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意識のない死の世界へ。すでにある無意識を顕在化せよ

アートの本質に、横尾忠則と生駒芳子が迫る!

更新日 : 2013年04月18日 (木)

第6章 僕の遺言は、死んだ後の展覧会プラン

横尾忠則(美術家)

 
遂に完成! 横尾忠則現代美術館

生駒芳子: 「横尾忠則現代美術館」をつくられているそうですね。11月3日にオープンと伺いました。

横尾忠則: 村野藤吾※4さんがつくった兵庫県立近代美術館。その建物を使います。一角ではすでにレストランが営業していて、いまえらく流行っているそうです。どうも料理がおいしいらしい。お客さんがたくさんいらっしゃるので、僕の美術館はそのおこぼれを頂戴できれば(笑)。

生駒芳子: 美術館で横尾先生はどのようなことをなさりたいのですか?

横尾忠則: 僕としては特にありません。学芸員の方がしたいことがあるようで、彼らのテーマに合ったものを僕の作品から選択して展示します。僕の作品だけではなくて、他のアーティストとのコラボレーションも今後やるみたいですよ。企画展は年4回を予定しています。3カ月ごとですけど、それでも結構忙しいのではないかと思います。学芸員がね(笑)。僕はそれほど忙しくならないと思いますけどね。

第1回の展覧会は11月3日からはじまります。美術館が所蔵する作品もありますけど、ほかの美術館や個人のコレクターから借りてきたものも展示します。ですから常設展ではなくて、いつ行っても異なる作品が展示される形になりますね。

今から死んだつもりだと、死後にこだわりはない

生駒芳子: それは楽しみですね。時間も限られてきたので、会場の方からご質問をいただきましょうか。

質問者:美術館がオープンするとのことですが、ご自身が亡くなられた後も展覧会が続き、作品もずっと生き続けていくわけですよね。そのことに安心感などはあるのでしょうか?

また、死の側からの視点を持っているとのことですが、ご自身が亡くなられた後も作品が生き続けることに、どのような思いをお持ちでしょうか?

横尾忠則: 死んだら「はい、それまで」です。僕は、僕の死後まで責任を持ちたくないですよ(笑)。今から死んだつもりでいるので、僕の作品がこれからどうなろうが、そこにこだわりはありませんね。

死んだ後に、楽しみができた!

横尾忠則: 死後について、面白いことがあります。この美術館では、色々な展覧会ができると思っているのです。そこで「どんな展覧会が考えられるか」というテーマで、ブレーンストーミングをやってみました。すると40~50分ほどの間に、51もの案ができました。年に4回展覧会をしたとしても、全部を開催するのに15年近くかかる。僕はそこまで生きていませんから、死後の展覧会まで決めてしまったことになるのです。だからね、これは遺言です。遺言といわれたからには、やらなければいけなくなるでしょう。こうやって学芸員にプレシャーをかけてやろうかと思っているわけですよ。次は生駒さんにもキュレーションをやってもらおうかな。美術館関係ではない人のキュレーションも面白いですよね。

生駒芳子: それはたいへん光栄です。プランはたくさんできているようですので、皆さんご安心ください。横尾先生、今日はどうもありがとうございました。(了)

※4 建築家。主な作品は、世界平和記念聖堂(1953年)、新歌舞伎座(1958年)など

<気づきポイント>

●顕在意識と無意識を統合させて、初めて創造は生まれる。
●すでにチャージされているものを、吐き出す行為がアート。
●自分という意識を消した世界にこそ、創造の時間はある。

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