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六本木アートカレッジ・セミナー
シリーズ「これからのライフスタイルを考える」第8回
なぜ、人は宇宙をめざすのか?

宇宙の人間学~「宇宙の視座」を獲得した人類~

更新日 : 2017年05月16日 (火)

第4章 知のフロンティアにおけるアートの役割

高柳雄一(多摩六都科学館館長)


人間・アート・宇宙の関係

高柳雄一: 私は西東京市にある多摩六都科学館の館長として、普段は子どもたちに科学や宇宙の面白さ、楽しさを伝える仕事をしています。「宇宙の人間学」研究会との関わりとしては、数年前、ISSの日本実験棟「きぼう」の文化・人文社会科学利用の一環として、アートに関する宇宙実験を行うパイロットミッションが行われ、作品公募の選定委員長を務めました。

JAXAが主導したこのミッションでは、宇宙空間でしか成し得ないユニークなアート作品が数多く寄せられ、そのいくつかが実際に「きぼう」で実施されました。この仕事に携わった時に考えたのが、「知のフロンティアにおけるアートの役割」です。

例えば、フランスのラスコー洞窟内の壁画には、1万7千年前に描かれた牡牛がいます。実は、その肩の上に「すばる」(プレアデス星団)と思われる星々が描かれており、これは人類が最初に描いた星座だと言われています。

7~8世紀に造られた奈良のキトラ古墳の石室天井には、中国式「天文図」が描かれており、ここにも昴宿(ぼうしゅく)、つまり「すばる」が描かれています。さらに、オリオン座の3つ星、北斗七星、黄道、太陽や月もあり、四方の壁には方角を示す四神(青龍、白虎、玄武、朱雀)も描かれています。

人間は古くから、洋の東西を問わず、宇宙から得られる情報を活用していました。また、その情報から得た方角や時間、季節といった知識を広く共有するため、ひいては、自分たちの世界を認識するために、文字ではなくアートを活用していたわけです。そう考えると、宇宙とアートは古くから密接な関係にあったことがわかります。


このように人類は長い間、無意識ながらも宇宙の情報を様々な形で活用してきたわけですが、人類が宇宙に飛び出して以降、私たちはそれを意識的に活用するようになりました。例えば従来、他の星を観測するのは地上からしか行えませんでしたが、科学技術の発展によって宇宙空間においてそれができるようになり、現在は他の星と同様に、自分たちが暮らす地球さえも観測対象となっています。

また、NASAの系外惑星探査衛星ケプラーが系外惑星をたくさん見つけ、その中には地球と同様に生命が存在しうるハビタブルゾーン(生命居住可能領域)の惑星も見つかっています。それによって、地球はオンリーワンではなく、数ある生命を持つ星のうちの1つ、という新しい考え方も生まれています。

「宇宙の視座」を意識的に活用するようになったことで、私たちの宇宙観・地球観が一変したのだとすれば、宇宙に関する研究や開発は、私たちのものの見方や考え方を拡張・進化させてくれたと言えるかもしれません。



該当講座


六本木アートカレッジ これからのライフスタイルを考える 「なぜ、人は宇宙をめざすのか?」
六本木アートカレッジ これからのライフスタイルを考える 「なぜ、人は宇宙をめざすのか?」

清水順一郎(「宇宙の人間学」研究会事務局/代表)×的川泰宣(JAXA名誉教授)×高柳雄一(多摩六都科学館館長)×樋口清司(前JAXA副理事長)
人はどうして宇宙に憧れるのか? そして、テクノロジーの進化により「宇宙ステーション」という視座を得ました。また、太陽系以外の存在が明らかになるにつれ、地球外生命の存在や、他星での居住可能性などが議論されるようになってきています。
研究や技術が進化し、ユニバース(単一宇宙)からマルチバース(複合宇宙)という新たな視座が生まれたことがその理由です。
地球ではない場所で人や動植物のような生命体が存在するとしたら、果たしてそもそも「生命」とはどういう定義になるのでしょうか?地球という有限な惑星に生きる私たちは、これからどのように多様化し、社会生活を営んでいくのでしょうか?人間らしさはどのように変容していくのでしょうか?


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