日本元気塾セミナー
新しい時代をどう乗り越えるか ~いま歴史から学ぶということ~
“歴史”は過去からの贈り物
温故知新で探る新たな時代の生き抜き方
【前編】創造的対応力を育むもの
自動運転車、スマート家電、AIペットや介護ロボット——。人工知能や先進テクノロジーにより、私たちの生活は目まぐるしい変化を遂げています。モノや情報の行き来には国境がなくなりつつあり、今や自分の周囲だけ、日本だけを見ていれば生きていける時代は終わった、と言っても過言ではないかもしれません。
とはいえ、視野を広く持つ、世界を見つめると言ってもどうすべきなのか。数あるアプローチの中の一つが、歴史を学ぶことです。特に、日本史の中でも幕末から明治期にかけては、明日、社会がどうなるかもわからぬ混沌とした時代。その中を生き抜いた者たちの発想と行動には、現代にも相通ずる共通項が見出せるのではないでしょうか。
そこで、今回は日本の歴史を切り口に、ライフネット生命保険㈱創業者・出口治明氏と日本元気塾塾長・米倉誠一郎氏による講演・対談を開催。幕末から明治期にかけて活躍した実力者の逸話を例に、現代社会を生きるヒントを探っていきましょう。
開催日:2017年9月20日(水)19:00~20:30
ゲストスピーカー:出口治明 (ライフネット生命保険株式会社 創業者)
モデレーター:米倉誠一郎(日本元気塾塾長/法政大学大学院教授/一橋大学イノベーション研究センター特任教授)
創造的対応力を育むものとは?

昨今の日本人には、創造性が欠落している——。残念ながら、国内外を問わずそうした声が聞かれることが増えています。しかし、果たして本当にそうなのか? 日本には誇るべき先人がいるではないか…という切り口から、米倉氏のお話は始まりました。
江戸時代の約200年間、日本は自由な出入国や貿易を制限する鎖国を続けていました。当時、唯一海外との交易を許されていたのが長崎。その地で町年寄を務めていた高島秋帆は、職権を行使して各種火器やオランダ兵学書などを入手していました。
1853年、ペリーの来航は当時の日本を大きく揺るがしました。多くの武士たちが尊皇攘夷だといきり立つなか、高島は和平開国を主張。「これこそが日本の生き残る道だ」と、開国・通商を推奨したのです。

常日頃から国内外の情報を広く取り込み、勉学に励んでいたからこそ生まれた高島秋帆の創造的対応力。交易や勉学による多角的な情報の収集こそ、その起爆剤となったのです。外的環境に流されず広く情報を得ることの重要性は、現代社会にも通じるものと言えるでしょう。
大財閥の人材投資策が示す
リーダーやマネジメント層へのヒント

性格も体質も異なる2つの財閥ですが、実は“ある点”において共通項が見られます。それが、人材投資。三井財閥では、幕末の難局を乗り切るために三野村利左衛門、益田孝、團琢磨、中上川彦次郎といった新興商人や渡航経験のある若手実力者に大きな経営権限を持たせました。これが後に「人の三井」と称される財閥の特性、発展の礎を築くきっかけとなります。
一方、三菱財閥の初代統帥・岩崎弥太郎も積極的に家族を渡航させ、優秀な学卒者を大量雇用するなど人材の育成や登用に努めました。世界の広い知識をいち早く事業に取り込み、発展へのアクセルとしたのです。
日本の歴史に名を馳せた2つの財閥の取り組みは、いわゆる“人材投資”に他なりません。ここから得られる学びとはいったい何でしょうか。「2財閥の取り組みは“若い人材のアイディアやチャレンジを支援すること”“一人ひとりの実力を見抜き、活躍できる体制を作ること”の重要性を示している」と、米倉氏は述べられました。それはまさしく、現代の企業経営やビジネスにおけるマネジメントにもつながる発想。財閥発展の歴史という切り口から、時代が変化しても組織や企業を率いるリーダーが変わらず持つべき発想の大切さが伺えます。

該当講座

出口治明(ライフネット生命保険㈱ 創業者)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
自ら歴史オタクを広言し『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)等、ビジネスパーソンに向けても歴史から学ぶ大切さを訴える出口治明氏をお迎えし、4月に『イノベーターたちの日本史:近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)を上梓した歴史家・米倉誠一郎氏と、いま改めて“情報を感受し”“行動を起こす”ことについて、歴史から学びたいと思います。
日本元気塾セミナー
新しい時代をどう乗り越えるか ~いま歴史から学ぶということ~
インデックス
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【前編】創造的対応力を育むもの
2017年12月19日 (火)
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【後編】時代を超える普遍的な発想から見てくるもの
2017年12月19日 (火)
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