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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年07月08日 (火)

第9章 邦銀の海外における競争力は低迷

ゲスト講師の斉藤惇氏と、モデレーターの竹中平蔵氏

斉藤惇: 1986年8月1日付けのアメリカの金融専門紙『アメリカン・バンカー』によると、世界銀行の番付では第一勧業銀行が前年から引き続きトップに位置し、トップ10のうち7行が日本の銀行でした。同じ新聞によると、日本の躍進は急激な円高ドル安により、ドル換算による預金残高が膨張したほか、日本経済の着実な成長を背景に円の預金高が同年10%増加したと解説しています。

現在の邦銀の状況を見てみると、業界再編で名称が変わっていますが、イギリスの金融専門誌『ザ・バンカー』によると、時価総額トップ25で見ると、三菱UFJが9位、みずほフィナンシャルグループが22位でした。トップ10は、アメリカ3行、中国3行、イギリス2行という顔ぶれです。このことは、日系の金融機関がバブル崩壊後に不良債権処理に追われ新たな金融商品や高度な金融サービスをわが国の産業に対して提供できなかったことを示しています。また、企業側も設備投資資金などを自己資金範囲で行なうことにこだわり、借入れの怖さに萎縮したことも事実でしょう。これはユーザーたる事業主を弱めるのみならず、わが国の国富を海外に流出させるということにつながっています。

加えて、M&Aのアドバイザーランキングにも注目してみますと、日本国内では日系金融機関が上位を占めますが、日本を除いたアジア全域で見ると1社も日本の金融機関がないのです。そうした状況を見ても、日本の金融機関、特に投資銀行業務の海外での競争力が著しく低下してしまったと言わざるを得ません。