記事・レポート
G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」
BIZセミナーその他
更新日 : 2008年09月19日
(金)
第3章 各国の首脳が議論する激しい場面は、報道されない
河野雅治: 私は黒子ですから表に出ることはないし、この部屋から出たら口はつぐみますが、皆さまが映像で見ている場面と、実際に首脳が集まって議論をしている場面というのは大違いであります。
例えば、ジョージ・ブッシュは途中、イヤホンを指に巻いて振り回していました(笑)。これがとても気に入ったようです。でも、ふと恥ずかしいと思って、私の方を見るんですね。目が合って手を振り合ったりして(笑)。皆さん、想像するならば、学校のクラスルームみたいなものです。いろいろな生徒がいるでしょう、授業を聞いていない人、熱弁を振るう人、いろいろな人があなたのクラスにもおられたでしょう。まさにG8の首脳というのは究極の9人のクラスルームなのです。
そうかと思えば、自分が当てられたらば、手を振って本当に熱弁を振るう首脳がいます。想像がつきますでしょう?サルコジ大統領ですね(笑)。総理が言うところのニコラです。このニコラに当てたら大変です。もう本当に手の振り方は、ものすごいですよ。一瞬、手が総理にとどいてしまうのではないかと思うぐらい接近したときもあります。
私だけが見たニコラは手を振っているだけではないんです。足で机を蹴るんです。それは激しいものでした。その音をドンドン響き渡らせながら、「こん なサミットは意味がないじゃないか」「これは茶番劇だろう。こんなサミットをやったら、我々は笑い物になる。この議論をもっと徹底しなければいけないので はないか」ということを、まさに体全体で表現するのです。
繰り返し申し上げるつもりはありませんけれども、外から見ていますと、なごやかな議論をしている、あるいは談笑している姿というのが見られると思い ますが、実際の現場での激しさは、何度見ても、私は「これはドラマだ」と思います。昨年(2007年)のハイリゲンダム(ドイツ)でも思いましたし、今年のサミットも、やはりドラマがあったと思います。
どの話題をとってみても対立、対立、対立です。例えば、世界経済の議論をしたら、やはり投機マネーの問題はどうしても避けがたいわけです。ある国の 首脳は「とにかく投機マネーがいかん」ということで議論を徹底的にやる。一方で、「投機マネーというのはもう存在するものだから、それは前提として議論し なければだめじゃないか」と激しく主張する首脳もいる。この辺のやりあいは本当に激しかったと思います。
気候変動の問題も、「G8として地球温暖化問題にリーダーシップを発揮しなければだめではないか、我々だけでいこう」というのに対して、「いやい や、中国とかインドを巻き込まなければこの解決は見出せないんだから、一緒になってやらなければいけないんだ」といった具合で、首脳間の立場は大きく異な ります。
開発の問題も今回の大きなテーマでしたけれど、これまでG8の国は世界中にいろいろな約束をしているのです。ODAを何倍、アフリカに日本は倍増する等々、「こういった約束がきちんと守られていたのか、むしろ過去を振り返って、これまでの検証をすることが重要ではないか」ということを言う首脳に対して、「いやいや、『これから先にどれだけやっていくか』というコミットメントをきちんと示すことが大事だ」と言う首脳もいて、これも大きな対立点だったと思います。
今回、政治の問題ではジンバブエが大きなテーマになりました。「内政干渉も辞さず」「制裁をすべきだ」という意見と、「内政干渉すべきでない」と か、「制裁よりも話し合いだ」と主張する国とがありました。こういう議論になると、もう切りがなく首脳は話します。本当に切りがなく話すものですから、ここで議長が大事なのです。「もうそろそろ次の議題に移ろう」とか、「話は短めに」とか、総理は英語が上手です。本当にうまいと思いました。
そうかと思うと、総理を見ていますと、激しく議論をしているわきで、「どうです、この食事おいしいでしょう?」なんて。なかなかの余裕だったと思います。
例えば、ジョージ・ブッシュは途中、イヤホンを指に巻いて振り回していました(笑)。これがとても気に入ったようです。でも、ふと恥ずかしいと思って、私の方を見るんですね。目が合って手を振り合ったりして(笑)。皆さん、想像するならば、学校のクラスルームみたいなものです。いろいろな生徒がいるでしょう、授業を聞いていない人、熱弁を振るう人、いろいろな人があなたのクラスにもおられたでしょう。まさにG8の首脳というのは究極の9人のクラスルームなのです。
そうかと思えば、自分が当てられたらば、手を振って本当に熱弁を振るう首脳がいます。想像がつきますでしょう?サルコジ大統領ですね(笑)。総理が言うところのニコラです。このニコラに当てたら大変です。もう本当に手の振り方は、ものすごいですよ。一瞬、手が総理にとどいてしまうのではないかと思うぐらい接近したときもあります。
私だけが見たニコラは手を振っているだけではないんです。足で机を蹴るんです。それは激しいものでした。その音をドンドン響き渡らせながら、「こん なサミットは意味がないじゃないか」「これは茶番劇だろう。こんなサミットをやったら、我々は笑い物になる。この議論をもっと徹底しなければいけないので はないか」ということを、まさに体全体で表現するのです。
