記事・レポート
「世の中に必要なもの」、それが付加価値づくりの原点になる
巨大な生保業界に風穴をあけられるか
~ライフネット生命保険・岩瀬大輔氏が語る「志」~
更新日 : 2009年07月29日
(水)
第6章 「自分が主役になってエンジンになる」ことが必要
米倉誠一郎: 皆さん、ソフトバンクがボーダフォンを買収して携帯電話事業に進出して、ここまで成長すると予測しましたか。僕は「すごい賭けだな」と思いました。ソフトバンクは成長機会をとらえて、徹底的に競争して、必要なピースを提供していきましたが、ライフネットは今いかがですか。
岩瀬大輔: 一時期ほどは苦しくありません。まだ弾をいっぱい持っているので。不景気のときは我々のような安い代替品が強いんです。いろいろな活動がどんどん重なってきているので、今年は飛躍できると感じています。
僕は自分にも仲間にも言っているのですが、「本当に価値のあるものは、簡単には手に入らない。簡単に手に入るものは大した価値のあるものではない」と。我々がネット生保でいきなり大成長したら、誰でもまねできますよね。そうではなくて、すごく苦しくて、いろいろ頭を使いながらつくっていかなければいけない、だから後からまねできないんだと。
日本は中流社会なので、自分たちが恵まれていると感じる場面が少ない。アメリカにいると、格差がものすごくあります。5,000万人が保険なしでいるとか、3,500万人が貧困層だとか、ものすごいんです。こうなると、すごく自分たちは恵まれているということに気づくわけです。
米倉:グラミン銀行は物乞いの人にお金を貸しているんです。「もう物乞いするな。10ドルなら貸すから」と言って貸すと、そのお金を元に仕事をすることを考え始める。そのうちMBAなんかとったこともないのに、マーケットセグメンテーションとかニッチマーケットとか、自分たちで言い出すようになると。ユヌス氏は、「どんな人間でも、ものすごいポテンシャルがある」と言っています。
これを聞いたときに思ったのは、日本って実はそういう社会なんですよね。だってスーパーリッチがいなかったじゃないですか。だからみんなが一人ひとり頑張ってきた。本田宗一郎は自転車に湯たんぽを付けてバイクをつくったし、ソニーの前身、東京通信研究所は7人で電気釜をつくった。
ホンダやソニーがあるのに、今の日本は「誰かが雇ってくれるはずだ。どこか大きな会社がやって、その中で小さなエンジンになればいい」と言うようになった。本末転倒です。「小さな会社で自分が主役になってエンジンになる」というスタンスを忘れてしまったらいけないのです。
岩瀬大輔: 一時期ほどは苦しくありません。まだ弾をいっぱい持っているので。不景気のときは我々のような安い代替品が強いんです。いろいろな活動がどんどん重なってきているので、今年は飛躍できると感じています。
僕は自分にも仲間にも言っているのですが、「本当に価値のあるものは、簡単には手に入らない。簡単に手に入るものは大した価値のあるものではない」と。我々がネット生保でいきなり大成長したら、誰でもまねできますよね。そうではなくて、すごく苦しくて、いろいろ頭を使いながらつくっていかなければいけない、だから後からまねできないんだと。
日本は中流社会なので、自分たちが恵まれていると感じる場面が少ない。アメリカにいると、格差がものすごくあります。5,000万人が保険なしでいるとか、3,500万人が貧困層だとか、ものすごいんです。こうなると、すごく自分たちは恵まれているということに気づくわけです。
米倉:グラミン銀行は物乞いの人にお金を貸しているんです。「もう物乞いするな。10ドルなら貸すから」と言って貸すと、そのお金を元に仕事をすることを考え始める。そのうちMBAなんかとったこともないのに、マーケットセグメンテーションとかニッチマーケットとか、自分たちで言い出すようになると。ユヌス氏は、「どんな人間でも、ものすごいポテンシャルがある」と言っています。
これを聞いたときに思ったのは、日本って実はそういう社会なんですよね。だってスーパーリッチがいなかったじゃないですか。だからみんなが一人ひとり頑張ってきた。本田宗一郎は自転車に湯たんぽを付けてバイクをつくったし、ソニーの前身、東京通信研究所は7人で電気釜をつくった。
ホンダやソニーがあるのに、今の日本は「誰かが雇ってくれるはずだ。どこか大きな会社がやって、その中で小さなエンジンになればいい」と言うようになった。本末転倒です。「小さな会社で自分が主役になってエンジンになる」というスタンスを忘れてしまったらいけないのです。
岩瀬大輔: グラミン銀行と似たようなマイクロファイナンスを中南米でやっている団体「アクシオン」があります。ハーバードの先生がアクシオンの元社長だったのですが、すごく印象に残っている言葉があるのです。
「僕らがやっている仕事は大聖堂を建てるような仕事だ。自分たちは工事をしているが、生きている間は多分完成しない。大きなものをつくるんだという思いで目の前のレンガを1個1個積んでいる。そう考えるべきだろう」
