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DNAから読み解く生命の不思議

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更新日 : 2015年07月01日 (水)

第3章 二重らせんに隠された生命の暗号


 
DNA、アミノ酸、タンパク質

佐々木浩: 生き物が生きていく上で特に重要な部品が、タンパク質です。タンパク質には様々な種類があり、それぞれが生命を支えるための大切な役割を持っています。例えば、皆さんのお母さんが好きなコラーゲンは、皮膚や軟骨を作る上で欠かせないタンパク質。血液中にあるヘモグロビンは、酸素を全身に運んでくれるタンパク質です。

タンパク質は、アミノ酸と呼ばれる物質が数十~数百個以上もつながったひも状のもので、それが色々な形に折りたたまれています。つながり合うアミノ酸の数、並ぶ順番、ひもを折りたたんだ時にできる形により、タンパク質の種類と役割が決まります。

人間の身体を作るタンパク質は10万種類以上あると言われていますが、その元になるアミノ酸は、わずか20種類しかありません。20種類のアミノ酸が様々に結びつくことで、たくさんのタンパク質が作られているわけです。ならば、何がアミノ酸の数や並び順などを決めているのかといえば、それはDNAに書かれた情報です。

二重らせん構造をなす2本のひも。その片側1本に注目すると、ATGCという4つの塩基が様々な順番で並んでいます。実はこれは「暗号」であり、3つを1セットとして読まなければ、解読できません。例えば、ATGはメチオニンというアミノ酸を表す暗号、TATはチロシン、GTCはバリン、TTGはロイシン、GGTはグリシン。DNAに書かれた暗号により、アミノ酸の種類や並び順が決まり、タンパク質の種類も決まってくるのです。

とはいえ、DNAの情報から直接、タンパク質が作られるわけではありません。DNAの情報はいったんRNAと呼ばれる物質にコピーされ、それがタンパク質を作る際に使われています。皆さんがよく耳にする「遺伝子」とは、DNAに書かれた膨大な情報の1つひとつを指しますが、RNAもDNAに書かれたすべての情報をコピーするわけではなく、その時に必要な情報だけをコピーします。

分子生物学のセントラルドグマとは?

佐々木浩: ここでようやく、「分子生物学のセントラルドグマ」の登場です。DNAは、生き物の特徴が記録された生命の設計図であり、そこに書かれている情報はRNAにいったんコピーされ、それをもとにアミノ酸の並び方などが決まり、どのようなタンパク質が作られるのかも決まります。また、DNAの情報は、細胞分裂を通じて次世代へと受け継がれていく。この一連の仕組みこそが、「分子生物学のセントラルドグマ」です。

そして、現在はまったく別々の形になっていますが、この仕組みは地球上のすべての生き物に共通しています。したがって、地球上の生き物は、約40億年前に生まれた1つの生き物からスタートしたと考えることができます。つまり、家族であり、きょうだいである。そうしたことが、DNAを調べることで分かってくるのです。



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