記事・レポート

アジア最貧国の闇と光を考える

日本元気塾セミナー ~映画「アリ地獄のような街」上映会~

更新日 : 2010年08月20日 (金)

第5章 現地人の目を覚ますために、当初は日本からの寄付を断った

渡辺大樹氏(左)米倉誠一郎氏(右)

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米倉誠一郎: 日本での上映状況はどうですか? ここで、映画のPR担当、ユナイテッドピープルの関根健次さんをご紹介します。なぜ映画に関わっているのかということを含めて話してください。

関根健次: 僕は学生時代、バックパッカーでした。パレスチナのガザ地区という紛争地に入ったとき、難民として生活してきた子どもたちと出会いました。そこの子どもに夢を聞いたら、「将来、爆弾の開発者になって敵を殺したい」と答えたのが衝撃的で、そのときから紛争問題や、助けを求めている人たちのために何かできないかという気持ちでやってきました。

そして今、ユナイテッドピープルという、「人と人をつないで世界の問題を解決する」ということをミッションにした会社をやっています。事業の1つに『イーココロ!』というのがあります。これはインターネット上でクリックしたり買い物したりするだけで無料で募金ができ、NGOやNPOに寄付できるというものです。

その関係で、年に数回は途上国や中東諸国を視察しています。アジアの最貧国を訪ねようと思ってダッカに行こう思ったとき、大学時代の後輩がJICAの関係でバングラデシュに行っていたのを思い出して、「そっちに行くから案内して」とお願いしたんです。その後輩の名前が、渡辺さんと同じ「ワタナベヒロキ」というんですよ。

彼を頼ってダッカに行ったら、「面白い人がいるんだ。俺と同じ名前なんだけど、突然日本からやってきてNGOをつくって、シェルターホームをつくって、子どもたちと一緒に生活しながら支援してるんだ」と言うんです。それでインタビューを申し込んだんです。「『イーココロ!』という寄付サイトをやっているのですが、お話しを聞かせてもらえませんか」と。

それが出会いだったんですが、会うなり渡辺さんはこう言いました。「関根さん、インタビューはOKですけど、日本からの寄付金は要りません」って。

米倉誠一郎: 日本からの寄付は要らない、というのはなぜですか?

渡辺大樹: 関根さんがいらしたときは活動の理念をつくっていく大事な時期でした。バングラデシュの人々にこの問題に目を向けてもらい、自分たちの問題としてお金や労力を集めていかないと、結局何も変わらないと思ったんです。外からお金と知恵を持ってきたら依存してしまう、そうなったら強い組織は育たないし、現地に根づかない。

だから一番苦しい時期ではあったのですが、敢えて海外からの寄付は受けず、バングラデシュの中で集めていきました。今では全世界から寄付を受け付けていますが、それでもバングラデシュの人たちからのサポートをメインにしています。

関根健次: 当時26歳の若者が真剣に、何のために、誰からお金をもらうかまで考えて、苦しい選択を敢えて選んでやっていた。すごく感動して、それ以来のつきあいです。

それで去年(2009年)の3月、僕のほうから、教育を受けたストリートチルドレンの就職先としてレストランをやったらいいんじゃないかと提案したんです。そうしたら、「レストランもいいんですが、映画ができたんです」と言うんです。「日本でも上映するつもりあるの?」と聞くと、「やりたいです」と言う。そこで始まったんです。

渡辺大樹: そのとき関根さんは映画も観ずに、私の話だけ聞いて「よし、配給は俺がやる」と言ってくれたんです。すぐに話をまとめて本当に帰りそうになったので、「関根さん、映画観なくていいんですか?」て言ったら、「ああ、じゃあ観ようか」って。想いだけでつながっていました。

関根健次: 日本での配給は去年(2009年)の11月から開始して、これまでに40数回上映しました(本講座開催時2010年4月現在)。大学のサークルや社会人の集まりが上映会を主催してくれたり、映画館では渋谷のアップリンクでやったり。これは上映延長になって、5月の中旬ぐらいまでやりました。

どんなロケーションでも、上映会主催料金は4万円からできるようになっていて、チケットはちゃんと売っていただいて構いません。上映会主催料金の半額、つまり4万円なら2万円がエクマットラアカデミーの建設資金になります。

米倉誠一郎: 皆さん、ぜひ会社の同僚や友達にすすめたり、会社で上映会を企画したり、学生さんなら学園祭でやったりしてほしい。あるいは義理チョコの代わりに寄付するとかね。義理チョコなんてもらうほうも、あげるほうも嬉しくないでしょ。「米倉先生のかわりに、あそこに寄付しておきましたよ。チョコレートだと思ってくださいね」って言われたほうがずっと嬉しい。

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該当講座

アジア最貧国の闇と光を考える~映画「アリ地獄のような街」上映会~
渡辺大樹 (NGOエクマットラ顧問)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

渡辺大樹(NGOエクマットラ顧問)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター長・教授)
バングラデシュのストリートチルドレンの現実を描いた映画「アリ地獄のような街」の自主上映セミナー。映画上映後には映画を制作したバングラデシュでストリートチルドレンの支援活動を行うNGOエクマットラ共同創設者(現在顧問)渡辺大樹氏をゲストに迎え、なぜこの映画を作ったのか、この映画で伝えたいメッセージ、バングラデシュの子どもたちに対する想いを、直接お伺いします。


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