記事・レポート
世界経済を支える東アジア経済圏の成長
上海・東京グローバル・コンファレンス
注目のオピニオン
更新日 : 2010年05月12日
(水)
第1章 日本と中国のパートナーシップのカギは“都市”
世界経済を牽引する中国と存在感のない日本—— しかし中国にも弱みはあり、日本にも強みはあります。世界のパラダイムシフトに対応するには、上海と東京が都市戦略の視点から協力しなければなりません。しかしどうやって? 都市工学、医療政策、日中経済社会問題、これら3分野の専門家と竹中平蔵氏が具体策を提言します。
モデレーター:竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授)
パネリスト :大西隆(東京大学教授)
:黒川清(政策研究大学院大学教授)
:周牧之(東京経済大学教授)

竹中平蔵: きょうお集まりのパネリストの皆さんは、それぞれバックグラウンドの分野が違う先生方です。したがって、あえて厳格に問題設定せずに、最初にお一方5分ずつ、東アジアの交流の問題、ないしは上海・東京の都市問題にどのような視点をお持ちかということを話していただこうと思います。
大西隆: 私は都市工学という分野の人間です。「アジアの時代が来る」「都市の時代だ」とよく言われますが、私は地域を見るときに「いろいろな活動の総和は、ある程度人口で代弁される」と思っているので、最初に人口に着目します。
ご承知のように、アジアの人口は今世界で一番シェアが高くなっています。一方、都市人口を見てみると、第二次大戦直後は欧米で5割以上。つまり世界の都市に住んでいる人のうちの半分以上は北アメリカとヨーロッパの都市にいたのです。
100年後の2050年、約54%はアジアの都市に住むと予想されています。アフリカの都市には約19%が住み、アジア、アフリカに世界の都市人口の70%以上が住むことになる、欧米の都市人口は15%ぐらいにシェアが下がるというのです。
一概に人口だけではいえませんが、そこが文明や経済活動の中心になる可能性が大きいということを考えると、まさに「アジアの時代」という気がします。アジアは東アジアだけではなく、インドを中心とする南アジアも東南アジアもそうです。アジアの南から東までの一帯が次代に重要な役割を果たすようになってくると考えています。
その中で、中国と日本です。中国は「第11次5カ年計画」で初めてメガロポリスという言葉を使い、「大都市が中国にとって大事だ」と述べています。つまり、都市の力を中国全体が評価し始めたのです。
中国は「一人っ子政策」で人口はあまり増えないと言われていますが、都市人口は非常に増えていくとされています。ざっと30年ぐらいの間に都市人口が4億人ぐらい増えるのではないかと言われているのです。
世界で一番大きな都市は、実は東京です。この大都市をつくるため、我々は公共交通の仕組み、土地の使い方など効率的に都市を組み立てていくノウハウを蓄積してきました。私は、これが中国の参考になると考え、大学の中で交流をしているのです。
一方、人口が減ってきている日本にとって、若い中国のパワーを受け止めて、それを日本社会に新しい流れとして還元していける面もあります。日本と中国はパートナーとして、お互いに都市を舞台にして吸収していく点があると、非常に関心を持っています。
記事をシェアする

ブログに書く
この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10051201ST_GlobalConference.html
世界経済を支える東アジア経済圏の成長 インデックス
-
第1章 日本と中国のパートナーシップのカギは“都市”
2010年05月12日 (水)
-
第2章 技術大国日本の問題は、海外に出て行かないこと
2010年05月21日 (金)
-
第3章 中国はエネルギーを制度改革、都市改革へむけよ
2010年05月31日 (月)
-
第4章 日本社会がアジアと伍していくには、言葉の問題解決が不可欠
2010年06月08日 (火)
-
第5章 日本人には「世界市場を制覇する!」という意志がない
2010年06月17日 (木)
-
第6章 東京と上海の間でスムーズに行き来できる環境を整えよ
2010年06月24日 (木)
-
第7章 世界における日本の“存在感のなさ”を解消するには?
2010年07月02日 (金)
-
第8章 提言~世界のパラダイムシフトに対応するために~
2010年07月13日 (火)
-
第9章 グローバル・アジェンダの解決には、私たちの関与が必要
2010年07月22日 (木)
注目の記事
-
06月29日 (水) 更新
CATALYST BOOKS vol.4
イベント「カタリスト・トーク」の登壇者が紹介する「理解を深める1冊」。今回はゲームAI開発者の三宅陽一郎さんが『生物から見た世界』、『意味の....
-
05月25日 (水) 更新
ライブラリーの本が素敵な本当の理由は?
六本木ヒルズ49階に集まり、スピーカーを囲んでメンバー同士で会話を楽しむ“Library Lounge Talk”。第2回のスピーカーは、ラ....
<Library Lounge Talk> 第2回 小林麻実さん(ライブラリーアドヴァイザー)
-
04月19日 (火) 更新
「アカデミーヒルズ バーチャル背景」公開中!
「書棚」「景色」「イラスト」など、アカデミーヒルズの画像を公開中!今月のバーチャル背景は、六本木ヒルズライブラリー「ワークスペース」の画像を....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 08月02日 (火) 19:00~20:30
「能」~身体性と想像力の伝統芸能~
現代のイノベーションリーダー達はなぜ「能」にはまるのでしょうか? 複雑化する社会で、個を尊重した人生を手に入れるそのキーワードを「能」の世界....
イノベーションリーダーはなぜ「能」にはまるのか?
-
開催日 : 07月13日 (水) 19:30~21:30
森美術館鑑賞+アフタートーク
現代アートから考える、現代の「ウェルビーイング」とは?キュレーターの解説付きで美術鑑賞し、アフタートークを実施します。
「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」
-
開催日 : 07月27日 (水) 19:00~20:30
<未来を拡張するゲームチェンジャー U-35>Vol.1
『ゲームの王国』で日本SF大賞・山本周五郎賞、『嘘と正典』で直木賞候補となったSF作家・小川哲さんと、自身も作家として活躍する女優・中江有里....
SFで世界を解き放つ〜現代に接続する未来のプラグ〜