アートと 天文と 資本主義 <新WEBセッション> vol.1
「アート、天文、資本主義の最先端」って何ですか?
異分野の掛け合わせで何が起こるのか? WEB上で語り合う鼎談シリーズ第1弾!
このシリーズ第1弾に登場するのは、専門領域の異なる3名のプロフェッショナルです。
「アート × 天文 × 資本主義」
森美術館館長・片岡真実さん(アート)
東京大学准教授・高梨 直紘さん(天文)
NHKエンタープライズ ・丸山俊一さん(資本主義)
今、それぞれの分野からは、どんな景色が見えているのでしょうか?
お互いの意見に疑問・質問を重ねていく連続セッションは、次のように進めていきます。
①「それぞれの専門分野について聞く」(←今回は、ここです)
②「お互いの分野について質問する」
③「それぞれの質問、読者からの質問に答える」
探り深めあう読者参加型の誌面セッションを、どうぞお楽しみください!

写真:伊藤彰紀
現代アートには世界の政治、経済、社会や文化が投影されますから、例えば政治的、宗教的な衝突の歪みが生む各地の難民問題や植民地化の歴史とその遺産などが、作品の批評的主題になっています。また、経済成長の著しい地域のアートは注目され、新興富裕層が新しいコレクターになり、私設美術館が創設されたりしています。
一方、表現の自由は民主主義政治の原則ですが、批評性の高いアートは検閲対象になってきた歴史もあり、今日もなおそうした懸念と隣り合わせにあります。
近年ではダイバーシティの考え方が広がり、近現代美術館のコレクションや展覧会プログラムにおける人種、民族、ジェンダーなどの不均衡を是正しようとする動きが顕著です。また、人類学博物館などでは植民地化時代に奪取された文化財を返還する動きもあります。今後は、気候変動など地球規模の課題に向けたアートや美術館の対応が急速に問われていくでしょう。

東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 特任准教授
実は、ついこないだまで、太陽系以外の宇宙にはひとつの惑星も見つかっていませんでした。もちろん、太陽のように輝く星は無数にあります。しかし、“水金地火木土天海”のような惑星が見つかっていなかったのです。この宇宙で生命を宿す惑星は、もしかすると地球だけなのかもしれない。まさに奇跡の星、地球!
その思い込みを打ち崩したのが、ペガスス座51番星のまわりを回る惑星の発見でした。1995年にこの惑星が発見されたことによって系外惑星探しが本格化し、今日までに4,000個を超える惑星が発見されています。中には、地球とよく似た環境を持っていてもおかしくない惑星が何個も見つかっているのです。これ、すごいことじゃないですか??
もちろん、だからといって、そこに生命が発見されたわけではありません。生命が存在できる環境がどれほどあるのかも未知数。しかし、天文学者たちは大きな期待を持っています。もしかすると、遠くない将来に私たちの世界観を書き換える発見があるかもしれません。天文学は、宇宙を通じて私たちのありようを知る
営みでもあります。ぜひご注目下さい。
東京藝術大学客員教授/早稲田大学非常勤講師

モノからコト、トキ、イミへ、無形の体験などが占める消費が増え、同時にそうした第三次産業を生業とする人々が大きな層を占める社会は、非常に流動性が高いものになります。いわゆるポスト産業資本主義です。モノで差別化するのではなく、イミで差異化するポスト産業資本主義では、何かを欲しい、何かをしたいという欲望を支える感情、心そのものが「商品」となることで二重の不安定性が生まれます。
こうして資本主義を駆動する「欲望」の形が見えにくくなる中で起きたコロナショック。
1で世界に波及、2で瞬時に、そして3の感情消費が相まって、不安が増幅。さらに、この不安感が買いだめというモノ消費へと「逆行」させる、という錯綜を生んでいます。
「最先端」は人々の心の底に巣食う不安感にあると言えるのかもしれません。そしてもう一つの「最先端」は「社会主義」? 資本主義は、「修正」という形でいつも「社会主義」的な要素を取り込みバランスを取ってきましたが、市場原理主義の行き過ぎが指摘される今、「社会主義」を求める声も高まっています。
「市場」を保つ為「市場」外に助けを求める皮肉な逆説が繰り返される歴史。この古くて新しい逆説の中にあるのが、資本主義なのです。
アートと 天文と 資本主義 <新WEBセッション> インデックス
講師紹介
片岡真実(かたおか・まみ)
森美術館 館長
ニッセイ基礎研究所都市開発部、東京オペラシティアートギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年より森美術館。2007〜09年はヘイワード・ギャラリー(ロンドン)国際キュレーター兼務。第9回光州ビエンナーレ(韓国、2012)共同芸術監督、第21回シドニー・ビエンナーレ芸術監督(2018)。CIMAM(国際美術館会議)会長、京都造形芸術大学大学院教授。日本及びアジアの現代アートを中心に企画・執筆・講演等多数。
高梨直紘(たかなし・なおひろ)
天文学普及プロジェクト「天プラ」代表
東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 特任准教授
1979年(昭和54年)広島県広島市生まれ。2008年(平成20年)東京大学大学院博士課程修了 博士(理学)、国立天文台 広報普及員・研究員(ハワイ観測所)を経て、現在に至る。天文学と社会の関係をどのようにデザインするか、という観点から実践的な研究活動を行っている。六本木天文クラブの企画責任者。主な著作物に「一家に1枚 宇宙図」(共著)など。
丸山俊一(まるやま・しゅんいち)
NHKエンタープライズ番組開発エグゼクティブプロデューサー
東京藝術大学客員教授/早稲田大学非常勤講師
「欲望の資本主義」を始めとする「欲望」シリーズ、「地球タクシー」「ネコメンタリー」他、時代の潮流を捉える企画を開発、制作し続ける。
著書「14歳からの資本主義」「結論は出さなくていい」共著「欲望の資本主義1~3」「マルクス・ガブリエル欲望の時代を哲学するⅠ、Ⅱ」「AI以後」他多数。

「やめられない、止まらない。欲望が欲望を生む、欲望の資本主義。」
2016年5月、このフレーズにて大好評で幕を開けた「欲望の資本主義」。「欲望の経済史/民主主義/時代の哲学/哲学史」など様々な広がりのあるシリーズ展開しています。
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