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宋文洲さん、チャイナリスクとどう向き合えばいいですか?

中国経済を捉える~日本企業のこれから~

BIZセミナー政治・経済・国際
更新日 : 2012年07月17日 (火)

第8章 日本はたいして豊かじゃないし、格差は必要

宋文洲(ソフトブレーン株式会社 創業者)

宋文洲: 最後に、皆さんによく聞かれる、中国の「政治リスク」と「格差問題」についてお話しします。実は、私自身はこの話題に興味がないので、ほとんど当たらないと思ってくださいね。

政治リスクについては……私が生まれた当時、中国は文化大革命の頃でした。先祖の代から上海で商売をしていたせいで、差別を受けました。それがある日、毛沢東が死亡しただけでガラっと変わりました。だからこれについては、私にはわかりません。

格差があることは、私は大事だと思っています。格差のない国は伸びません。格差のない社会なんて、活力があるわけがない。『朝まで生テレビ!』に出たとき、日本の若者が「日本は豊かで、生活に困らない。だからハングリー精神を持てない」ということを言っていましたけれど、日本は大して豊かなんかじゃないですよ。

全員とは言いませんけれど、数十平米しかない家に住んでいて、どうして豊かと言えるんですか? しかもサラリーマンの労働時間、ストレスはすごい。たった1つのミスでクビになる。クビになったら、この国は流動性がないから、再就職できない。これのどこが豊かなんですか?

中国の富裕層の子どもたちは——これも全員とは言いませんが、私が知っている限りでは、日本の富裕層より、はるかに創業する確率が高い。それは子どもの頃から「競争だ」「負けるな」と言われて育ってきたからです。でも、学校に放り込まれると負けるんです。その負けた経験が、彼らの根性につながっているんです。

なぜ格差が必要かというと、電気が明るい理由と一緒です。電気が明るいのは、電圧の差があるからです。風が吹くのは、気圧の差があるからです。川が流れるのは、高低の差があるからです。我々人間は、なぜ頑張れるのでしょうか? それは人間と人間の間に差があるからです。頑張っても差がつかなければ、誰が頑張るでしょうか?

以上で私の話は終わりです。ご静聴、ありがとうございました。(終)

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中国経済を捉える ~日本企業のこれから~
宋文洲 (ソフトブレーン株式会社 創業者)

宋文洲(ソフトブレーン株式会社創業者)世界経済に多大なインパクトをもたらす中国経済を捉えることは、欧米諸国、そして日本にとって重要な課題です。ソフトブレーンの創業者であり経営コンサルタント、経済評論家として中国ビジネスに造詣が深い宋氏をゲストに迎え、中国の今を伺います。


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