オピニオン・記事

‘AI’=ROBOT?

世を席巻するAIを読む

更新日 : 2017年07月18日 (火)

第6章 AIとビジネス

産業×AIの最前線を読む


澁川雅俊: ムック本『まるわかり! 人工知能最前線』(日経BP社)は、『日経コンピュータ』誌に掲載された最新のAIテクノロジーに関連する記事を再編集し、さまざまな事例を通じてAIビジネスの現状を展望しています。

「ダボス会議が予測する未来」との副題を付した『第四次産業革命』〔K・シュワブ/日本経済新聞出版社〕は、世界経済フォーラム(ダボス会議)の創始者による著書で、現在の産業界におけるAIブームの背景を論じています。「第四次産業革命」とは、モバイル化したネットワーク、強力な小型センサー、機械学習、AIによる社会構造と社会生活の変化を意味します。

経済産業省は2016年、『新産業構造ビジョン〜第4次産業革命をリードする日本の戦略』を発行し、「IoT、ビッグデータ、自動走行、ロボット、AI等の技術革新は、我が国をはじめとする世界の先進国に共通する長期停滞の打破、とりわけ人口減少社会に突入する我が国の課題解決にとって不可欠」との認識の下、グローバル競争を勝ち抜く具体的な国家戦略を促しています。

AIの産業界における利活用の実情と展望については、日経BP社の調査報告書『人工知能の未来2017-2021』が詳細に報告しています。2010年代に入って急速に発展したAIの影響を受けるのは、自動車、電子、電気、機械、IT、メディア、医療、美容、健康、化学、衣料、農業、食品、建築、エネルギー、流通、サービス、金融、保険……。「無関係でいられる既存産業はない」との謳い文句を掲げ、日経の各種メディアが報知する特化型AIビジネスの最新テクノロジーを網羅しています。

昨年に続いての刊行ですが、その内容は厖大で、価格も45万円と高価です。とはいえ、広範な事例を通して現状と近未来的展開を予測しており、企業にとっては有益な資料となるでしょう。同社はロボットに特化した調査報告書『ロボットの未来2017-2026』も初めて刊行しています。

『世界トップ企業のAI戦略』〔EYアドバイザリー/日経BP社〕は、『人工知能の未来』の簡易版で、google、amazon、IBMなどはもとより、トヨタ、三菱電機、富士フイルムといった世界的トップ企業52社のAIビジネス戦略を、農業、ものづくり、自動車、住宅、医療の5つの分野で紹介しています。


『人工知能が変える仕事の未来』〔野村直之/日本経済新聞出版社〕は、「いまのAIは人間の能力を補完できる部分が多くなった」と、現時点での進展を正当に理解し、産業、経営、そして日常のビジネス活動に的確に導入すべきだと提唱しつつ、具体的な事例を挙げて解説しています。

とりわけ、人間の相性判断といったマッチングの新たなサービスから、モノ・カネのマッチング、監視、トラブル処理、医療・ヘルスケア、流通・小売・営業、運輸(自動車)、製造業、広告・マーケティング、農林水産、人事・労務など広範なビジネスでの活用法を、実際に開発されつつある技術の進歩の方向性に基づいて展望しています。

以上は、企業人向けの解説書ですが、『文系でもわかる人工知能ビジネス』〔EYアドバイザリー/日経BP社〕は、『人工知能の未来』を基盤としてAIが適正なイメージで理解されるよう、人々の日常生活にどのように活用されているかをわかりやすく説明しています。

機械に仕事が奪われる?



澁川雅俊: AIビジネスが躍進する反面、いま、いくつかの問題が指摘されています。『シリコンバレーで起きている本当のこと』〔宮地ゆう/朝日新聞出版〕は、前述の『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』と同じ出版社から出された1冊ですが、こちらは一攫千金の事例ではなく、その裏にある禍根を掘り起こしています。いわく、「この地域から世界を席巻する製品やサービスが生み出されている一方で、極端な富裕層と貧困層の二極化が進んでいる。人種差別や性差別も著しい」。いわく、「世界を変える技術やサービスを生み出す一方で、既存社会のルールや価値観との摩擦・衝突をも生み出す」。

しかし、それでもなお一攫千金を夢見て、いまも多くの若者が彼の地を目指しています。その意味で前書とは視点を異にしながらも、「ここで起こっていることは、いずれ日本でも起こる」とする点では一致しています。とりわけ、ジャーナリストである著者は「スノーデン事件が象徴するように、国家による情報の一元管理と情報発信・情報収集の自由の軋轢がこの地域で顕著な形で行われている」と警告しています。

「機械に仕事を奪われる」は、古くて新しい不安の1つです。『人工知能と経済の未来』〔井上智洋/文藝春秋〕の副題には、「2030年雇用大崩壊」とあります。利便性を追求する資本主義経済下の社会で、人の感情を読み取るPepper、外科手術支援ロボットのダ・ヴィンチはもとより、AI搭載の機器が次々と出現し、将来的には事務職はもちろん、医者も弁護士などの専門職も失業する可能性があると示唆し、AIの進展と資本主義の未来をマクロ経済の観点から分析しています。



その結果、いわゆるサラリーマンの9割が失業すると推測し、著者はそうなった場合の提案として、政府がすべての国民に対して最低限の生活に必要とされる額の現金を無条件で支給する「ベーシックインカム」構想を取り上げています。これは、基礎所得保障、基本所得保障、最低生活保障、国民配当とも称され、ここ数年、AIとともに世界的なイシューとなっています。

『AI時代の勝者と敗者』〔T・H・ダベンポート&J・カービー/日経BP社〕では、AI(この本ではスマートマシン)はそれほど生易しいものではなく、特化型AIは広範な仕事で明らかに人の能力を凌駕しており、いまや教師、弁護士、会計士、医者、科学者、記者など、これまで人間にしかできないと考えられていた知識労働も、機械のほうが有能になっていることを指摘しています。

副題に「機械に奪われる仕事、生き残る仕事」とあり、本書ではその力は今後も進化すると展望し、企業やビジネスパーソンの対応について論じています。ただ、著者は「そうなればそうなっただけ、それに即応する心構えと努力を厭ってはならないが、人には必ず新しい仕事ぶりが発生する」と希望を含ませています。(了)


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アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?
アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?

今回は、人工知能(AI)にまつわる本がテーマのブックトーク。
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、「今までの」そして「これからの」AIを読み解きます。


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