記事・レポート
日本元気塾セミナー
イノベーションを起こしつづける“ピーチ流”に迫る
LCCピーチの躍進は、「空飛ぶ電車」という新発想から!
更新日 : 2016年11月30日
(水)
【後編】
「空飛ぶ電車」というコンセプトから
新たな発想は生まれていく
米倉誠一郎: ピーチはうまく女性客を取り込んでいます。しかも、日帰りの人もいるとか…。
井上慎一: 私も最初驚き、調べてみると本当にいらっしゃいました。関空—ソウル往復7800円を利用いただいた主婦の方でした。理由を聞いてみると、お子さんがいるとなかなか海外に行けない。でも、初便で行って終便で帰って来られれば行ける、と。それから、ピーチでは日帰りツアーを編み出していきました。
また、台湾—沖縄で飛んでいるので、台湾の女性たちが沖縄の美容院にやってきます。日本の美容院の技術は優れているので、台湾のファッション誌を持って沖縄でやってもらい、台湾に帰って自慢すると、回りの人がまたピーチに乗って見に来るんです。今、沖縄—台湾片道4000円ぐらいですね。
米倉誠一郎: イノベーションには、「コンセプト」が凄く大事なんです。例えば、俺たち何売っているの?という時「水でしょ?」というのと「一番人間が必要としているリラックスタイムの水分補助」と考えるのかでは、大きく違ってくる。「水でしょ」となった時にアイディアがしぼんでくる。
井上慎一: 自分たちの提供価値を、「空飛ぶ電車」と考えれば発想がどんどん広がっていくのです。
最初、コーヒーの1つも出さないのでお客様から文句をいわれました。でも新幹線と一緒ですというと、納得してもらえたんです(笑)。
エキストラ荷物にも費用がかかりますが、賛同していただく声もあるんです。荷物預けないビジネスマンや日帰りの人からすると、公平感があると。
米倉誠一郎: 万人にいいものは提供できない時代です。ピーチも1つのチョイスなので、嫌ならサービスが整っているところに乗ればいい。新しいチョイスを生み出すことが大切ですね。
井上慎一: ピーチ利用者には意外に富裕層が多いんです。いつもピーチで台湾からくる3人の女性の常宿が、大阪のリッツカールトンのスイートルームだったんです。リッツカールトンの総支配人からお礼を言われたことでわかったのですが。鈴鹿GPの一番いい席で楽しんでいる方や、築地の料亭で7万円使うような方もいる。このような方たちは、移動手段にお金をかけないで、現地で使うようです。
米倉誠一郎: 緻密な計算をし、新たな価値を提供する会社がでてきたことをうれしく思います。井上さんを筆頭に、社員の方が仕事を楽しんでいるのも素晴らしい。皆さん、ぜひピーチを応援してください。
会場からのQ&A
Q:事前予約だと、各社安くなって価格差がなくなっていくのでは?
井上慎一: 安い運賃が出ているが、その多くは何日前までに購入という条件がついています。ピーチは独自の料金体制を作っており、エブリディロープライスで、直前でも安い。これに富裕層の方が反応しています。医師、弁護士、編集者などあらかじめ休みの計画がとれない方が、急に休みが取れた時、安い運賃で行けるとピーチに乗って石垣島で楽しんだりしています。安売りは誰でもできるが、その会社がきちんと長期的に利益が出せるかどうかが問題になってくるでしょう。
参考までに、ライアン航空が成長してきたタイミングは、不況の時でした。リーマンショックの時に、一億2千300万ユーロの利益を出している。安い運賃でも利益が出る。これが我々の目指すところです。
Q:現在日本にLCC4社あって、もうすぐ5社になる。そのなかで、現在、国際線の72%はピーチ。なぜ海外の人から選ばれるのでしょうか?
井上慎一: 理由は2つあります。
もともと、私たちは、「アジアのリージョナルエアー」になろうと思っていました。アジアの人に好かれる名前を付けようと思ったのです。
モモは、アジアの人のラッキーシンボルなんです。バナナでもイチゴでもダメなんです。孫悟空の不老長寿のモモや、桃源郷、韓国の人はモモの夢見ると子宝に恵まれるという。じゃあ、モモにしようかと、ピーチにしたのです。
もう一つは、色。このピンク色は、アジアの人が好きな色、日本の女性も好むようです。
ピーチの中国名が「楽桃航空」と書くのです。アジアでは国籍を感じない印象のようです。
Q:ジェットスター、エアアジア、バニラエアは成田で、ピーチだけが関西から始められています。当初関空から始めるのはどうかという声もあったが、結局ピーチが独り勝ちしている。それはどうしてでしょうか?
井上慎一: これは、実は研究していまして、アジアを目指すなら関空だと思っていました。
関空の方が1時間アジアに近いため、お客様にとっては利便性があると思ったのが1つ。
当時関西はダメだダメだといわれましたが、GDPを調べて関西の都道府県を6つ足したら20兆ぐらいありました。当時韓国が23兆だったので、韓国とあまり変わらないと思った。人口も1千万ぐらいあったので、これならいけると思ったんです。
賃料、着陸料がすごく高かった問題もあったのですが、国がLCC専用空港を作る話が出てクリアできました。
Q:社員のYORIAIを活性化させる工夫は?
井上慎一: あまり意識していない。
社長と呼ぶことを禁止するなど、階級意識のない会社。気さくに話しています。酒飲み話が本当になる会社ですね。奨励しているのは、「失敗とは何か?」ということ。PDCAサイクルが回っている限り、失敗とはいわせない会社なんです。サイクル回さない人にはバツをつける。前へ進むにはラグビーと一緒で、タックルされたら、また立ち上がればいいんです。それを奨励していると、学びになります。
Q:コスト意識を高めて利益を出すにあたり、こだわっていることはなんでしょうか?
井上慎一: 奨励しているのは、知恵を出すこと。そして、「それって本当に必要なの?」を問いかけることです。
例えば、私に渡す資料を、きれいにパワポで作ってきたら、その労力を他に回してほしいと思います。私あてだったら、ワードベタ打ち可。手書きも可なんです。無駄な残業をするな、やらなくていい仕事はやめよう、と伝えています。
「ロゴ・航空機・チェックイン機写真提供:Peach Aviation 株式会社」
「講演写真:御厨 慎一郎」
該当講座
イノベーションを起こしつづける“ピーチ流”に迫る
〜躍進するLCC!トップから現場まで、ビジョンが浸透する秘訣を聞く〜
Peach Aviation代表取締役CEOの井上氏と日本元気塾塾長の米倉氏の対談です。
トップから現場の隅々までビジョンを浸透させる井上CEOのマネジメント・スタイルや、現場やお客様からの声を吸い上げ、サービスへと還元する“ピーチ流”の仕組みづくりについて伺います。
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