社会を変える仕事というのは簡単ではありません、しかも1人ができることは限られています。でも、そういう想いで仕事をしていくことで、小さな積み重ねで変わっていくんだなと思いました。
米倉誠一郎: 我々がこのライフネット生命保険に入るということは、そういうことなんですよ。日本の生保を変えていく。死んでいたお金が生き返るっていうこと。だから我々はベンチャーを応援する。
岩瀬大輔: 生保のマーケットは約40兆円なので、5%安くなれば毎年2兆円、国民の可処分所得が増えるわけです。定額給付金どころではありません。20年、30年考えたら、40兆円、60兆円というお金になるわけです。我々が参入したことで、ほかの会社もちょっとずつ値段を下げたりしています。
僕は今、60歳で起業したおじさんと、寝食を共にするまではいかないのですが、朝から晩までずっと一緒にいます。彼らの人生はすばらしいと本当に思うのです。60歳であれば同期の人たちはそろそろリタイヤして、ゴルフでもしてゆっくりしているわけですよね。それが自分たちの子どもと同じぐらいの年齢の人たちを集めて、新しい挑戦をしているんですから。僕の目標は、自分が60歳になったときに、30歳の人たちと一緒にまた大きな挑戦をすることです。
そういう意味では、皆さんお一人ひとりにも当てはまると思うのですが、今すぐ何かをやられなくても40歳、50歳、まだまだチャンスはいっぱいあるわけです。ですからどこでピークに持っていくかということを考えて、じっくり準備したらいいと思うのです。
米倉誠一郎: 元気塾も、オヤジの冒険なのよ(笑)。正直、「日本元気塾」という名前は恥ずかしいけれどね、それもまあいいかと思って。みんなすごい力を持っていると僕はいつも思っています。と同時に、みんなすごい力があるのに、どうしてそれを出さないんだろうとも思っています。本気を出せば、もっといろいろなことができると思うんです、岩瀬さんのように。本日はどうもありがとうございました。(了)
「僕らがやっている仕事は大聖堂を建てるような仕事だ。自分たちは工事をしているが、生きている間は多分完成しない。大きなものをつくるんだという思いで目の前のレンガを1個1個積んでいる。そう考えるべきだろう」
社会を変える仕事というのは簡単ではありません、しかも1人ができることは限られています。でも、そういう想いで仕事をしていくことで、小さな積み重ねで変わっていくんだなと思いました。
米倉誠一郎: 我々がこのライフネット生命保険に入るということは、そういうことなんですよ。日本の生保を変えていく。死んでいたお金が生き返るっていうこと。だから我々はベンチャーを応援する。
岩瀬大輔: 生保のマーケットは約40兆円なので、5%安くなれば毎年2兆円、国民の可処分所得が増えるわけです。定額給付金どころではありません。20年、30年考えたら、40兆円、60兆円というお金になるわけです。我々が参入したことで、ほかの会社もちょっとずつ値段を下げたりしています。
僕は今、60歳で起業したおじさんと、寝食を共にするまではいかないのですが、朝から晩までずっと一緒にいます。彼らの人生はすばらしいと本当に思うのです。60歳であれば同期の人たちはそろそろリタイヤして、ゴルフでもしてゆっくりしているわけですよね。それが自分たちの子どもと同じぐらいの年齢の人たちを集めて、新しい挑戦をしているんですから。僕の目標は、自分が60歳になったときに、30歳の人たちと一緒にまた大きな挑戦をすることです。
そういう意味では、皆さんお一人ひとりにも当てはまると思うのですが、今すぐ何かをやられなくても40歳、50歳、まだまだチャンスはいっぱいあるわけです。ですからどこでピークに持っていくかということを考えて、じっくり準備したらいいと思うのです。
米倉誠一郎: 元気塾も、オヤジの冒険なのよ(笑)。正直、「日本元気塾」という名前は恥ずかしいけれどね、それもまあいいかと思って。みんなすごい力を持っていると僕はいつも思っています。と同時に、みんなすごい力があるのに、どうしてそれを出さないんだろうとも思っています。本気を出せば、もっといろいろなことができると思うんです、岩瀬さんのように。本日はどうもありがとうございました。(了)
「世の中に必要なもの」、それが付加価値づくりの原点になる インデックス
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2009年06月26日 (金)
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第5章 あの手この手でパブリシティにチャレンジ
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2009年07月29日 (水)
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