記事・レポート
日本元気塾セミナーJAXA若田光一が語る「リーダーシップ」
グローバル時代に求められるリーダーとは?
更新日 : 2018年08月07日
(火)
後編 若田光一流「リーダーの心構え」
過酷な状況下で「素の自分」を知る
Team Skillsを高める訓練には、フロリダ沖の海中施設で行われるNASA極限環境ミッション運用(NEEMO)をはじめ、冬山や夏山、海上などの厳しい自然環境下で1週間~10日間ほど行う集団行動訓練がある。特に、集団行動訓練では毎日、リーダーとフォロワーが交代し、定められたミッションを遂行していく。
例えば、冬山訓練では標高3,000m級の山に入り、数十キロもの荷物を背負いながら、スキーやそりを使って定められた地点間を10日間かけて縦走する。-30℃にもなる極限状況。刻一刻と天候が変わり、予期せぬアクシデントやトラブルも頻繁に起こる。こうした肉体的・精神的ストレスが非常に高くなる状況では、今まで知らなかった「素の自分」が表れはじめるという。
宇宙にも似た過酷な環境に置かれた時、自らの心身はどう反応し、何をどう考え、判断・決断するのか。同じく、同僚達はどうなのか。宇宙飛行士はこの訓練を通して、「素の自分」を把握し、同時にリーダーやフォロワーとしての振る舞いを学んでいくことになる。さらに、困難を乗り越えるために、次第にチームとして協力し合う意識も高まっていくという。
若田氏はフォロワーになった際、「自分がリーダーだったらどうするか?」と常に当事者意識を持って臨み、冷静かつ客観的な判断力を磨いたという。また、それは「相手の立場」になって考えることにもつながり、思いやりを学ぶ意味でも貴重な経験になったと語っている。
守りに入らず、挑み続けろ
ISSのコマンダーを務めた際、若田氏が心がけていたことがある。1つは「守りに入らない」こと。現状維持、前例踏襲、思い込みなどはミスや事故のもとになる。何より、守りに入ってしまえば、自らの成長は止まり、後は衰退あるのみ。だからこそ、あらゆることに対して「これが本当に最善か? 正しいのか?」と現状を疑い、より良い方向に改善し続けてきたという。
また、ミスや失敗は100%防ぐことが難しいもの。それらを最小化するために、問題が起こりそうな兆しに敏感になり、常に最悪の事態まで想定して、できる限りのことをやり続けた。そして、ミッションを達成するために、リスクや失敗を怖れず、勇気を持って挑戦し続けたという。
もう1つは、「思いやり」を持つこと。良い行いに対してはすぐに称賛する。一方で、リーダーである以上、時にはクルーに対して厳しいことも指摘しなければならない。ネガティブ・フィードバックを行う際は、慎重に言葉を選びつつ、指摘する目的を具体的に説明し、改善したら個人・チームにとってどのような効果が得られるのかまで、きちんと伝えたそうだ。また、普段の生活でも、誰もが嫌がる仕事に率先して取り組むなど、「困った時は助け合う」という気持ちを大切にしていたと語る。
「自分が心地よく感じる領域から、あえて一歩踏み出し、相手に歩み寄る。そして、自らの強みだけでなく、弱みまでさらけ出し、すべてを理解してもらう。私自身、嘘のつけない性格だったため、コミュニケーションは常に直球勝負でしたが、そうすることで初めて、相手も心を開き、思いやりを持って接してくれるようになりました」。
ジーン・クランツの10カ条
これまで若田氏は、心を支えてくれるような“名言”を見つけてはノートに書き留めて、それらに照らして自らの振る舞いを見つめ直してきたという。今回は「リーダーシップ」というテーマに合わせて、ジーン・クランツ氏が仕事を行う上で大切にしていた10カ条を紹介した。
同氏は、月面に向かう途中、事故によって絶体絶命の危機に陥ったアポロ13号を、冷静な判断力と類い希なリーダーシップによって救ったNASAの主席管制官。彼が示した10カ条は、ビジネスにも活かせるヒントが多分に詰まっているという。
①Be Proactive(先を見越して動け)
②Take Responsibility(自らの仕事に責任を持て)
③Play Flat-out(クリアになるまでやり通せ)
④Ask Questions(不確実なものはその場で質問をして把握せよ)
⑤Test and Validate All Assumption(考えられることは全て試し、確認せよ)
⑥Write it Down(連絡も記録も全て書き出せ)
⑦Don't Hide Mistakes(ミスは隠すな、仲間の教訓になる)
