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六本木アートカレッジ・セミナー
シリーズ「これからのライフスタイルを考える」第8回
なぜ、人は宇宙をめざすのか?

宇宙の人間学~「宇宙の視座」を獲得した人類~

更新日 : 2017年05月15日 (月)

第1章 「宇宙の人間学」のはじまり

古くから人間は、空に輝く星を眺めては様々な想いを抱いてきましたが、現在は国際宇宙ステーション(ISS)などを通じて、宇宙から地球を眺めることが可能となっています。「宇宙の視座」を獲得した私たちは、今後、宇宙に何を求めていくのか? そして人間観や地球観、社会のあり方はどのように変化し、再定義されていくのか? そんな問いについて、JAXA名誉教授の的川泰宣氏、多摩六都科学館館長の高柳雄一氏、前JAXA副理事長の樋口清司氏、「宇宙の人間学」研究会事務局・代表の清水順一郎氏が議論します。

スピーカー
清水順一郎 (「宇宙の人間学」研究会事務局 代表)
的川泰宣 (宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授/はまぎんこども宇宙科学館館長)
高柳雄一 (多摩六都科学館館長)
ファシリテーター 樋口清司 (前JAXA副理事長)

気づきポイント

●宇宙というテーマには、様々な違いや争いを超えて、人と人とを結びつける力がある。
●宇宙の謎が解き明かされていくほど、私達は人間について深く考えていくことになる。
●宇宙の視座は、人類が共有できる価値観であり、地球上の問題を解決するカギになる。


樋口清司(前JAXA副理事長)


カントにさかのぼれ

樋口清司: 地上から空を見上げると、約400km先に国際宇宙ステーション(以下、ISS)が飛んでいます。約90分で地球を1周するISSでは現在、6名(※講演時)の宇宙飛行士が一緒に生活しながら様々な実験や研究を行っています。

古来より人類は地上から宇宙を見上げては、様々な想いを巡らせてきました。やがて気球や飛行機で空を飛ぶようになり、20世紀半ば、とうとう人類は宇宙に飛び出して月に降り立ち、現在は15カ国が参加するISSが地球を周回しています。私たちにとって宇宙は、もはや冒険に行く場所ではなく、生活や仕事の場になりつつあります。

そう考えれば、宇宙は今後、生活の場としての選択肢に入ってくるかもしれない。そうなった時に何が起こるのか? 例えば、海外に行くと、私たちは日本人であることを強く意識します。それと同じように、地球とは全く環境の異なる宇宙に行けば、自分が太陽系第3惑星地球に生きる「人間」であることを強く意識することになり、「人間とは何か?」「生命とは何か?」といった根本的な問いについても考えるようになるはずです。

宇宙から地球を見る、すなわち「宇宙の視座」を得た私たちは、あらためて人間について、地球について考える必要があるのではないか? こうした問いが動機となり、「宇宙の人間学」研究会が立ち上がりました。


元々の経緯としては1990年代中頃、宇宙開発事業団(NASDA)で宇宙環境利用研究システム長を務め、その後は宇宙航空研究開発機構(JAXA)顧問としてISSの利用推進に尽力された化学者・井口洋夫先生が、「これまでどこの国も実行したことのないISSの人文社会的利用の検討」を提起されたことが発端となり、人文・社会学的アプローチからの宇宙利用研究に関する研究会が始まりました。

メンバーには科学のみならず、哲学・宗教・芸術・歴史など各分野の専門家に参加いただき、議論を深めてきましたが、その過程で、京都大学名誉教授の中川久定先生から「カントにさかのぼれ」という示唆をいただきました。イマニュエル・カントが確立した「人間学」は、五感を基礎として人間について考察していますが、宇宙空間に行けば、人間の五感は大きく変化します。そこで、あらためて「宇宙の視座」から「人間学」について考えようと、2013年7月から2014年9月にかけ、10回にわたり研究会を開催しました。

その成果をまとめたのが、『なぜ、人は宇宙をめざすのか~「宇宙の人間学」から考える宇宙進出の意味と価値』(誠文堂新光社)です。次代を担う研究者・技術者に向けた1つの指針に、さらに、人類が宇宙で生活するようになった時の一助になればと考え、出版しました。しかし、本ではすべての議論を収録できなかったため、JAXAのウェブサイトに研究会の全議事録をアップし、無料でダウンロードできるようにしています。


該当講座


六本木アートカレッジ これからのライフスタイルを考える 「なぜ、人は宇宙をめざすのか?」
六本木アートカレッジ これからのライフスタイルを考える 「なぜ、人は宇宙をめざすのか?」

清水順一郎(「宇宙の人間学」研究会事務局/代表)×的川泰宣(JAXA名誉教授)×高柳雄一(多摩六都科学館館長)×樋口清司(前JAXA副理事長)
人はどうして宇宙に憧れるのか? そして、テクノロジーの進化により「宇宙ステーション」という視座を得ました。また、太陽系以外の存在が明らかになるにつれ、地球外生命の存在や、他星での居住可能性などが議論されるようになってきています。
研究や技術が進化し、ユニバース(単一宇宙)からマルチバース(複合宇宙)という新たな視座が生まれたことがその理由です。
地球ではない場所で人や動植物のような生命体が存在するとしたら、果たしてそもそも「生命」とはどういう定義になるのでしょうか?地球という有限な惑星に生きる私たちは、これからどのように多様化し、社会生活を営んでいくのでしょうか?人間らしさはどのように変容していくのでしょうか?


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