記事・レポート
アジア最貧国の闇と光を考える
日本元気塾セミナー ~映画「アリ地獄のような街」上映会~
更新日 : 2010年07月23日
(金)
第2章 既存の組織に頼らず、自分の目で見て、自分の頭で考える
渡辺大樹: タイで衝撃を受けて日本に帰ってきたときは、卒業を控えていたので、就職するのかどうするのか考えました。そしてたどり着いたのは「何ができるかわからないけど、子どもと目が合ったのも、卒業前のこのタイミングで衝撃を受けたのも、1カ月間悩んでいるのも、縁なんじゃないか。私が行動を起こして小さな一歩を踏み出すことで、1人でも2人でも子どもに、劣悪な環境から脱却するきっかけを提供できるかもしれない。なら、やる価値があるんじゃないか」というものでした。
卒業まであと半年でしたが、タイムリミットを1年と決めました。「1年後に日本を出てバングラデシュに行く」と決めて、お金を貯めながら卒業論文を書いて卒業しました。
米倉誠一郎: なぜタイではなく、バングラデシュだったのですか?
渡辺大樹: タイで受けた衝撃がバングラデシュに向くというのは、変ですよね。でもその矛盾に自分では気づかなかったんです。あるとき高校時代の友人とご飯を食べていたとき、バングラデシュに行く話をしたら、「お前の話はよくわかった。頑張ってほしいと思う。でも1つ聞いていい? なんでバングラデシュなの? タイに行けよ」と言われたんです。そう言われるまで、本当に気づかなかったんです。
米倉誠一郎: グラミン銀行があるから、とか?
渡辺大樹: それが全く……。もちろんグラミン銀行は有名でしたが、ノーベル平和賞をとる前でしたし。「なんでバングラデシュなんだろう?」と考えて思い出したんですけど、小学6年生のとき、社会の教科書に「洪水、サイクロン、飢餓。それに立ち向かうアジア最貧国、バングラデシュ」という記事が載っていて、子ども心にショックを受けたんです。「ああ、あれか。あれがきっかけで、その後、自分の中にアンテナが張られたんだな」と思いました。
米倉誠一郎: 不思議ですが、いまのバングラデシュには、若い人たちをグッと引き寄せる何ともいえない磁場がありますね。それで言葉もできないのに、とにかく行ったのですね。
渡辺大樹: はい。1年間あったので、バングラデシュの言葉、ベンガル語を学んでから行くとか、向こうでどういう活動をするのか構想を練ってから行くこともできたのですが、とにかく一人で行こうと思ったんです。
それには理由があるんです。青年海外協力隊や外務省を目指すという選択肢もあるかもしれないと考えて、いろいろな方の話を聞きに行ったんです。彼らの話を聞くたびに「すごい構想を持って、すごい活動をして、実際に成果を上げている」と思ったのと同時に、自分がそこに属したら、良いか悪いかは別として、そこの先輩がつくり上げてきた視点を通してしか物事が見られないんじゃないか、と思ったんです。
そのときはまだ22歳。若いんだからまず行って、自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分で何かできるならやっていこうと。もし何もできなかったら、数年後に帰ってきて組織に属せばいい。そうしたほうが自分を活かせるし、子どもたちのためにもなる。そう思って、まずは一人で行くという選択肢をとったんです。
ですので行くときも、死なない程度の治安情報とコミュニケーションできる最低レベルの言葉しか携えませんでした。日本にいる間に図書館で視点をつくり上げてから行ったのでは、組織の視点になるのと同じだと思ったので。
覚えていったのは「私、あなた、1、2、3」というたった5つの単語です。これで何とかコミュニケーションできるんじゃないかと思ったんです。が、そうはいかず、バングラデシュに行ってから必死に勉強しました。
毎晩、露天のお茶屋さんを回って、何十人、何百人という人たちと話しました。「与党と野党の政策の違いって何?」とか「イスラム教とヒンドゥー教って根本的に何が違うの?」とか、バングラデシュ人が熱くなるような話題をわざと振るんです。するとみんな熱くなって話してくれるんですけど、そのうち私を無視して話を続けるので、私はその場で寝て睡眠学習していました。
でも1カ月ほど経って、やはりちゃんと勉強する必要があると思い、外国人のためのベンガル語学科があるダッカ大学に入学しました。
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http://www.academyhills.com/note/opinion/10071402GenkiAri.html
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第1章 スラムに生きる少年との衝撃的な出会い
2010年07月14日 (水)
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第2章 既存の組織に頼らず、自分の目で見て、自分の頭で考える
2010年07月23日 (金)
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2010年08月30日 (月)
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第7章 自分で自分の未来を決められない子どもたち
2010年09月06日 (月)
該当講座
渡辺大樹(NGOエクマットラ顧問)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター長・教授)
バングラデシュのストリートチルドレンの現実を描いた映画「アリ地獄のような街」の自主上映セミナー。映画上映後には映画を制作したバングラデシュでストリートチルドレンの支援活動を行うNGOエクマットラ共同創設者(現在顧問)渡辺大樹氏をゲストに迎え、なぜこの映画を作ったのか、この映画で伝えたいメッセージ、バングラデシュの子どもたちに対する想いを、直接お伺いします。
日本元気塾
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