⑧Know Your System Thoroughly(担当するシステム全体を徹底的に掌握しろ)
⑨Think Ahead(常に、先を意識せよ)
⑩Respect Your Teammates(仲間に敬意を払い、信頼せよ)
講演後、日本元気塾塾長の米倉誠一郎氏は「今後、世界という大きなチームの中で、日本人ならではのリーダーシップが求められる機会はたくさんあるだろう。リーダーシップのあり方は、メンバーによって様々に変わるもの。そこに『魔法の杖』のようなものはない。一方、決して変えてはならないのは、自分から心を開き、思いやりを持って相手に接すること。相手の立場になって考え、対話を重ねていくこと。何よりも、若田さんのように、過酷な状況にあっても常に謙虚で、笑顔を絶やさないことが大切だ」と総括した。
最後に若田氏は、「私自身、リーダーとして多くの失敗と挫折を繰り返してきましたが、そのたびに努力を惜しまず、一段一段、階段を上るように進んできました。そして、これからも守りに入らず、昨日よりも今日、今日よりも明日、1ミリでも成長したいと考えています。皆さんもぜひ、そうした思いで過ごしていただければ嬉しく思います」と語り、会場の参加者にエールを贈った。
同氏は、月面に向かう途中、事故によって絶体絶命の危機に陥ったアポロ13号を、冷静な判断力と類い希なリーダーシップによって救ったNASAの主席管制官。彼が示した10カ条は、ビジネスにも活かせるヒントが多分に詰まっているという。
①Be Proactive(先を見越して動け)
②Take Responsibility(自らの仕事に責任を持て)
③Play Flat-out(クリアになるまでやり通せ)
④Ask Questions(不確実なものはその場で質問をして把握せよ)
⑤Test and Validate All Assumption(考えられることは全て試し、確認せよ)
⑥Write it Down(連絡も記録も全て書き出せ)
⑦Don't Hide Mistakes(ミスは隠すな、仲間の教訓になる)
⑧Know Your System Thoroughly(担当するシステム全体を徹底的に掌握しろ)
⑨Think Ahead(常に、先を意識せよ)
⑩Respect Your Teammates(仲間に敬意を払い、信頼せよ)
講演後、日本元気塾塾長の米倉誠一郎氏は「今後、世界という大きなチームの中で、日本人ならではのリーダーシップが求められる機会はたくさんあるだろう。リーダーシップのあり方は、メンバーによって様々に変わるもの。そこに『魔法の杖』のようなものはない。一方、決して変えてはならないのは、自分から心を開き、思いやりを持って相手に接すること。相手の立場になって考え、対話を重ねていくこと。何よりも、若田さんのように、過酷な状況にあっても常に謙虚で、笑顔を絶やさないことが大切だ」と総括した。
最後に若田氏は、「私自身、リーダーとして多くの失敗と挫折を繰り返してきましたが、そのたびに努力を惜しまず、一段一段、階段を上るように進んできました。そして、これからも守りに入らず、昨日よりも今日、今日よりも明日、1ミリでも成長したいと考えています。皆さんもぜひ、そうした思いで過ごしていただければ嬉しく思います」と語り、会場の参加者にエールを贈った。
該当講座
JAXA若田光一が語る「リーダーシップ」
若田光一(JAXA有人宇宙技術部門ISSプログラムマネージャ/宇宙飛行士)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
日本人初の国際宇宙ステーション船長(コマンダー)をつとめた若田光一氏。様々な国のスタッフと協働するためのリーダーシップ、コミュニケーション、チームマネジメントとは?極限の状態でも決断、実行する力とは?宇宙開発の最前線で活動してきた若田氏のご経験をもとに語っていただきます。
日本元気塾セミナーJAXA若田光一が語る「リーダーシップ」 インデックス
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前編 宇宙飛行士に求められるTeam Skills
2018年08月07日 (火)
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後編 若田光一流「リーダーの心構え」
2018年08月07日 (火)
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