記事・レポート

日本型ビジネス文化の特徴とグローバルコミュニケーションスキル

世界で活躍するために必須のノウハウを解説:ロッシェル・カップ

BIZセミナーグローバル文化ビジネススキル
更新日 : 2014年07月18日 (金)

第5章 異文化コミュニケーションに役立つ「フィードバック」


 
フィードバックは潤滑油

ロッシェル・カップ: ビジネスにおける日本と諸外国の文化の違いを見てきましたが、ここからは異文化コミュニケーションを円滑にする「フィードバック」についてご説明します。

【フィードバックの定義】
フィードバックとは、相手の仕事について自分の意見を伝える方法である
フィードバックとは、指導の方法である
フィードバックとは、肯定と否定、双方の表現を含む
フィードバックとは、表面的なコメントではなく、深く考慮されたコメントを意味する

ビジネスにおけるフィードバックの基本は、相手の行動に対して、自分の意見を具体的かつ詳細に伝えることです。フィードバックは、ポジティブ(褒める・感謝・奨励)と、ネガティブ(問題の指摘・改善を促す)に大きく分けられますが、いずれにしても、率直な意見を伝えることは、相手の行動に影響を与えるうえでは非常に有効な方法です。

日常的に行うフィードバックは、「あなたの仕事ぶりをいつも見ています」「あなたの仕事は重要です」という意思表示でもあります。それは、相手に対する気配り・思いやりを示す行為であり、能力の向上を応援する意味をもちます。具体的な説明を通して相手に役立つ情報を提供することで、相手は自分の行動の何が良く、何が悪いのかを客観視でき、自分を深く理解することができるようになります。また、上司と部下の関係であれば、上司がどのようなポイントを評価しているのかを間接的に伝えることもできるため、より良い関係づくりにも役立つのです。

フィードバックに対する誤解

ロッシェル・カップ: 非言語的なコミュニケーションを好む日本では、上司が面と向かって部下の行動を褒めることは少ないでしょう。「仕事はできて当たり前」と考えていたり、褒めることを「ご機嫌取り」と考えてしまったりすることもあるため、部下の仕事に問題がなければ、特段何も伝えないことが多いと思います。また、部下の仕事ぶりに問題があれば、上司はオブラートに包んだ表現を使い、それとなく問題を指摘します。むしろ、部下のほうが上司の意図を察し、自分で改善策を考えるべきだ、という空気があります。

たとえば、外国人が日本企業に入り、日本人上司の下で働くと、それまで受けていたフィードバックが急になくなり不安になる、という声をよく聞きます。言語による直接的なコミュニケーションを好む人は、フィードバックを当然の行為だと考えているからです。上司からのフィードバックがなければ、「自分は無視されている」「大切にされていない」と解釈してしまう可能性もあるのです。

直接的なコミュニケーションを好む人のなかでも、特に優秀な人は、過去にたくさんのポジティブなフィードバックを受けてきたはずです。しかし、日本企業に入った途端、ほとんどフィードバックがない状態になります。すると、自分は評価されていないと感じ、この企業に自分の将来はないと考え、辞めてしまう人もいます。こうした誤解により、企業にも本人にもとても残念な結果になることもあるのです。



該当講座

日本型ビジネス文化の特徴とグローバル・コミュニケーション・スキル
Rochelle Kopp (ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長)

Rochelle Kopp(ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長)
本セミナーでは来日するカップ氏をお招きして、グローバルにビジネスを展開する際に日本型文化が海外でどう見られており、コミュニケーションで気をつける点はどこにあるのか、ワークショップを交えながらお話いただきます。


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