラリーで素晴らしい展覧会をやりました。その展覧会を見に行きましたら、サインを書いてくれました。「in memory of our conversation about our mutual love for photography, flowers and landscape」と。

彼は11歳のときから写真を撮り、私は12歳のときから写真を撮りはじめたということを、お会いして初めて知り、お互いにびっくりしたんです。今度出る『新美術』という雑誌で、彼と私が対談をすることになりました。

こういう人たちというのは、特別な人たちなんでしょうか? 普通は1つのことだけを一所懸命やって大変成功されるわけです。でも、今、ランダムに数人の方を挙げましたけれど、いろいろなことをやって成功されている方が身の回りに山というほどいらっしゃるのです。