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カフェブレイク・ブックトーク「源氏物語千年」

更新日 : 2008年05月28日 (水)

第1章 源氏物語の始まり

源氏物語

澁川雅俊: 源氏物語(以下「源氏」)が書かれてから今年で千年の年月が経ったといわれています。千年紀ということで、大小さまざまな展覧会や催しがいま行われています。

源氏は創作物語として世界で最古のものです。そんなに古い小説の現代ヴァージョンが出版されたり、映画や演劇や舞踊で演じられたり漫画に描かれたり、また紙幣のデザインに使われたりするなどということは、世界の文学史上稀有なことです。

『源氏物語「みやびの世界」序説』
物語は、銀のスプーンをくわえて生まれてきた千年前のセレブリティな男光源氏と、その息子と孫息子にわたる恋と愛欲、そしてそれに応ずる貴女たちの想いと振る舞いを主筋とした大河ドラマです。読んでみて日本人の恋愛の考えや行為がその時代もいまも本質的に「変わらないなぁ」と実感できます。

またその五十四篇の連作には、波瀾万丈の物語あり、心の葛藤の物語ありで、川の流れのように緩急自在でさまざまな筋が絡み合い、時代を超えて読者を 惹きつけます。それだけでなく、筋回しや舞台づくりとなっている王朝時代のセレブな生活・文化の有り様も大変興味深いものがあります。またそういうものの中に私たちのいまの生活習慣の起源を推し量らせるものもあり、現代とのつながりも感じます。

『明治から昭和における『源氏物語』の受容—近代日本の文化創造と古典』
源氏は雅な(都ぶりな)物語とよくいわれます。しかし、『源氏物語「みやびの世界」序説』(細木郁代著、08年書肆フローラ刊)が指摘しているように田舎のゆったりとした風景や人情を素材として含めています。『明治から昭和における『源氏物語』の受容—近代日本の文化創造と古典』 (川勝麻里著、08年和泉書院刊)は現代人の感性に生きる源氏を論じていますが、いずれにしてもこの物語はゆったりといまにつながっています。

『知っ得テクストツア-源氏物語ファイル』
この千年紀に際して、『知っ得テクストツア-源氏物語ファイル』(08年学燈社刊)などのハウツーものも出されていますが、そういうものに手を出す前に本文(現代語訳)をお読みになることを薦めます。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

源氏物語「みやびの世界」序章

細木郁代
(秋田)書肆フローラ

明治から昭和における『源氏物語』の受容—近代日本の文化創造と古典

川勝麻里
(大阪)和泉書院

知っ得テクストツアー 源氏物語ファイル

國文學編集部【編】
學燈社