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日本元気塾セミナーリーダーの本質とは? そして、東京2020へ!

変革を成功に導く“独裁力”/川淵三郎×米倉誠一郎

更新日 : 2018年03月13日 (火)

第6章 リーダーが“協力者”を得るための方法は?



2020年の「先」まで考えよう

会場からの質問(1): 外部からやって来たリーダーの場合、協力者を得るのは非常に難しい。川淵さんはどうでしたか?

川淵三郎: バスケットボールでは、文部科学省、日本オリンピック委員会、日本体育協会、日本トップリーグ連携機構など、オールジャパンでバックアップしていただきました。やはり、変革・改革は1人ではできません。現場では、僕の考えを正確に伝達してくれる人、情報を集めてくれる人、スケジュールを立ててくれる人などが必要です。Jリーグの時は、猪突猛進タイプ、冷静沈着タイプ、物事を俯瞰できるタイプなど優秀なスタッフが3人おり、非常にバランスが取れていたため、様々な困難を乗り越えることができました。

バスケットボールの改革でも人材を探しましたが、適任者が見つからない。そんな時、文部科学省の方から紹介されたのが、東京大学理事で弁護士でもある境田正樹さん。スポーツ分野のガバナンス構築の専門家であり、僕の考えを即座に理解し、次に行うべきアクションやスケジュールまで示してくれました。境田さんがいなければ、B.LEAGUEは実現しなかったと思います。

もう1人は、B.LEAGUEのチェアマンを務める大河正明。彼は元銀行員で、Jリーグでは常務理事としてクラブライセンス制度の構築などで活躍してくれました。彼は、僕が真っ赤な顔で改革に取り組む姿を見て心配し、手伝うと言ってくれた。僕の場合、幸運な巡り合わせが多かったのですが、協力者を探す時に大切なのは、自分と想いを共有し、前だけを見て進んでくれる人を選ぶことです。

また、JリーグやB.LEAGUEには、経営やマーケティング、法律、社会貢献など、異分野からやってきた優秀な人材がたくさんいます。「優秀な人材は報酬も高い」と言われますが、その人材が期待以上の成果を出してくれれば、高い報酬など問題になりません。リスクをとって挑戦しない限り、成功する確率はゼロのまま。仕事もせず居座り続ける人に高いお金を払うより、断然効果的です。外部から優秀な人材を集めることも、改革を成功させるためのポイントですね。



会場からの質問(2): 2020年に向け、川淵さんが楽しみにしていることは?

川淵三郎: 楽しみなことはたくさんありますが、それ以上に不満や心配のほうが多い(笑)。様々な競技団体を見ていると、その競技の将来の発展を考えず、過去と現在だけを見て思考停止に陥り、簡単に結論を出している人があまりにも多い。

例えば、日本のスポーツは「魅せる」という点で非常に劣っています。ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンは、バスケットボールやアイスホッケー、ボクシング、音楽イベントから大統領選挙の大会まで、年間400回以上も使用されています。コートはボタン1つでチェンジし、観戦しやすい客席、素晴らしい照明や音響、トイレもたくさんある。魅せるための工夫が随所に散りばめられており、維持・管理面でもその費用を十分にペイできるビジネスモデルを構築している。

日本でも“世界に冠たるアリーナ”を作れるはずです。そこが様々なスポーツの交流・連携の場、あるいは、ファンや地域の方々の交流の場となれば、スポーツ界全体が発展し、地域活性化の起爆剤にもなる。子ども達にとっても、身近な場所に一流選手がプレーする魅力的なスタジアム、アリーナがあれば、夢も膨らんでいくはず。どうせ夢を描くのなら、2020年のもっと先まで見ながら描いたほうが絶対にいい。

米倉誠一郎: いや、シビれました(笑)。今、多くの日本人が2020年“まで”を見据えて議論し、その先にある“未来”を本気で考えている人は非常に少ない。川淵さんは怒りをエネルギーに変えながら、未来の「ありたい姿」まで本気で考えている。会場の皆さんも、川淵さんに負けないくらい本気で未来を考えましょう。川淵さん、熱いお話をありがとうございました!(了)


該当講座


川淵三郎氏が語る、リーダーの本質とは?そして、東京2020へ!
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川淵三郎(日本サッカー協会キャプテン)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
「解決できるのは僕しかいない」
「国内に分裂している2つのバスケットボールリーグを統合してほしい」6か月以内に国内リーグを統合しなければ、リオ五輪予選への出場が認められないという逆境下で、2016年秋にプロバスケットボール新リーグ、B.LEAGUE開幕へと導いた川淵氏が発揮したリーダーシップとは?波乱の統合劇で川淵氏を突き動かした原動力について語って頂くとともに、2020年東京オリンピック・パラリンピックはどうあるべきか、そして次世代の人材を育成する指導者として、いま考えることについて迫ります。


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