記事・レポート

「世の中に必要なもの」、それが付加価値づくりの原点になる

巨大な生保業界に風穴をあけられるか
~ライフネット生命保険・岩瀬大輔氏が語る「志」~

更新日 : 2009年04月28日 (火)

第1章 学びに枠は必要ない

岩瀬大輔氏 ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長
岩瀬大輔氏 ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長

米倉誠一郎: 僕らが元気塾をやろうと思ったのは日本人一人ひとりに元気がないのに、日本全体が元気になるわけがないと感じていたからです。だから、まずはこうしてプレセミナーを開いて、どんどん「元気のもと」になる人物を皆さんに紹介していこうと思っています。

元気塾にはカリキュラムも何もないんです。なぜかというと、ひとことで語れない塾をつくりたかったんです。形式知をなぞる塾というのはどこでもある。例えばMBAの講座なら、いい教科書さえあれば先生が変わっても「こういうふうに業界分析できるよ」と教えることができる。そういうものを今更つくってもしょうがない。

元気塾は「一言で語れない塾」。基本的に自由と規律を大事にしながら、暗黙知は暗黙知のまま、何かを人に伝えていく塾をつくりたいと思ったのです。ここでは何が起こるかわかりません。

そんな想いを共有して、株式会社バルスの髙島郁夫社長と、株式会社フジマキ・ジャパンの藤巻幸夫副社長の3人で「元気塾をやろうよ」と結集したのです。

吉田松陰の松下村塾が開いていた期間は、実は1年もないんです。それなのに、幕末の志士たちが「何かすごく面白いことがある」と嗅ぎつけて集まってきた。そこに何があったのか、これはたぶん語れないと思うんです。また、語る必要もないと。
 
バングラディッシュにグラミン銀行という金融機関があります。ムハマド・ユヌス氏が1983年に創設した「貧者の銀行」です。グラミン銀行の借り主の90%以上が女性です。その貧しい母親たちは銀行から借りたお金を元に起業するなどしてお金を稼ぎ、子どもたちを学校に通わせることができるようになった。そんな子どもたちをユヌス氏は「我らがグラミンチルドレン」と誇っています。

岩瀬大輔氏 ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長
でも、その子どもたちは大学を出ても職がないんです。彼らに「職を見つけるのを手伝ってほしい」と頼まれたユヌス氏は、こう言ったそうです。「何を言っているんだ。グラミンチルドレンなら、職をつくれ。君たちはもう次元が違うんだから、『誰か職業をください』じゃない」

僕がいつも思っていたことがあります。わが一橋大学の学生は、国立大学で一所懸命頑張ってきたのに、「銀行に入って年収1,000万円ぐらいもらえたらうれしい」と言う。「100年前につくられた銀行で、おこぼれにあずかる程度でいいってすごく寂しくないか? 自分でつくり出そうよ。それが本当のエリートじゃないか」そう感じます。

今日登場する岩瀬大輔君は、大学在学中に司法試験に合格して、卒業後はボストンコンサルティンググループやリップルウッド・ジャパンで働いていました。それが「ハーバードビジネススクールに行く」と日本を飛び出して、猛勉強の末、ハーバードのBaker Scholar(ベーカー・スカラー:成績優秀者)に選ばれました。日本人では4人目という快挙です。帰国したら、当然のように外資系の経営コンサルティングの世界に戻るかと思いきや、保険業界に飛び込んだ。

今回のタイトルは「巨大な生保業界に風穴をあけられるか」ですが、疑問形になっているところが寂しいところだよね。「あけた」という話じゃなくて「あけられるか」。でも、「こいつ、うまくやったかな?」「途中、どうなったかな?」と経過を見ていくことにも意義がある。あるいは「敗軍の将は兵を“語る”」だったりしてもいい。

そういうチャレンジしている人たちに来てもらって、自分たちの生き方のデザインが描けることを感じる。なんだかんだ言っても日本は豊かだし、まだまだ眠っているものがあるってことを感じてほしい。日本って本当に今、チャンスなんです。

我々が常識から「こうあるもの」と思っていたものが、やり方や見方を変えた途端、成長産業になる。銀行とか保険とか電話会社のように、個人が変えられるものではないと思い込んでいたものに風穴を開けていくことができる。それが本当に新しい生き方、あるいは元気の源ではないかと思うんです。今回はそういう行動を起こした1人ということで、この元気塾プレセミナーの第1弾に岩瀬大輔さんをお迎えしました。


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