繰り返し申し上げるつもりはありませんけれども、外から見ていますと、なごやかな議論をしている、あるいは談笑している姿というのが見られると思い ますが、実際の現場での激しさは、何度見ても、私は「これはドラマだ」と思います。昨年(2007年)のハイリゲンダム(ドイツ)でも思いましたし、今年のサミットも、やはりドラマがあったと思います。
どの話題をとってみても対立、対立、対立です。例えば、世界経済の議論をしたら、やはり投機マネーの問題はどうしても避けがたいわけです。ある国の 首脳は「とにかく投機マネーがいかん」ということで議論を徹底的にやる。一方で、「投機マネーというのはもう存在するものだから、それは前提として議論し なければだめじゃないか」と激しく主張する首脳もいる。この辺のやりあいは本当に激しかったと思います。
気候変動の問題も、「G8として地球温暖化問題にリーダーシップを発揮しなければだめではないか、我々だけでいこう」というのに対して、「いやい や、中国とかインドを巻き込まなければこの解決は見出せないんだから、一緒になってやらなければいけないんだ」といった具合で、首脳間の立場は大きく異な ります。
開発の問題も今回の大きなテーマでしたけれど、これまでG8の国は世界中にいろいろな約束をしているのです。ODAを何倍、アフリカに日本は倍増する等々、「こういった約束がきちんと守られていたのか、むしろ過去を振り返って、これまでの検証をすることが重要ではないか」ということを言う首脳に対して、「いやいや、『これから先にどれだけやっていくか』というコミットメントをきちんと示すことが大事だ」と言う首脳もいて、これも大きな対立点だったと思います。
今回、政治の問題ではジンバブエが大きなテーマになりました。「内政干渉も辞さず」「制裁をすべきだ」という意見と、「内政干渉すべきでない」と か、「制裁よりも話し合いだ」と主張する国とがありました。こういう議論になると、もう切りがなく首脳は話します。本当に切りがなく話すものですから、ここで議長が大事なのです。「もうそろそろ次の議題に移ろう」とか、「話は短めに」とか、総理は英語が上手です。本当にうまいと思いました。
そうかと思うと、総理を見ていますと、激しく議論をしているわきで、「どうです、この食事おいしいでしょう?」なんて。なかなかの余裕だったと思います。
G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」 インデックス
-
第1章 首脳は孤独。サミットは、誰にも相談できない議論の場
2008年09月03日 (水)
-
第2章 シェルパがいなければ、議論の中身は一切外に出ない
2008年09月09日 (火)
-
第3章 各国の首脳が議論する激しい場面は、報道されない
2008年09月19日 (金)
-
第4章 サミットは動物園に似ている?
2008年09月30日 (火)
-
第5章 激動する世界。サミットの役割も年々変化している
2008年10月09日 (木)
-
第6章 「シェルパは見た!」——各首脳の個性
2008年10月23日 (木)
-
第7章 議長にとって一番大事なのは「自分の意見を言うこと」ではない
2008年11月03日 (月)
-
第8章 温暖化ガス半減目標の、あの声明文はいかにしてつくられたのか
2008年11月13日 (木)
-
第9章 今回のサミットは成功だったのか、失敗だったのか?
2008年11月27日 (木)
注目の記事
-
03月26日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一による、六本木ヒルズライブラリーのための選書書棚「動的書房」。2024年3月に新たに21冊が並びまし....
-
03月26日 (火) 更新
本には、人生を変え、時代を創るパワーがある!
2023年4月から2024年2月まで全6回で開催したシリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」。モデレーターの干場弓子さんと何度も企画会....
シリーズ編集者の視点〜時代を共に創る〜 <編集後記>
-
03月26日 (火) 更新
【重要】「アカデミーヒルズ」閉館のお知らせ
「アカデミーヒルズ」は、2024年6月30日をもって閉館させていただくこととなりました。これまでのご利用ありがとうございました。閉館までの間....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 05月08日 (水) 19:00~20:30
多様な個性が育むナラティブパワー
「⾃分の物語(ナラティブ)」を語り、社会との関係性や「私たち」の目指す世界につなげていくことで、何か問題があっても、人々の共感を得て社会を変....
-
開催日 : 05月21日 (火) 12:00~12:45 / 05月21日 (火) 19:00~19:45
ゆる~くつながろう!メンバー雑談
テーマなし!年齢制限なし!ライブラリーメンバーなら誰でも参加できる雑談イベントです。肩の力を抜いて楽しく、そしてリラックスした45分を過ごし....
-
開催日 : 05月02日 (木) 見学ツアー11:00〜12:00/オルガン・プレコンサート13:40~/コンサート14:00〜16:00頃
【メンバー対象イベント】日本フィル&サントリーホール
平日2時のクラシックコンサート「にじクラ~トークと笑顔と、音楽と」のリハーサルを体験しませんか?俳優・高橋克典さんがナビゲーターとなり、上質....
「にじクラ」リハーサル見学・ロビーツアー&昼公演鑑賞