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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年07月22日 (火)

第11章 東京市場をアジアの金融センターに

ゲスト講師の斉藤惇氏と、モデレーターの竹中平蔵氏

斉藤惇: 産業界では、グローバルに活躍している企業を中心にデットとエクイティを総合的に考えた複合的な金融サービスや、銀行や証券の垣根を越えたワンストップな金融サービスに対するニーズが非常に高まっています。ハイブリッド証券による資金調達やM&Aによる資金調達など、銀行と証券の両者が密接にかかわる必要がある案件が増加しています。今般の金融資本市場競争力強化プランにおいては、銀行証券間のファイアウォールの規制のあり方が論じられています。そうした問題をわが国は早期に解決すべきでしょう。

シティ・オブ・ロンドンが毎年実施しており、2007年7月に更新した国際競争力市場ランキングを見ると、東京は10位に甘んじています。ロンドン、ニューヨークはともかく、香港、シンガポール、チューリッヒ、フランクフルト、ジュネーブ、シカゴ、シドニーに抜かれました。また、日本を投資対象とするヘッジファンドの多くが海外に拠点を置いています。さらに、ここ1年の間に、6つの外資系金融機関が日本からシンガポールや香港などへ、トレーディング部門を移しています。リサーチ部門は残しているが、トレーディングは経済的相乗効果が非常に大きい部門です。

前述しましたように、わが国の年金基金、保険などの機関投資家は、ローリスク・ローリターン志向であるため、リスクが大きい創業期や最盛期の企業に対して、適切な資金を供給できていない状況です。むしろ素人のほうがリスクに対して投資をしています。

不思議なことに日本人は、自分の年金を年間1%位でしか回さない年金運用基金に対して不満をぶつけません。アメリカでそうした運用をしていたら、抗議の声が殺到します。

現在の欧米の機関投資家が内外のリスクの大きい企業に対して投資を行なって高い収益を上げていることを踏まえると、われわれは指をくわえて見ているわけにはいきません。まず東京市場をアジアの金融センターとして再生させなければなりません。

東証としては、上場商品の品揃えの強化、プロ向けの新市場の創出といった受け皿を作り、世界中のリスク資本をわが国に呼び込み、将来的にはアジアの資金循環の中核市場としての地位を確立したいという夢を持っています。