記事・レポート

ビジネスとクリエイティブの新しい関係

ライフスタイルサロン「編集力シリーズ」第二回 ゲスト:佐藤可士和

更新日 : 2009年08月24日 (月)

第7章 日本のよさを国際社会の中で伝えられない政治力

ライフスタイルサロン「編集力シリーズ」第二回 会場の様子

安藤礼二: 竹中さん、政治の一番の価値をデザインすることについてはいかがでしょうか?

竹中平蔵: みなさん、いかんともしがたい感じを持っていると思うのですが、実は貸し借りをつくっているのは、結局国民一人ひとりです。社会は縮図であって「その国の政治は、その国民の民度を超えることができない」という有名な言葉があります。ただ、そういうことを阻んでいるものがあることも事実です。

だから私は、政治のキャンペーンの中にちゃんとしたクリエイターが入るべきだと思います。例えば今、政治家でもコーディネーターがついている人はほとんどいないわけで、そこには潜在的なニーズがあると思うのです。

佐藤可士和: 以前、何かの仕事をやったときに、「国の会計の項目に『デザイン』はない、『印刷費』だったら出せる」みたいな話がありました(笑)。それなのに、「クリエイティブやデザイン、知財が大事だ」とおっしゃるんです。そういうゆがみは、どうなっているのですか。

竹中平蔵: そのゆがみを直すには、予算の考え方をBack to Basicで根本的に変えなければいけないのです。今の予算は、みんな必ず「領収証を出せ」と言うでしょう? 鉛筆1本いくら、という積み上げは実はそんなに重要ではなくて、重要なのは結果なんです。

竹中平蔵氏
安藤礼二(左)、佐藤可士和氏(中央)、竹中平蔵(右)
例えば道をつくるのが典型です。セメントがどれだけ要るのかが重要ではなくて、「この道をつくれば交差点の混雑を何%解消できる」ということが重要なのに、そういうアウトカムベースの政策になっていないのです。これこそ政治のリーダーシップで変えなければいけない。

財政再建を行った北欧の国などは、アウトカムを明確にしたのです。私はニューパブリックマネジメントというモデルプロジェクトをつくったのですが、辞めた途端になくなってしまった(笑)。「早く止めてほしい」とみんな思っていたのだと思います。

佐藤可士和: 国のことで言うと、さっきのユニクロのTシャツの「強みが弱みになってしまっている」みたいなことが、すごくあると思っています。

例えば不正をなくすために入札の仕組みというのがありますが、クリエイティブに置き換えると、指名コンペだったらいいのですが、「公平に」ということで素人にシンボルマークをつくらせるようなことをしてしまっています。

それが日本のものとして世界に出ることで、「日本のレベル」と見られてしまうのはまずいんじゃないかと思うのです。癒着や不正をなくそうとするシステムが、かえっていいものを拾わないシステムになっていないか、僕はそこを危惧しています。