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WANTED! 求むリーダー

~リーダーシップの本質を明らかにする本を紹介します~

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2012年10月26日 (金)

第6章 ‘現場’的リーダーシップ論

六本木ライブラリー ブックトーク 紹介書籍

澁川雅俊: 『志を育てる』(田久保善彦)、『リーダーシップでいちばん大切なこと』(酒井穣)、『世界で通用するリーダーシップ』(三谷宏幸)、『逆境を生き抜くリーダーシップ』(ケン・アイバーソン)、『リーダーの本当の仕事とは何か』(ダグラス・コナン、メッテ・ノルガード)などは、ビジネスや国政・行政などの分野での現場の経験を重視したリーダーシップ論を展開しています。

田久保は、「何のために働くのか」という意志に着目し、ビジネスマンを含む各種の職業人をインタビューし、その意志の醸成のダイナミズムのなかから、志の形成に影響を与える幾つかの要素・要件を提案しています。

酒井は、自身の経験を基に「人は何かをしようと決めたときに、既に成功している」という信念でリーダーシップを論じています。この本の第3部「本物のリーダーシップを学習する方法」は典型的なハウツーですが、時には自分自身のリーダーシップを検討してみることも必要でしょう。

三谷は、伝説の経営者ジャック・ウェルチGE最高経営責任者の手法を称賛しつつ、現在世界的な医薬品会社の社長である自身の経験から活動を振り返って、リーダーシップを論じています。

アイバーソンは、倒産寸前の弱小企業を全米第三位の鉄鋼メーカーに押し上げた男が書いた実践的リーダー論で、実践知に基づかないビジネススクールでの経営論に疑問を投げかけています。

また、コナンとノルガードの原書名は“Touch Points”で、「わずかな瞬間で相手の抱える問題を解決する」接点の意味です。これもキャンベルスープのCEOとして、急降下していた業績と従業員のやる気を回復させ、大きく成長させた実績を評もつ著者が、自らの成果をリーダーシップ論にまとめています。

ところで、以上に取り上げたリーダーシップ論は、日本人ビジネスマンや経営学者が書いた本であっても、いかにもMBA風です。わが国の伝統的なリーダー論はないのだろうかと探してみると、『世渡り万の智慧袋』(田中優子)がありました。

この本は西鶴が当時の商売の有り様を描いた『日本永代蔵』、『世間胸算用』、『万の文反故』を現代風に解説したものですが、著者は、「これは一種のリーダー論だ。リーダーはうるさく小言を言わなくとも、誰が何をしているか目を配っているだけで、相手の行動や態度は違ってくる。成果を認め、報奨してやることで、さらに主人の目を気にするだろう。(中略)リーダーは皆を見ていることが大事。」「リーダーはそこに『居る』ことが大事」と言っています。

【わが国のビジネス・リーダーたち、評伝と自伝】

リーダー像を求める素材として実業家や企業家たちの伝記や自伝がよく読まれています。それらの本は最近でも数多く出されていますが、ここでは、『日本を再興した起業家物語』(加来耕三)、『日本を創った男たち』(北康利)、『プロ魂、逆境に打ち勝つ8人のリーダーたち』(日経BPコンサルティング「プロ魂」編集委員会編集)、『58の物語で学ぶリーダーの教科書』(川村真二)、『ビジネスは「私の履歴書」が教えてくれた』(吉田勝昭)を挙げておきます。

また日本のトップリーダーたちがどんな本を読んでいたか、あるいは読んでいるかを調べた『巨人たちの本棚』(久我勝利)も同系統のものとして紹介しておきます。(終)

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