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RoppongiBIZ*週刊東洋経済提携セミナー『勝間式「利益の方程式」』

更新日 : 2008年08月08日 (金)

第4章 積もり積もった過剰品質はコスト高と納期の遅れを招く

RoppongiBIZ*週刊東洋経済提携セミナー『勝間式「利益の方程式」』の様子

勝間和代: 次は、顧客原価を下げる基礎知識にまいります。実は、この辺の方が日本企業って得意なんですよ。顧客単価を上げることについては何もしていないことが結構多いです。加えて顧客獲得コストを下げるということについては、広告代理店とかマーケッターとかPR会社に丸投げしている会社もたくさんあります。それに対してこの顧客原価については、逆に過剰なぐらいやっている会社が多いなと思っているのですね。ただ、この過剰な管理の中でボコっと抜けているものを5つ挙げていきましょう。

 1つ目は何かというと、下げ過ぎはよくないという話です。これは各商品においてどんなに工夫をしても品質を保つために必要な最低の原価があります。その原価を下回ってしまうと、要は質が悪くなるんです。質が悪くなってくると、あっという間に顧客が逃げていって、顧客数が減ったり顧客単価が下がったり、あるいは顧客獲得コストが上がっていきます。

 2つ目は、特に顧客原価が上がる理由は過剰品質、過剰設備投資、過剰な人員投資ということで、要するに保険仕事なのですね。なぜこれが起こるかというと、これは先ほどから言っている過剰雇用の問題なのですが、日本ってクビにならないんですよね。クビにならないということは何かというと、クビにできない。クビにできないから、あまり成果報酬って差がつけられません。成果報酬に差がつけられないと、従業員はどのように働くかというと、リターン・マキシマイゼーションと言うのですが、利潤を最大化するのではなくて、リスクを最小化するように動くのです。1人1人がリスクを最小化するように動くと、何が起こるか。過剰品質です。ちょっと迷ったときには、全部過剰な方に倒すんですね。そうすると積もり積もった過剰品質が、コスト高と納期の遅れを招きます。

 3番目として、価格以外の軸を原価に持ち込んでアイディアを考えようということです。これは何かというと、例えば「時間」を持ち込 むと面白いと思います。よく客単価というのを店舗当たり、あるいは業種当たりで分析していると思うのですが、例えばそのお客が何分間店内にいて、それに対して実際にどれだけの物を買ったのかということで、分当たりをもっと効率化できないか。あるいはカロリーという話を私はずっとしていますが、同じカロリーを食べさせるときに、どういうものの組み合わせにした方が、実は顧客が安くおいしく感じるかということで食材を考えるとか、プライスではない軸を持ち込むと、意外と原価の引き下げのアイディアが出てきます。

 4番目として、仕入先を工夫すると原価が下がるということ。この工夫は何かというと、例えばブックオフを事例で出していますが、な ぜブックオフがあんなにはやっているかというと、要は売る側の問題。この売る側と売られる側の間に乖離があるのですね。まずは情報量の乖離が大きくありま す。しかも規模の乖離があります。ブックオフの立地に大事なのは何かというと、どれだけのお客が売ってくれるかということなんですね。なので、ブックオフ が立地を選ぶときには、高級住宅地や大学のそばとか、古本が出やすい地域から優先して出店します。

 最後は、結局地道なベンチマークが重要だということ。例えば運送費を下げようとしたら、半年分ぐらいはロジスティックスの経路を とったりして、どこの経路がお金がかかっているか分析するしかありませんし、同業他社のベンチマークをして、一体どこが出過ぎている、出過ぎていないと調 査するのが結局は一番早いんですね。データベースを作って地道にコントロールをしていく、この繰り返しになります。中小企業の業種別にどういう原価構成かというのは出ていますし、大企業であれば同業他社の上場企業の財務諸表が手に入りますので、その原価計算報告書などを見ながら分析をしていきますと、自社 の構造でどこが高めになっているかヒントが得られます。セグメント会計を見たり、販管費の内訳を見たりして、これでベンチマークを行っていくということをお勧めしています。

●S字カーブのステージを把握する

▲S字カーブの法則。商品やサービスは、進んで新商品を取り入れるイノベーターと呼ばれる層から順にアーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、そして最も保守的なラガードと呼ばれる層へと普及していく

 では、顧客数を上げる基礎知識に移ります。まず何はなくても「S字カーブ」の法則を理解すること。ほとんどの商品、サービスが普及 するときの曲線です。なぜ顧客数を上げるときにこのS字カーブが大事かというと、曲線の場所により引っ張るレバーが違うからなのですね。顧客獲得コストが重要だったり、顧客に対する品質が重要だったり、あるいは原価を下げることが重要だったり、各ステージにおいてやることが違うんです。自分たちの商品、サービスがどこのプロセスにあるかということを理解しておかないと、リソースのかけ方を間違えます。例えば、普及のカーブが寝てくるあたりで絶対やってはいけないのが、獲得コストをかけることと値下げ。大概の会社は成長時においてのうまみを忘れられないで、値下げや獲得コストをかけてしまい収益性が悪くなります。成長市場においての安売り商法は規模の利益で正当化できるので、実は間違っていないのですが、ただそれをいつまでもやると間違うのです。

 それから顧客セグメンテーションですね。例えば本というのは、これも典型的に年齢と性別で考えるんですよ。どうしてかというとレジ で年齢と性別だけ入れてくれているからなんですね。本の売り上げを見たときに、大体何十代のどのぐらいの層が買ったというのが一応データで分かるようになっています。もちろん著書によって特徴があるのですが、私の本の特徴は、圧倒的にやっぱり30代前半の男女が買っているんですね。それはなぜかというと、私もそのように設計をしているからです。大体自分より5~6歳若い人たちが、私が30代前半のときに、「これをしていたらすごく役立ったのにな」と思 うような内容を本に書いているので、そういう人たちが当然ひきつけられる。だからといって、ただそこだけに満足すると当然マーケットが狭まりますので、いかにそれを20代、40代、50代にも売っていくか。また、特にビジネス書の特徴としましては、やはり男性にしか売れないんです。これは単純に男性の方が ビジネス・パーソンが多いので、最初は男女比が大体8対2から7対3ぐらいで始まるんです。では、本当にブレークした本というのは何かというと、女性が 買っている本なんですね。6対4とか5対5ぐらいまで女性が買った本です。例えば家庭の主婦の方が買ってくださっていたり、あるいは普段ビジネス書を買わないような女性社員の方が買うと、ベストセラーになるんですね。ですので、そのセグメンテーションの状況が分かっていると、大体どのぐらい今進展してきて いるからどこに施策を打たなきゃいけない、どういうメッセージ性を打たなきゃいけない、あるいはこの本は多分どうやっても売れないから、もうこれ以上リ ソースをかけるのはやめて最小限で行こうみたいな結論が分かるようになるわけです。

該当講座

「週刊東洋経済」提携セミナー
勝間式「利益の方程式」
利益を生み出す黄金ルール
勝間和代 (経済評論家、公認会計士)

「売上増は七難隠す」という言葉がありますが、これは日本経済が右肩上がりで成長を遂げていたバブル崩壊以前の「売上をあげると利益は後からついてくる」という頃の経験則に基づいた実感です。しかしながら日本の経済状況は成長期から成熟期へ大きく変化し、人々の生活は豊かになるとともに市場は飽和しつつあります。こう....


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