記事・レポート
アジア最貧国の闇と光を考える
日本元気塾セミナー ~映画「アリ地獄のような街」上映会~
更新日 : 2010年07月14日
(水)
第1章 スラムに生きる少年との衝撃的な出会い
ヨットレースで優雅に世界を巡っていたとき、スラムの少年と目が合い衝撃を受けたという渡辺大樹氏。それを機にバングラデシュでストリートチルドレンを支援するNGOを友人と創設し、社会的弱者のエンパワーメントと、抑圧する側になっている一般市民への啓蒙活動を開始。未来を変える氏の熱き想いと行動力に迫ります。
ゲストスピーカー:
渡辺大樹(わたなべ・ひろき)/NGOエクマットラ顧問
関根健次(せきね・けんじ)/ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役
モデレーター:
米倉誠一郎 (よねくら・せいいちろう)/日本元気塾塾長、一橋大学イノベーション研究センター長・教授
米倉誠一郎: 去年(2009年)の3月にグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスさんとお話しして、ものすごく感動しました。それで「何かしなきゃいけない」と思い、(2010年)1月にバングラデシュに行きました。そのとき泊まったホテルでユナイテッドピープルの関根さんとばったりお会いして、渡辺さんを紹介されたんです。それがきっかけとなり、きょうは日本元気塾で『アリ地獄のような街』の上映会を開くことができました。
ここで映画の評論をするつもりはなく、渡辺さんには、どうしてこの映画の製作に関わるようになったのかを伺いたいと思います。渡辺さんはバングラデシュでストリートチルドレンの保護活動を行うNGOエクマットラの顧問をされています。それがなぜ映画制作に?
渡辺大樹: 今から8年前、私が大学4年生のときのことです。大学ではヨット部で、いかにして風をつかんでヨットを早く走らせ、チームを勝たせるかということしか考えていないような生活を送っていました。国際協力や途上国に目を向けていたわけではありませんでした。
最終学年のとき、タイのプーケットで行われた国際ヨットレースに行きました。そのレースは世界中から大金持ちが集まる大会だったので、五つ星ホテルに泊まり、毎日超豪華なバスで移動するという王宮貴族のような生活を送っていました。
ある日、レースが終わっていつものようにバスで移動していたら、信号か何かでふと止まったのです。横を見ると、大きなスラムが広がっていました。生まれて初めてこの目で見て、「こんな劣悪な生活環境に人が住んでいるのか?」と驚きました。そのとき、スラムの入り口にいた一人の男の子と目があったんです。
そのとき、稲妻のような衝撃が体を突き抜けていきました。今でも忘れられません。「なぜ俺は彼らを見下ろしていて、なぜ彼はスラムの入り口でみすぼらしい格好をして、俺をうらやましそうに見上げなきゃいけないんだ? 俺は努力してこの状況にたどりついたというのか? 彼は怠けて人生を放棄して落ちていったというのか? いや違う。たまたま日本に生まれた俺と、たまたまタイのスラムに生まれた彼、それだけで大きな差がついてしまったんだ」——そんな憤りと無力感を感じたことから、「この思いを行動に移していこう」と、バングラデシュに行き着いたのです。
米倉誠一郎: 「これはいかん」と?
渡辺大樹: 「いかん」というか、何も考えられないほどのすごい衝撃で、いろいろな感情が湧き起こって、バスの中、一人でワナワナと震えていたんです。でも正直、そのときは「この衝撃も日本に帰ったら消えていくんだろうな」と思いました。日本じゃない環境にいるから感受性が敏感になっているけれど、日本に帰ったら、また普通の大学生活が始まって、風とヨットのことしか考えない生活に戻るんだろうな、ちょっと寂しいな、と思っていたんです。
ところが、日本に帰ったらどんどん衝撃が強くなって、逆にヨットのことをもう考えられないぐらいになって。自分の中に湧き起こってくる衝撃に目を向け、これからどうするのかを1カ月間本当に悩みました。
米倉誠一郎: 悩んだ結果、バングラデシュに行ったんですね?
渡辺大樹: はい。
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http://www.academyhills.com/note/opinion/10071401GenkiAri.html
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第1章 スラムに生きる少年との衝撃的な出会い
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第7章 自分で自分の未来を決められない子どもたち
2010年09月06日 (月)
該当講座
渡辺大樹(NGOエクマットラ顧問)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター長・教授)
バングラデシュのストリートチルドレンの現実を描いた映画「アリ地獄のような街」の自主上映セミナー。映画上映後には映画を制作したバングラデシュでストリートチルドレンの支援活動を行うNGOエクマットラ共同創設者(現在顧問)渡辺大樹氏をゲストに迎え、なぜこの映画を作ったのか、この映画で伝えたいメッセージ、バングラデシュの子どもたちに対する想いを、直接お伺いします。
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