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日本型ビジネス文化の特徴とグローバルコミュニケーションスキル

世界で活躍するために必須のノウハウを解説:ロッシェル・カップ

BIZセミナーグローバル文化ビジネススキル
更新日 : 2014年08月01日 (金)

第9章 異文化コミュニケーションQ&A


 
会場からの質問(1): ネガティブ・フィードバックの相手が目上の人の場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?

ロッシェル・カップ: 最後のステップを「〜していただけると助かります」といった控えめな表現にすると良いでしょう。たとえば、“I would really appreciate if you could〜.”のような表現です。また、英語のことわざに“A spoonful of sugar helps the medicine go down.”(スプーン一杯の砂糖と一緒なら薬は飲みやすくなる)があります。ポジティブ・フィードバックを経てから、ネガティブ・フィードバックを行うと、相手も心を開いた状態で耳を傾けてくれることでしょう。

会場からの質問(2): 外国人上司から「自分の仕事を積極的にアピールしろ!」と頻繁に言われます。しかし、他の外国人社員がアピールする中では、どうしても気後れしてしまいます。ぜひ、アドバイスをください。

ロッシェル・カップ: やはり、少しずつでも自分の仕事ぶりや実績をアピールする機会をつくることが大切です。もう1つ重要なことは、外国人に対して慎み深い表現はあまり使わないことです。たとえば、“I don’t have so much experience in this area.”など、自分の能力や経験を必要以上に低く表現することは、外国人にはあまり良い印象をもたれません。多くの国の文化では、相手の意思を言葉通りに受け取ることが多いため、余計な誤解を生んでしまいかねないのです。

会場からの質問(3): 私は日本人社員と外国人社員のコミュニケーションブリッジを担当していますが、日々苦労しています。相互の関係を円滑にするための、コツや工夫があれば教えていただけますか?

ロッシェル・カップ: 私自身も、異なる背景をもつ人をつなぐことは非常に難しいと感じています。しかし、グローバル化が進む現代において、あなたの仕事は非常に大切です。当たり前に聞こえるかもしれませんが、やはり基本は両者の意見を聞き、大切にしている思いを知ることです。もう1つは、win-winの解決策を求めることです。

米国に進出した日系銀行の支店の話を1つの例として、お話しします。新オフィスの設計にあたり、日本人駐在員は日本と同様に壁のないオープンな空間を、米国人社員は半個室のキューブ型を希望したため、意見が真っ向から対立しました。そこで、双方の意見の背景を掘り下げて分析してみたのです。日本人駐在員は、社員同士の積極的なコミュニケーションを奨励したいと考え、同時に、上司が部下の様子を見ながら仕事ができることを重視していました。米国人社員は、集中しやすいよう余計な雑音が入らないこと、プライバシーの確保を重視していました。

両者の思いから導き出された答えは、座ったときに顔の高さまでを白い壁で隠し、その上部を透明な壁にすることでした。雑音は聞こえなくなり、立ち上がらなければ互いの様子は分かりません。しかし、上司は部下の様子をそれとなく窺うことができ、透明な壁なのでコミュニケーションもとりやすい。双方がハッピーになりました。互いの表面的な主張だけを聞いていては、根本的解決にはつながりません。有効なアイデアや解決策は、主張の裏にある本当の理由を掘り下げることで導き出されるのです。時間と粘り強さが必要になりますが、円滑なコミュニケーションを求めるのであれば、大切なプロセスだと思います。


会場からの質問(4): 本日のアドバイスは、日本人のような間接的コミュニケーションを好む人が、直接的コミュニケーションを好む人に接する際に注意すべき点だと思います。反対のケースでは、どのような点に注意すべきなのでしょうか?

ロッシェル・カップ: ストレートな表現を、よりソフトな表現に変えたほうが良いでしょう。また、相手の言葉に含まれていない思いにも敏感になることが大切です。言葉に依存するコミュニケーションを好む人は、相手が明確に「ノー」と言わなければ賛成だと認識し、そのまま物事を進める傾向があります。また、会話においても一方的に話してしまいがちです。そうならないよう、相手の真意を念入りに確認することと同時に、“Talk less, listen more.”とアドバイスしています。

会場からの質問(5): 10年以上アメリカで働き、帰国して日本企業に勤めた際、上司や同僚から「日本ではこうだ」とたびたび指摘され、大きな違和感を覚えました。郷に入っては郷に従えと言われるように、無理してでも相手の文化に合わせたほうが良いのでしょうか?

ロッシェル・カップ: 私にも同じような経験がありました。海外に行くと、さまざまなことを経験して視野が広がり、自国の文化と比較して違いを認識しはじめます。しかし、自国で海外と同じように振る舞うと、周囲から浮いてしまうことがあります。

理想はコミュニケーション・スタイルを、相手に応じてフレキシブルに変えられるようになることです。八方美人ではなく、対面する相手の文化に合わせて調整する。あなたの本質的な部分まで変える必要はありません。コミュニケーションの表面的な部分を、意識的に調整することが役立つと思います。(了)

気づきポイント

●「違い」を考える際は、まず自分自身を客観的に理解することが大切。
●相手を理解するうえで、国や地域の傾向だけでなく、個人の傾向・スタイルにも目を向けよう。
●フィードバックを日常化させることで、異文化のコミュニケーションはより円滑になる。

該当講座

日本型ビジネス文化の特徴とグローバル・コミュニケーション・スキル
Rochelle Kopp (ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長)

Rochelle Kopp(ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長)
本セミナーでは来日するカップ氏をお招きして、グローバルにビジネスを展開する際に日本型文化が海外でどう見られており、コミュニケーションで気をつける点はどこにあるのか、ワークショップを交えながらお話いただきます。


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